見出し画像

#4 デジタル / アナログゲームのメディア的特徴

ゲームの教育効果というと、デジタルゲームとアナログゲームで優劣をつけようとする議論をしばしば見かけます。

しかし、大事なことは優劣をつけることよりも、それぞれのメディア的特徴を理解し、適切に利用することだと思います。

そこで、本記事では、デジタル / アナログゲームの強み・弱みを理解することを目的に、それぞれの特徴を紹介します。

ゲームを教育メディアとして用いる際のメリットや活用法に興味がある方はぜひご覧ください。

はじめに

デジタルゲームとアナログゲームではメディアの機能が異なります。

当たり前にも思えますが、実際にどういった違いがあるのでしょうか。

以下では、次のポイントに沿って、解説していきます。

・メディアの機能とは
・ゲームのメディア的特徴
・ゲームのメディア的活用

メディアの機能とは

メディア研究者のMcLuhanは「メディアはメッセージである」という言葉を残しました。

少し難解な表現ですが、ここで、McLuhanはメディア理解において重要なことは、その「内容」ではなく、内容を伝達可能なものにするメディアの「形式」であると指摘しています。

つまり、たとえ同じ内容でも、メディアの形式によって、人が得る認識や経験は異なってくるのです。

例えば、マーケティングフレームワークを本を読んで学習するのか、e-ラーニングを見て学習するのかでは、それぞれの学習体験は異なるということがイメージできるのではないでしょうか。

では、デジタルゲームとアナログゲームが異なるメディアであることを前提として、その特徴を紹介します。

ゲームのメディア的特徴

Becker(2010)は、デジタルゲームとアナログゲームの特徴をまとめました。※日本語訳に関しては福山(2024)を参照。

この比較から、伝えたいメッセージや活用シーンによって、どちらのゲームが目的に沿っているか検討することができます。

とはいえ、これはあくまで機能の比較なので、より具体的にそれぞれの特徴について見ていきたいと思います。

デジタルゲームの特徴

デジタルゲームの特徴は「システムからの支援」とまとめられるかと思います。

デジタルゲームの場合、感覚的に動かせるようなインストラクションがついていたり、同じ画面を共有することでイメージの均一化が図れたり、複雑な計算等を即時に行えたりします。

そのため、厳密なゲーミングシミュレーションを体験することができます。

アナログゲームの特徴

デジタルゲームの特徴は「遊びとしての物質性」とまとめられるかと思います。

アナログゲームの場合、対人コミュニケーションが容易であったり、物理的なコマを使った思考や議論を深めることができたり、おもちゃ的なインターフェイスでより親しみを持ちやすくなります。

よって、密なコミュニケーションと深い思考を提供することができます。

ゲームのメディア的活用

ここまでデジタルゲームとアナログゲームのメディア的特徴を考えてきました。

最後に、どのようにそれを活用していくか簡単にご紹介できればと思います。

一言でいうと、目的に応じて選ぶ or 組み合わせるということになります。

「目的に応じて選ぶ」は前述した通りですが、「組み合わせる」は少し解説させていただきます。

近年では、アナログとデジタルを組みわせるようなゲーム開発 / 利用も行われるようになりました。

例えば、実際のゲームアクションはコマを使って思考し、複雑な計算はデジタルに任せるといった形式です。

このように、ゲームメディアを組み合わせることで、それぞれの不足点をカバーすることも考えられます。

まとめ

さて、今月は「デジタル / アナログゲームのメディア的特徴」について紹介しました。

デジタルゲームとアナログゲームという対立構造で捉えるのではなく、それぞれの特徴を理解し、うまく活用するという視点でゲームの学習利用を検討していただければと思います。

本記事が、皆さまの今後のゲーム学習に対する考えや学びへのヒントになれば幸いです。

もっと詳しく知りたい方へ

吉田寛(2023)デジタルゲーム研究

藤本徹 編著 / 池尻良平・福山佑樹・古市昌一 ・松隈浩之・小野憲史 共著(2024)シリアスゲーム(メディアテクノロジーシリーズ 5)

CASE1:Strategic Marketing Simulation with Markstrat

CASE2:マネジメントゲームMG研修


筆者:大空 理人
東京大学大学院 学際情報学府 修士課程。Ludix Labにて、人の学びや成長につながる「楽しい経験」を創り出す学習コンテンツの設計や教育プログラムのデザイン方法論を研究。また大学院進学と同時に、株式会社NEXERAに新卒入社し、クリエイターとしてビジネスゲーム及び研修カリキュラムの企画、開発、運用を行う。2023年に『ELSI Game Lab』を設立。科学技術と社会の接続・課題解決にも努める。

東京大学 ELSI Game Lab:@ELSIGamelab
大空 理人:@masato_edut


この記事が参加している募集

自己紹介

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?