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東京電力:「実施計画違反」と原子力規制委員長が述べた会見録より

10月25日に多核種除去施設(ALPS)内で、仮設タンクから仮設ホースが外れて洗浄廃液(43億7600万Bq/L)が飛散し、作業員らが被ばくしたことについて(*文末に既報リンク)。遅ればせながら、11月1日の原子力規制委員会の終了後に山中伸介原子力規制委員長が「実施計画」違反だと述べたことについて、会見議事録から抜き出しておく(太字は筆者によるもの)。

○記者 読売新聞社のハットリです。よろしくお願いします。今日最後のほうで報告があった、福島第一原発の作業員の身体汚染なのですけども、今日の委員会では、委員の中には作業管理の失敗というような厳しめのコメントもあったのですけども、東京電力の作業の管理に関して委員長はどのように見ていますでしょうか。

○山中委員長 ALPS処理施設の配管の洗浄、これに際して作業員の身体汚染が生じたということについては、私自身東京電力の実施計画違反であるというふうに認識しております。これからの報告は待たないといけないところかと思いますけれども、委員からもコメント出ましたように、やはり協力会社の作業員、あるいは下請会社の作業員の作業中に生じたことであったとしても、東京電力自身の実施計画をきっちりと守るというこの運転管理の在り様というのが、不十分だったのではないかというふうに私自身は考えています。

2023年11月1日原子力規制委員会記者会見録より

○記者 フリーランス、マサノです。よろしくお願いします。今の点なのですけれども、山中委員長としては実施計画違反であると考えているとおっしゃったと思うのですけれども、この作業員は10万cpmの測定の針が振り切れる被ばくをされたということなのですが、この実施計画を読みますと、その増設ALPS(多核種除去設備)の前処理設備のところには、「炭酸塩沈殿処理による生成物はクロスフローフィルタまたは沈殿槽により濃縮し、高性能容器に排出する。」としか書かれていないのです。
 山中委員長がおっしゃった違反であるというのはこの炭酸塩にその有毒物質である硝酸を混ぜるアナログな洗浄について何も記載されていないということが違反と考えていらっしゃるのか、労働環境のことなのか、どちらでしょうか。

○山中委員長 こういうような溶液系を扱う施設では、必ずタイベックスの上に、水溶液を浴びたときの防護性のあるアノラックを着るというのが定められているようでございます。ということで、5名のいわゆる作業員が全員アノラックを装着していなかったということが違反ではないかという、実施計画違反ではないかという私の個人的な認識でございます。これから、きちっと検査の中でその辺りは確かめていきたいというふうに思っております。

○記者 なるほど。引き続きその件なのですけれども、硝酸を注入する施設も仮設で、洗浄廃液を扱うホースも仮設、受け入れるタンクも仮設ということで、年1回3系統で3回、このような作業を行うようなのですけれども、こういった危険を伴う作業、これはこのフェイルセーフの設計が必要ではないかと考えます。それが仮設のまま、年3回行われているということについて、どのようにお考えでしょうか。

○山中委員長 これは常設で洗浄するような設備を造ったほうがいいのか、あるいは仮設で対応したほうがいいのかというのは、これは本当に安全上、どちらが好ましいのかというところは判断をしないといけないところかと思います。この辺りも含めて、監視検討会(特定原子力施設監視・評価検討会)の中でも議論をしていきたいというふうに思っています

○記者 実はその当初5人の方を、A、B、C、D、Eさんと言われて、CさんがAさんにかっぱを着せなかったことが原因であるということ、それからホースの固縛位置がタンクから遠過ぎたということが原因だとされていまして、なので、かっぱを着せること、そして固縛位置をもっと近づけるという計画を立てて、それを確認するということが対策だというふうに、今、現在は東電は原因と対策について発表しています。しかし今委員長おっしゃったように、こういったアナログな洗浄作業が仮設施設で行われているということも一つの原因ではないでしょうか

○山中委員長 様々な要因があるということは私も認識をしておりますし、どういう設備がこういう作業で、妥当なのかどうかということについては今後も検討していきたいというふうに思います。

○記者 もう一つ関連なのですけれども、先ほどどなたかも質問されてたように、当初は元請からの一次請けとしていたのが、事故から5日もたった後で、実は三次受け、3社でしたと訂正がありました。
 このような指示系統が労働安全の労働法令に違反するということを指摘されると、作業員Cが作業員Aに一時的に交代した際、作業員Aがアノラックを着用せずに作業したという表現を訂正しますと、これも訂正されました。
 今日の資料を見ますと、また別の表現に変わっていまして(略)Aさんが主語になっていますけれども(略)こうした労働法令に違反があるかどうか、こういったことを監視検討会のほう検討はされますでしょうか

○山中委員長 もちろん、いわゆる保安検査の中で運転管理というのは非常に重要なポイントですので、御指摘のような点、きちっと保安検査の中で確認をした上で議論は監視検討会の中でしていきたいというふうに思っています。

2023年11月1日原子力規制委員会記者会見録より

作業員5人に加え第6、第7の人物が登場

実は、5人と述べていた作業員の数まで訂正が入り始めている。現時点までの東電の説明の「変遷」整理補足しておく。

10月26日時点
・作業員ABCDEは1次請1社
・Cが親方であると口頭で説明し、「作業員Cは、受入タンクの水位上昇やホースが動くことがなかったため、タンク監視を作業員Aと一時的に交代し、別エリアで行っていた作業場に移動」、「作業員Cが」「作業員Aにアノラックを着用させなかった」と記載(P5)

10月30日時点で説明が変化し
・3次請3社で、Cが1社、Dが1社、ABEの3人が1社。
・「作業員Cが」「作業員Aにアノラックを着用させなかった」という指示系統を示す表現を撤回。

その後さらに
・Cは親方。
・Dも親方。
・ABEにも親方(6番目の人物、以後F)がいたが、Fは病欠だった。
・そのため2次請の方がF代理をした。7番目の人物(以後G)が出現した。

会見録に戻る。

○記者 朝日新聞のフクチです。(略)先ほどの質問の中でも出ていた、労働法令関係の違反についても今後確認をされるのか(略)。

○山中委員長 我々はやはり発電所の中での、いわゆる東京電力福島第一原子力発電所の中での安全に関する監視検討をするという場でのあの議論でございますので、炉規法の話とは別に、我々は議論を進める必要があるかというふうに思っています。

○記者 具体的にどういう法令に沿って見ていくとかというのは、今お話できますか。

○山中委員長 恐らく炉規法の範疇にはない、我々が扱うべきその原子炉等規制法の中で 1F(福島第一原子力発電所)に適用をしなければならない、そういう法律の中できちっと議論をしていくことになろうかというふうに思っています。

○記者 それは今回だと三次請けの作業員さんだったわけですけれども、そういった契約と、あと現場での作業形態の不一致とか、そういった部分を見ていくということなのでしょうか。

○山中委員長 当然、保安検査の中で今回の案件で言いますと、運転管理ですとかプロジェクト管理に関係するところをきちっと見ていくということになろうかと思いますし、現場でもそういうところは注意して監視をしていくことになろうかというふうに思っています。

○記者(略)ちょっと話を広げるとですね、今、柏崎刈羽の追加検査の関係の議論で出てきた適格性の再確認の一つにはですね、福島第一の廃炉をやり遂げるという項目もありまして、こういった身体汚染のような事案が出て、なおかつ実施計画違反だという話になってくると、適格性の再確認の1項目、1項目といいますか、福島の廃炉という面では適格性大丈夫なのかという考えを持つんですが、その点への広がりというのは今どう考えていますか。

○山中委員長 今回の事案というのは、注目すべき事案であるというふうに思っておりますけれども、廃炉全体に対するその影響が著しくあるかということを考えますと、全体の管理をきちっとしていただければ、廃炉全体に対する影響というのは、そんなに大きなものではないかというふうには思っています。

2023年11月1日原子力規制委員会記者会見録

○記者 TBSテレビのタケモトと申します。引き続き福島の件で恐縮なのですけれども、先ほど委員長の発言にもあったとおり、今回、東電の社員がこの現場に立ち会っていなかったということで、この件についてどのように考えているかということについてお伺いできますでしょうか。

○山中委員長 全ての作業について東京電力の社員が立ち会わなければならないとは考えておりませんけれども、やはり様々な作業が1Fのサイトでは行われますので、教育訓練等をきちっとしていただく責任は東京電力にもあるかと思いますし、当然その作業の前の様々なミーティングには東京電力の社員が参加して注意事項等確認するという、そういうことはしていただきたいというふうに思っています。

○記者 ありがとうございます。もう一点、こちらの件に関して作業員の被ばく線量がまだ明らかになっていないということで、今後例えば、今日の委員会の中ではなかなか難しいという話も上がっていましたけど、これについて期待することなどあれば。

○山中委員長 これ、御専門の伴委員にも確認を今日させていただきましたけども、なかなか現場での除染までの被ばく量の評価、あるいは硝酸溶液を使っておりますので、身体に滞留した放射性物質の除去の具合、これを経過を見ながら最終的に実効線量の評価、あるいは局部的なその線量評価をしていくことになろうかというふうに思っています。

○記者 ありがとうございます。最後に、総括として、今回の東電の対応、不十分だったという御発言もありましたけど、まとめてどういった点が不十分だったかということについて、もう一度お話を伺えますでしょうか。

○山中委員長 やはり、全体のこの作業の中での運転管理、この点については東京電力に手落ちがあったんではないかなというふうに思っております。あくまでも個人的な見解ですけれども、実施計画に違反があったんではないかという見解を持っています。

2023年11月1日原子力規制委員会記者会見録

○記者 共同通信のタシマです。よろしくお願いします。私も1Fの作業員の身体汚染のことについてお伺いしたいんですけれども、いろいろ本日の定例会合でも規制庁のほうにも指示を出されていましたけれども、東電側に望む対応としてはどのような対応を望まれますか。

○山中委員長 当然、ALPS施設での作業というのは必要になってまいりますし、このような、いわゆる配管の洗浄作業というのはいろんなところで同様の作業がされると思いますので、きちっとやはり運転管理をしていただく、実施計画に沿った管理をしていただくということがもう基本だと思います。それぞれの福島のサイトではいくつかのプロジェクト動いていると思いますけれども、プロジェクト管理についても東京電力には責任を持って遂行していただきたいというふうに思っています。

○記者 今回、ALPS関連の配管の作業でしたけれども、今のお言葉を聞くと、何かほかの、ALPS関連以外に限らず、その作業の管理の仕方がきちっとしているかということも検査で見ていくということなのでしょうか

○山中委員長 当然これ2週間ほど前に、現場に私行っております。検査官との意見交換の中で、検査官はやはりプロジェクトの管理ということをきちっと見ていきたいという意見を持っておられる方が多かったので、この点については私も同様な意見でございます。ほかのプロジェクトがどういうところが不具合があるかというのは、現時点ではまだ報告は上がってきておりませんけれども、そういうところは注視していきたいなというふうに思っています。

2023年11月1日原子力規制委員会記者会見録

○記者(マサノ) (略)やはり柏崎刈羽との関係を考えるときに、汚染水に絡んで被ばくをさせてしまったのはこれで2回目で、同じかっぱ着ていなかったという同じ事案なのですね、2回目なのですね。これは2回あることは3回あるといいますか、また起きるんじゃないかと思うのですけれども、やはり柏崎刈羽を運転する資格がないと言われてもしようがないと思うのですが、いかがでしょうか。

○山中委員長 今回の事案もそうですけれども、東京電力福島第一原子力発電所で起きる様々な事案が直接東京電力柏崎刈羽原子力発電所の適格性の判断に直接影響を及ぼす問題では今回の件についてはないというふうに私自身は考えています

2023年11月1日原子力規制委員会記者会見録より

*ALPS内の44億Bq/L廃液に関するこれまでの発信
「仮設タンク」から「仮設ホース」が外れて福島第一原発の作業員が被ばく(10月27日)
「100ミリリットル」を「数リットル」に訂正(10月31日)
ひばく事故から127時間後に「1次請ではなく3次請3社」と訂正(11月1日)
福島第一原発で起きた被ばく事故は原子炉等規制法「実施計画」違反:山中原子力規制委員長(11月2日)

【タイトル写真】

会見で記者質問を受ける山中伸介・原子力規制委員会委員長。
2023年10月4日筆者撮影(11月1日会見で撮りそびれてしまったので)

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