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ご利用は計画的に!計画の必要性

<会社債務は過剰>
 
民間企業が抱える債務は不良債権問題が深刻だった2000年以来の高い水準にあります。2022年3月末時点の民間企業の借入残高は簿価ベースで469兆円、うち短期借入金の残高は176兆円です。仮に金利が1%上昇すれば単純計算で4.7兆円の利払い負担増となります。債務が膨らんだのは政府がコロナで企業の資金繰りを支援したゼロゼロ融資のためで、過剰債務残高は約47兆円です。
東京商工リサーチの調査によると、2022年7月の全国企業倒産件数は494件と、前年同月比4%増でした。 
 
<家計債務も過剰>
 
家計の2022年3月末時点の借入残高は時価ベースで前年同期比1.8%増の357兆円です。この10年で毎年増加しているのは低金利を追い風に住宅ローンの貸し出しが220兆円まで増えたためです。住宅金融支援機構によると、住宅ローン利用者のうち74%が政策金利に連動して金利が変わる変動型の契約のため、金利の上昇は家計の負担増に直結します。 
一方、住宅の資産額は伸び悩み、2020年末は前年比で下落しています。アメリカでも近年ローンが急増し、残高は2022年6月末で12兆ドルを突破していますが、それ以上に住宅の資産額の伸び率が大きいです。住宅が『資産』として機能するアメリカと、『消費財』に近い日本の差が表れています。
アメリカは住宅市場の約80%を中古が占め、適切な修繕などを施せば購入後に資産価値が大きく上昇するケースが多いです。一方、日本の中古シェアは15%弱で新築志向が強く、中古は修繕しても売却価格には反映されづらい状況です。 
 
<国の予算も過剰>
 
コロナ感染拡大防止のため、政府は補正を含めた一般会計で2020年度に175兆円、2021年度は142兆円の予算を計上しました。政府は決算にあたり、予算に計上した年度に使えず翌年に回した分を『繰り越し』、使う必要がなくなり、国庫に戻す分を『不用』としています。
2020年度は繰越が30兆円、不用が4兆円ありました。この年度に使う予定だった経費の20%が使い残しです。2021年も繰越が22兆円、不用が6兆円で全体の16%に達します。東日本大震災の時は9%台であり、この2年が突出しています。
繰越の内訳をみると経済対策の柱とされる項目が目立ちます。2020年度は公共事業費で決算のうち35%にあたる4.6兆円、地方創生臨時交付金が2020年度で2.8兆円、2021年度で5.7兆円、Go to トラベルで0.7兆円の不用が出ました。 

会計検査院は2019年度から2021年度に国が計上した計1367事業、総額94.4兆円を調べたところ、未執行は全体の約2割の18兆円に登りました。 
また、2021年度に国が実施したコロナ関連の18事業の妥当性を個別に検証しました。法令違反にあたる『不当事業』は10事業ありました。典型がコロナ患者の受け入れを増やすために病床を確保した医療機関に支払われる交付金で、13都道府県106医療機関を抽出したところ、32医療機関への計55.9億円が過大交付と判明しました。 
 
現在の国の予算の組み方は、第二次世界大戦中と重なる部分があります。日中戦争が始まった1937年9月から終戦の1946年2月まで、一般会計と別に戦費調達のための『臨時軍事費特別会計』を設けました。議会での審議はなく、決算もありませんでした。戦費の調達は国債と借入金に過度に依存し、予算全体の70%超、特別会計の80%超にのぼります。そして1937年から1945年度に発行した戦時国債の総額は約1300億円ですが、その2/3を日銀が直接引き受けました。
戦時国債は戦後のハイパーインフレの引き金となりました。1949年の消費者物価は戦前の1935年の179倍、結果としてインフレに伴い政府による国債の実質的負担は解消しました。財務省内にも『戦時国債をほぼ紙くずに変えた事実上の踏み倒し』との見方が強いです。
 
<国の借金は最悪>
 
2022年10月末に決めた政府の総合経済対策の裏付けとなる2022年度第2次補正予算は29兆円規模で、そのうちの8割にあたる23兆円を国債の増発で賄います。国の借金は2022年6月末に1255兆円、IMFの推計で債務残高はGDP比262.5%で、最悪の状況がさらに悪化しております。 
 
<そんな国に見切りをつける公務員>

人事院が2022年5月に初めて公表した調査によると、入省10年未満の退職者は2018年度に100人を超え、2019年度も139人、20年度も109人と100人以上が続いています。特に多いのが入省5年未満で、2017年は35人でしたが2018年は70人と倍増しました。採用者総数に占める5年未満での退職率も2015年度入省で11%、1年未満で辞める人も1%前後と高水準です。 

<PDCAとOODAの違い>

コロナという人類が体験したことのない感染症に対応するため、日本の政府の対応は大盤振る舞いに変わりました。本来であれば潰れるべき企業がゼロゼロ融資によって延命され、ゾンビ企業として生き延びているのが現状です。結果として民間の債務残高は大幅に増え、ゼロゼロ融資を貸した大元である国の借金も最悪となっています。
また、住宅市場を強化させるために国が住宅ローン控除でローンを増加させるよう仕向けた結果、家計の債務も過去最高となっています。
家計も企業も国も債務が過剰な状況となっています。なぜなのでしょう?私はここで計画の重要性に立ち戻るべきだと考えます。
 
VUCAの時代は、先の読めない時代となりました。経営学におけるフレームワークでも『PDCA』のように計画をしっかり立ててから実行するのでは間に合わないため、『OODA』で計画を立てずに現在の状況を観察した上で、適時適切に判断するフレームワークがもてはやされています。『PDCA』と『OODA』の違いは私見として、平たく言えば『P=Plan』を立てるか立てないかです。 

『PDCA』と『OODA』の違いは以下のHPをご覧ください。
https://www.kaonavi.jp/dictionary/ooda/

『OODA』の場合、プランを立てない分現場の状況に素早く対応ができます。しかし一方で行き当たりバッタリ的な対応になりがちで、中長期的にみた場合、一貫した方向性が取れていないことが多くなります。
『PDCA』の場合、プランを立ててから実行に移すため一貫した方向性は取れますが、プランを立てている間に現場が変化してしまう可能性があるため、変化の速い環境には対応しづらいという欠点があります。

今の日本はVUCAの時代という言葉に踊らされてしまい、計画をおろそかにしているのではないでしょうか?その結果、『今やりたいことをやる、足りない分は借金で対応すればいいんだ』という状況が、企業も家庭も国にも表れているように思います。『OODA』をやりすぎた結果、行き当たりばったりな対応が積みあがってしまったというのが実感です。

<ご利用は計画的に!計画の必要性>

私見として今一番日本が必要なのは『計画』だと思います。10年後という長期の『計画』を描いた上でそれをブレイクダウンし、今年何をやるべきなのかをある程度決めます。長期の『計画』の中で今年の環境変化に『OODA』で対応するべきだと思います。そして年度が終われば『PDCA』でしっかりチェックした上で、翌年の『Action』を考えるべきだと思います。長期の計画があれば大幅に方向性は狂いません。行き当たりばったりな行動を繰り返していれば、行き着く先はどこに行くかわかりません。
借金も同様です。10年後までにこのぐらいの借金で抑えようという計画があれば、今年の借金できる金額は限られてきます。その中でどのようにやりくりするかを考えるべきだと思います。『今年防衛費が必要だから29兆円の予算をあてるんだ。財源がなければ借金しろ。』という、なんとも無責任な予算などは組まないと思います。会計検査院がせっかくチェックしても、次の予算に全く活かされず、アクションが取れない限りPDCAは回りません。 
以前『ご利用は計画的に』という消費者金融のCMがありましたが、まさしくその通りです。今こそ計画が必要なのです。VUCAの時代を生きるために『PDCA』と『OODA』をうまく使いこなしていきましょう!


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