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#47 「検索」と『探索』

1.今日は『旅の日』

本日、5月16日は『旅の日』です。松尾芭蕉が、「おくのほそ道」に旅立ったのが、1689年(元禄2年)の本日(旧暦では、3月27日)、丁度、333年前の今日にあたります。(『旅の日』は、”日本旅のペンクラブ”によって、1988年に命名されました。)

『旅の日」は、毎日新聞(余録)を始め、いくつかの新聞のコラムが取り上げていますので、一般公開されている高知新聞のURLを貼付します。

当時、松尾芭蕉は46歳(数え年)。余り身体が丈夫ではなかったとされる芭蕉にとって、最晩年での旅立ちとも言えましたが、芭蕉は、この日から約150日間、600里(2,400Km)を踏破します。

そして、「長旅のつらさを忘れる景色に心を揺さぶられ、多くの名句を後世に残した。」(毎日新聞「余録」)

2.旅の魅力:沢木耕太郎氏のエッセイから

『旅の日』ということで、先月3日に日経新聞に掲載された、作家沢木耕太郎氏のエッセイ「ただそれだけで」を思い出しました。

東北のある都市を訪れた際にぶらついた繁華街で、たまたま遭遇した客引きの若い男性から紹介された居酒屋で、「至福の時間を過ごすことができた』と、沢木氏は振り返ります。
そして、偶然探り当てたその居酒屋が、グルメサイトでも人気No.1-2 の店であることを知って驚くと共に、旅の真の魅力について、持論を語ります。(以下、エッセイからの抜粋)

「ただそれだけで」(沢木耕太郎:2022年4月3日)下線部筆者

3.「検索」と『探索』

私たちは、日常生活や仕事においても、Googleに代表される検索エンジンを頻繁に使っています。「検索エンジン」は、もはや日常生活に無くてはならない存在になっています。

前述した沢木耕太郎氏のエッセイで言えば、グルメサイトで探すのは「検索」にあたり、一方、沢木氏の探し方は『探索』にあたります。

広辞苑によると、「検索」と『探索』は以下の通り、定義されています。
検索:文書やデータの中から、必要な事項を、さがし出すこと
探索:さぐり求めること。さがしたずねること

「検索」は(決まっている)「必要な事項」を”さがしだす”のに対し、『探索』は、「未知のことがら」を、”さぐり求める”のであり、英語では共に、”Search”ですが、両者には明確な違いがあります。

沢木氏は、手間暇がかかり、失敗しても、「さぐり求める」過程での、様々な出逢いや学びの大切さを説き、『探索』のススメをしています。

私の生活の中でも「検索エンジン」の便利さは欠かせませんが、「検索」で得た情報は、できる限り、原典にあたるように心がけています。
いわば、「検索」後の「小休止」「途中下車」「脇道にそれる」ことを意識してやることで、「検索」に付加価値をつけるようにしています。
少し、大げさな言い方になりますが、デジタルとアナログの統合と考えています。

4.『探索』に乗り出そう

「費用対効果を上げる」「生産性を上げる」観点からすると、「検索」は大変便利な機能です。一方、『探索』には無駄と思えることも少なからずありますが、真の創造は、「検索」からではなく、『探索』から生まれるのではないでしょうか。

「ライフシフト2(人間の発明)」より筆者作成

「ライフシフト2」でも挙げられた、人間の三大発明(物語、探索、関係)は、3角形の中でしっかりとつながり、相互作用を及ぼし合います。

「検索」ではなく『探索』を:たまには「検索エンジン」から離れて、足を動かして原典にあたる、
①語り合う(Narate)
②関係を作る(Relate)
③探索する(Explore)
ー3つの相互作用のなかで、生まれてくるものがあるように思います。

「発想は移動距離に比例する」:経営学者の入山章栄先生が紹介され、印象に残っている言葉です。

複数のキーワードを入力しての「検索」エンジンに頼りすぎることなく、時には、発想の枠を超えた『探索』の大切さを感じています。

本日は「旅の日」:芭蕉が「おくのほそ道」の、”150日間で2400Km”踏破の第一歩を記した日です。
”Today is the first day of the rest of your life”(今日は残りの人生の最初の日)宜しく、少々の失敗は気にせずに、『探索』の心を持って、前に進みたいものです。





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