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シロの初恋

読んでくれる人が多くなると、書いて良かったなって思います。物語に出てくる人達も何処かで目にして懐かしんでくれてたら良いなって・・・

今回は、まさるんの友達の中で一番不思議な存在、シロの物語です。こいつ、本当に良い奴ですよw


とある晴れた日、最初は着慣れない制服にも慣れ始めた1年生の初夏、サチの用事付き合わされた俺は、サチと二人で下校していた。

「ねぇ?まさるん。シロってもしかしたら超能力者かな?」

突然、とんでもない事を言い出すサチ。

「何でそう思うん?」

サチ曰く、シロは普段ぼーっとしてる事が多いと言うかぼーっとしてるだけだけど、何か自分にデメリットが発生する事に巻き込まれそうになると忍者の様に姿を消すと言う。

確かに、担任が沢山荷物を持って遠くの準備室に片付けに行かなきゃ行けないタイミングでばったり出会すと、当然運ぶのを手伝わされる。諦めてみんなで・・・って言うと必ずシロは居ない。

教室のワックスがけの際、仲間の誰かがメンバーに選出されるとみんなで手伝うのだが、必ずシロは居ない。

今日もサチが用事を頼まれたので、みんなに助けて貰おうと声をかけた時にはシロは居なかった。

手伝わないシロを責めんじゃなく、純粋に危機回避能力が何故に優れているのが兎に角、不思議で仕方がなかった。

本当に不思議・・・って

「シロっ!」

何気に見た広場でシロが制服のまま、うつ伏せで倒れている・・・

「シロっ!大丈夫?」

俺とサチはシロの元へ駆け寄った。

「まさるん!サチ!おかえり~」

シロは元気そうに挨拶をした。

「ただいま・・・じゃねぇーよ!何してるんだよ!」

心配した俺はちょっと怒り気味に問いかけた。

するとシロは平然と答えた

「蟻だよ蟻!」

シロはじーっと巣に餌を運ぶ蟻の姿を見ていた。

安心したのを通り越して、呆れるサチと俺。

「シロ!着替えて来るから、お前も着替えて、今日何して遊ぶか考えなっ」

シロにそう伝えると、シロはしばらく黙って考え込んだのちにこう答えた。

「今日は良いや、探検に行く!!」

そう言うと猛ダッシュで家に帰って行った。

シロの言う探検とは、近所をぶらぶらした後、通ってた小学校に遊びに行く事だった。

何故それを知っているかって?

もう数年前になるけど、小学生の俺たちは、シロの言う「探検」って言葉に惹かれ、何処に何しに行くのかとみんなで後をつけた事があるからだ。

その事を思い出したのか、クスクスと笑うサチ。

「ねぇ?」

サチが俺の目をじっと見つめる。大体、こう言う時は、ろくな事を考えていない・・・

「中学生になってもシロの探検って変わらないのかな?」

確かに気になる。謎多きシロ、中学生になって探検ってどこで何をするんだろう・・・

「 後つけてみるか?」

ということで、俺は急いで家に帰り、サチを迎えに行った。

「 あらぁっ❤️まさるんくん!どうぞ!あがってあがって!夕御飯食べて行くわよね?・・・」

サチのお母さん・・・いつもウェルカムモードなのは嬉しいんですが、まだ中学生なんで将来の事なんて全く考えてなくて・・・

「 お母さん!!」

赤面でご立腹のサチが着替えて自分の部屋から出てきた。

あぁでもない、こぅでもないと母と娘の言い合いの結果、遅くなるのは良いけど、未成年だから外泊はダメよって、ただ遊びに行くだけだから💦

無駄な時間を過ごしてしまい、シロを見失うのではと心配したが、流石はシロ!数年前と変わらぬコースで探検を楽しんでいた。

途中にほど良い大きさの石があれば、石蹴りをし、空き缶があれば缶を蹴る。中学生になってもシロは変わらなった。

だけど・・・女子は中学生になっただけなのに、随分と変わるものだ。男勝りなのは性格とはいえ、随分とお淑やかになった気がするし、昔と比べると華奢になった様にも思える。しかも、制服以外でスカート履いてるし・・・

と色々考えながらサチを見ていたら目があってしまった

「なっ何?変?」

戸惑いながらも聞き返すサチに

「可愛いな」

と何気に答える俺・・・

二人の間に何とも言えない時間が流れ・・・

「あぁー!シロが居ない!!」

しくじった💦でも、最終目的地は恐く小学校の校庭だろうと、俺とサチは自然と手を繋ぎ小学校に向かっていた。

小学校に着いた。良い思い出も悪い思い出も沢山詰まった場所。

「居た居た!ほら!砂場!」

サチがいち早くシロを見つけた。シロは、砂場で側転の練習をしていた。きっと何かのテレビに影響されたんだと思う。

「サチ、お前もやってくれば?」

昔ならサチも喜んで混ざってくるんだろうが・・・

「(  '-' )ノ)`-' )バシッ エッチ!変態!!」

えっ!えっ?あっ!今日スカートだった・・・こんなやり取りをしてると、シロが動きを止め一点を見つめ出した。

その視線の先は、鉄棒。一人小柄な髪の短い女の子が必死になり逆上がりの練習をしていた。汚れても良いようにか?俺らと同じ、しかも同じ学年のジャージを来て練習をしている。

「まさるん・・・あの娘知ってる?」

同じ小学校にあんな娘は居なかったから、別の小学校の娘かも知れない。でも、色んなクラス遊びに行ったりするが、見た記憶がない。

じっと見つめていたシロは、すーっと立ち上がり全力で鉄棒に向かって走っていく。びっくりした様子の女の子。

シロは無言で、鉄棒に飛びつくと「これが見本だ!」とばかりに逆上がりをぐるぐるしては、家に向かって走って行った


つづく




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