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信じていた音楽は効力を失った


耳の聴こえないあの娘の事を思い出して嫌になったり、僕が座る岬にはもう何も無いのかもしれない事に落胆したり、「誰もが自分勝手だな」と思った自分が
、その最たるものだったりする。

信じていた音楽は効力を失った。ずっと頼りきりで、プレイリストの一番初めにあったあの歌。僕らの天井を切り裂いた傷みたいなあの詩。
結局そうなってしまうなら、くだらないと思う。全てを捨てて意識だけの存在にでもなりたい。今なら、それはきっと自由だと思う。

きっとこれを読むお前も「わからない」などと、ほざくのだろう。それでいい、きっと間違っていない。二十四億光年の孤独の先で、僕は誰の引力も知れない。呼び鈴が鳴る。言葉は置いていく。どうせ、全ては死に行くのに。



海辺を歩いて行った先で、優しい言葉のように奥まった入江がある。頭を掻きむしって描くものを探していた矢先、強い風が吹いてスケッチブックは海に流された。僕は目を閉じて、自分の声を信じようとして、明日から続く雨を予告するように飛ぶ、鳥たちの声を聴いた。それはどうやら深く沁み込んでいく、全く新しい音楽のようだった。

2024.01.27 > 28

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