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悪徳【エッセイ】六〇〇字

 早大のオープンカレッジ「エッセイ教室」。秋講座が、スタート。8課題。七転八倒、七難八苦の日々が続く。第3回目のお題は、「あの日」。そして今回の4回目は、「悪徳」であった。3回目の「あの日」は、明らかに駄作。リライトし追ってアップするかもしれないけども、今回は、「悪徳」を。総選挙の前でもあるし。

 「口喧嘩は、嘘をつけば勝てるさ」と、子どもの頃、よく言っていた(いまなら、スマホですぐに調べられるので、有効な手段かどうか、疑問ではあるが)。相手が嘘にまごついている間に、一挙に勝負をつける。姑息な手段であることは重々分かっていても、負けず嫌いな私、ついつい嘘をついていた。しかし、大きくなるにつれ、そんな卑怯なやり方はしなくなっていった。
 ところが、大人なはずの元首相は、その戦法をよく使っていた。勝気で絶対に負けたくないということなのだろう。嘘をつく、姑息な手を好むひとだった。あまりにも幼い。
 東京五輪誘致での「アンダーコントロール」発言も、競合国のネガティブキャンペーンに打ち勝つ「嘘も方便」だったのだろう。普通の人間なら鼻を掻いたりして落ち着かないのだが、彼は、平然としている。屈託のない笑顔。当人は嘘をついているとの自覚がないに違いない。
 「桜を見る会」前日の夕食会を巡る在任中の答弁が、衆院調査局の調査で、118回の嘘があったことが、明らかになり、議院運営委員会で、事実に反するものがあったと、陳謝。参加者の費用を補填していたと、認めた。
 最近の「Dappi」問題。自民党と取引がある法人が、ビジネスとしてアカウントを作り、野党の議員を「嘘」情報で攻撃しているとの、疑いである。ここでも、嘘である。
 やはり「口喧嘩には嘘が強い」のか。いや、「悪徳が栄える」ような世の中が許されて良いわけがない。1979年におこなわれたダグラス・グラマン事件の証人喚問で宣誓書に、「悪徳商人」と言われた海部八郎でさえ、署名する際、手がふるえてなかなか書けなかったのだが、「誰かさん」は、屈託のない笑顔のままでいられるのは、なんなんだ。

Photo: 古本サイト「書肆田高」より

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