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ためいき【エッセイ】六〇〇字

 早大のオープンカレッジが再開。まさか、と思いましたが(笑 師匠も、菅原洋一になってしまうかもと(今日でお別れね♪ 若い人はわからないでしょうが・・・)。
で、その、ひさしぶりのエッセイ教室のお題、「ためいき」でした。あなたは、どんなことを書きますか?600字ですよ。
(あ、正確には、タイトル行と名前の行の40字マイナスの560字です。日経「春秋」、東京「筆洗」並みです)。
提出前ですが、恥をさらす覚悟で、公開します。さて、どんだけ!赤字が入るか・・・(-_-;)

               *
 半世紀ほど前。ライスをフォークの背に乗せて食べることが、恰好良いと思っていた。
 「ママが、ふたりで行ってきなってホテルオークラの食事券くれた。行くでしょ?」
 「わー、緊張するなあ・・・行くの?」
 「行ってみようよ。せっかくだから」
 付き合って半年目。大学2年のとき。K子の目黒の実家に初めて招待され、やっとの思いで食事を終え、バス停に向かう道すがら。息ついた直後のこと。一難去ってまた一難。
 ドレスコード(当時そんな言葉など知らないが)もあるだろうしと、バイトで貯めたお金を下ろし、JUNの黒のジャケットを買った。
 当日。視界が定まらず、震えながらレストランに入った。K子の父親は、T銀行のお偉いさんだったので慣れているだろうと、逆エスコートを期待していた。しかし、なにか雰囲気が違う。緊張している。焦った。ヤバイ。
 食事が始まり、ナイフとフォークを使いこなしていると、悦に入っていた。しかし、ん? と二人、目を合わせる。周囲の人たち、フォークの使い方が違っているではないか!
 どうにか終え、躓きそうになりながら、スローモーション映像のように。レストランからロビーを抜け、小走りにホテルを出た。誰も見ていないことを確認し、二人とも同時に、大きな息を吐いた。「なんだあー、豆をすくうように使えばいいんじゃん」と、笑った。

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