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21世紀の豊かさとは

<実質賃金は減少傾向>
 
厚労省は2022/12/6、10月の毎月勤労統計調査を発表しました。一人当たり賃金は前年同月比2.6%減り7ヵ月連続の減少でした。マイナス幅は2015年6月以来7年4カ月ぶりの下落幅で、資源高や円安で上昇する物価に賃金の伸びが追いついていない状況です。 
 
ドル建てで見た日本の賃金は低下が著しいです。2022年の円の急落を2020年から2021年度の平均賃金に反映すると、2012年度比で4割低下しました。日本の非製造業の平均賃金を100とすると、ハノイやマニラは20から30でまだ差が大きいですが、建設技術者や看護人材の水準は50から70程度で差は縮まっています。
人材業界では一人当たりGDPが7000ドルを超えると日本への労働力の送り出しが減り、1万ドルを超えると受け入れ国に変わると言われています。 
 
<共働き、副業で収入が増えるも税金、社保で実質マイナスに>
 
配偶者の月収平均は2000年以降5万円台で横ばいでしたが、2018年頃から伸びが加速し2021年には9万円台になりました。女性の配偶者の有業率が2000年の39%から2021年に54%まで上昇しました。
主要仲介サービス4社の登録会員数合計は延べ760万人となり、コロナ前と比べて2倍超に達しました。テレワークの定着や雇用不安などで、本業の合間に働く副業者が多いです。
 
ただしせっかく共働きや副業で収入が上乗せされても税金や社会保障費の負担に打ち消され、増加している実感はありません。負担は高齢化の加速で2012年頃から増え始め、2021年は11万円と2000年より約25000円増加しています。収入から税金、社会保障費を差し引いた手取りは月42万円と2000年を4000円ほど下回っています。特に若い世代が厳しく、54歳以下の世帯は全てマイナス傾向です。OECDの景況感指数で日本の家計は2019年以降中立水準の100を下回ります。
 
<日本は豊かさ19位>
 
国連開発計画は2022/9/8、国民生活の豊かさを示す人間開発指数の世界ランキングを発表しました。コロナの感染拡大で世界全体の指数は2年連続で下がり、2016年以来の低水準となりました。首位はスイス、ノルウェー、アイスランドの順で、日本は2019年と同じ19位でした。アジアでは韓国が19位、中国は79位、アメリカは21位です。報告書によると、コロナ下の最初の一年でうつ病と不安症の発症率が世界で25%以上増えました。 詳細は以下のHPをご覧ください。
 
https://www.globalnote.jp/post-802.html
 
<GDPは豊かさを表さない>
 
豊かさを示す指標としてよく使われるのはGDPですが、GDPは物の動きしか捉えません。上記の国連開発計画が示した人間開発指数の世界ランキングを見てもわかる通り、GDPトップのアメリカが21位、2位の中国が79位、3位の日本が19位です。20世紀終わりまではGDPが高いことが国の豊かさの象徴でありましたが、現在人間開発指数の世界ランキングで上位を占めるのはヨーロッパ勢です。そこでいつも通り、PPP(パクってパクってパクリまくる)をして、『21世紀の豊かさ』を検討したいと思います。 
 
<フレキシキュリティが精神のゆりかごに>
 
北欧5カ国のベンチャー投資額は2021年に計164億ドル、直近のユニコーン企業数は65社に達しました。スウェーデンは人口100万人当たりユニコーン数が3.5社で世界4位、フィンランドとデンマークは1.4社で11位、12位、日本は0.1社で29位です。北欧は手厚い福祉が企業や転職のリスクを和らげています。柔軟性と安全性を兼ね備えるフレキシキュリティが起業の場面にも浸透しています。
1960年代にデンマークで広がり始めたフレキシキュリティが本領を発揮したのは1994年以降。10%前後で高止まりする失業率への対策で、リスキリングや再就職活動に取り組まないと失業補償を減額する罰則を作ったところ、失業者に真剣さが増し失業率が低下しました。デンマークでは3000以上の成人向け職業訓練が実質無料で提供されています。社会人の28%が過去一か月間に何らかの訓練教育を受けている状況です。メニューは労使が協力して作成し、現場の意見を聞き取って更新し続けます。 デンマークの人口は600万人弱で、限られた人口で国際競争を勝ち抜くには一人一人が生産性を高める必要があります。労働政策への公的な支出はデンマークが2019年にGDP比で2.8%と日本の9倍、職業訓練だけならデンマークは0.36%で、日本は0.01%です。 
結果として、2000年以降の平均成長率はスウェーデンが2.2%、フィンランドは1.5%に対し、日本は0.6%です。
 
 <政治も当事者意識>
 
スウェーデンの国政選挙の投票率は80%超と、日本の50%前後を大きく上回ります。与党に対し意見は様々ですが、共通するのは政治を自分のこととして考える当事者意識です。積極的な社会への関与から生まれる連帯感は、福祉の充実と共に北欧の幸福度の高さを支えています。 

<21世紀の豊かさとは>

北欧の状況を分析すると、やはりモノではなく精神的な豊かさに重点が置かれています。フレキシキュリティも『儲ける』というスタンスではなく、『何度でもトライができる』という『安心感』に力点が置かれている気がします。政治に関しても『自分が政治に参加しているんだ』と言う『自己満足』が大きいのではないでしょうか。
もちろんある程度のモノは揃っていないと最低限の生活ができません。飢餓の心配がなく、衣食住がある程度満たされていることが前提です。しかしある程度揃えば、そこから先は精神面の豊かさが人間の豊かさを表している気がします。以上の点より私見として21世紀における豊かさとは『ある程度のモノの豊かさと精神的な豊かさの総和』で定義できると考えます。 
私はGDPトップのアメリカ、2位の中国の人々が羨ましいかと言われると必ずしもそう思いません。むしろ精神的な豊かさを持っている北欧の人々の方が羨ましく思います。日本は相対的に衣食住がある程度満たされているため、今日本に必要なことは精神的な豊かさなのではないでしょうか。どうやったら精神的に豊かになるのかをこのメルマガを通じて考えていきたいと思っております。 


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