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uNcontrol

死神から鎌をもらった
もう使わないからと

僕を殺しに来たんじゃないの?
と聞くと

そうだけど
定時は過ぎたし
仕事は今日で終わりだから

と言って
僕の胸に鎌を押しやった

思ったよりは軽い
柄は長いから
振ったら重いのかも

彼は(彼女は?)
去っていく後ろ姿ごしに
スカルの面を外す
黒い衣も脱ぎ去った

ひとり立ちすくむ

こんな物をもらったところで
使い方も教わらないで
どうしろってんだ
粗大ゴミにしたって
捨てれないだろうし
かと言って家に置き場もない

一旦考えたフリをして
スカルと衣を拾い
死神に扮装してみる

どうやら洗濯したばかりらしい
いや
立つ鳥跡を濁さずで
キレイにしたのかもしれない

とりあえず
しばらくは死神ごっこでもしてみるか
今日でバイトはクビになったし
先週両親は離婚して
家には居づらいし

こんな恰好だと
ジロジロ見られて
通報され
職質を受けるんだろう
ハロウィンでもないからな
それまでの
ささやかなゲームとしよう

スマホが鳴動する
「RGB255を狩れ」
知らないアプリが起動し
RED
GREEN
BLUE
のバーが表示される
下限は0
上限は255
はて?

行き交う人々の間を歩む
誰も僕を見ようとはしない
さらに人の多いところで確かめる
同様のこと

僕を見事に避けていく
まぁ
元々自分はそういうタイプだし
都会じゃ
ありふれてるのかも

アプリのRGBバーは
人にすれ違う度
激しく上下動
やがて全てが255になると
強くバイブレーション
示す先には
僕と歳は近いだろう
男の子
胸元が黒ずんで見え
頭上には
「HUNT!↓」
の表示

ああ
そういうことね

僕達は結局選べない
親も
友達も
環境も
何もかも
いつだって選ばれる側
終わり方も同じだってことさ

でも絶望する必要はないのか
誰しもそうであるならば
選択という言葉に
縛られる必要はない

「縛られる必要はない」
って
イイ言葉だな

鎌をシャンと振る
意外と軽い
狩った手ごたえはないけど
彼の胸の黒ずみが
鎌にまとわり
じわりと馴染んで
吸い込まれる

狩られた彼は
思いのほか
安らかな顔をして
その場にパタリと
頽れた

周りでは
高音の悲鳴
彼を揺さぶるサラリーマン
電話するドラァグクイーン
(たぶん救急車呼んでくれてる)
あと
スマホカメラ向ける脳溶け男子

相変わらず誰も
僕を見ようとはしない
ただ一人
黒ずみを狩られた彼以外は

ニヤリと笑って息絶える
彼の人生は
どんなだったろう?
狩る前に聞いておけばよかった

これは多分
ちゃんとした死神の仕事
正式な手続き?
もクソもないんだろうけど
フリーランスなのか?
とりま
しばらくやってみる

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した方がいいのかな?
誰か教えてくれる鎌?
(いいとも!)

今のところサポートは考えていませんが、もしあった場合は、次の出版等、創作資金といったところでしょうか、、、