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『燃えよドラゴン』に関する個人的な話

 少年時代に憧れた映画スターと言って思い出すのは誰だろうか。筆者にとって思い出されるのはブルース・リーだ。怪鳥音と呼ばれる声を発し、ヌンチャクを使いながら、素早い動きで敵を次々に倒していく。その姿に憧れ、家にあるものでヌンチャクのようなものを作って動きを真似していたものだ。日本では最初にロバート・クローズ監督の『燃えよドラゴン』が公開された。公開当時、実家近くにある映画館(秋田県大曲市)ではウィリアム・フリードキン監督の『エクソシスト』と2本立てで、リバイバル時はマイケル・アンダーソン監督の『ドクサベージの大冒険』と2本立てだった。その後は『ドラゴン危機一発』(藤岡弘、吹き替えのテレビ放送で初めて観た)、フランクリン・J・シャフナー監督の『パピヨン』(長嶋茂雄の引退セレモニーの短編も付いていた)と2本立てだった『ドラゴン怒りの鉄拳』、ジャック・スマイト監督の『エアポート’75』と2本立てだった『最後のブルース・リー ドラゴンへの道』と、『~危機一発』以外はスクリーンでリーの映画を観ていた。その後、リー=富山敬のテレビ朝日『日曜洋画劇場』版、リー=谷口節のTBS『火曜ロードショー』版というテレビ放送、ビデオ、レーザーディスク、DVD、ブルーレイと、モニター越しには何度も観ていたが、久しぶりにスクリーンで観たのは2014年1月の“新・午前十時の映画祭”での上映時だった。このときはディレクターズ・カット版でだったが、久しぶりに大きなスクリーンでリーの雄姿が観られたのが本当に嬉しかったものだ。
 香港の裏社会に君臨するハン(シー・キエン)の手下に妹(アンジェラ・マオ)を殺され報復に燃えるリー(リー)は、秘密情報局の承諾を得てハン主催の武術トーナメントに乗り込んでいくというのがあらすじ。だが、映画全体を通して見てみると、アクションシーンは意外に少なく、その分、研ぎ澄まされた速い動き、鋭いキックなど、彼の動きの一挙手一投足のインパクトが強い。特に名シーンと言えるのが、ハンと1対1の対決となる鏡の間のシーンだ。熊の爪を付けたハンと、鏡に惑わされながらもハンを追うリーのシーンは何度観てもハラハラさせるしシビれる。まさにリーの究極といえるアクションを見て、憧れない男子はいないだろう。それは何年たっても変わらないカッコ良さだ。ちなみに、オープニングのスパーリングシーンで相手になるのが無名時代のサム・ハン・キンポー、後半の要塞島での戦いのシーンではジャッキー・チェンやユン・ピョウが出演しているなど、今、観るからこその楽しみもある。
 昨年、ブルース・リー4Kリマスター復活祭と題して、『~危機一発』、『~怒りの鉄拳』、『ドラゴンへの道』、『死亡遊戯』と、スクリーンで観られる機会に恵まれたので4本を連続して立川シネマシティで観た(『燃えよドラゴン』は新宿ピカデリーでの上映に行けなかったのでDVDで)。集中的に観て思ったのは、ブルース・リーのアクションの素晴らしさ、そして、役者としての偉大さだった。後にジャッキー・チェンやドニー・イェンに受け継がれる香港アクションの系譜。その礎となったブルース・リー。その存在と作品を決して忘れることはないだろう。それほどまでに、リーは時代を超えて映画ファンの心を捉えずにはいられない稀有な存在だからだ。


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