碧海祐人

宅録音楽家 / シンガーソングライター 文章を書くのが好きです、是非行間を汲み取って…

碧海祐人

宅録音楽家 / シンガーソングライター 文章を書くのが好きです、是非行間を汲み取ってみてください。

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きっと春に雪が降るようなことじゃない

今日は知り合いが、少し前の約束をよく思い出すわね、と言う。どこか、もの思いに耽るような顔をして。 連絡が来る。明るくなっていく街からの光で部屋が青くなる頃。素直になって言うべき大切なことを隠す。これで、何回目だっただろう。 誰かが本当にいなくなってしまうような、そんな事が日常の真隣にはあるはずなんだ。それは、きっと春に雪が降るようなことじゃない。 今日も知り合いが、少し前の約束をよく思い出すわね、と言う。どこか、もの思いに耽るような顔をして。 誰かが僕に放った言葉や、

    • 「転写する旅」

      ある日空から落ちてきた探査船は、どうしても隠しきれない秘密を燃料に、裏の森に降り立った。木々の隙間からほのかな焚き火が見える。狼煙は空高く伸びている。星を眺めれば吸い込まれるようで、量子的な何かに意識を食われる。気づけば真白の中にいて、またしても感動していた。 いつかの記憶で夏を象徴するような女性が、ある日夢に出てきたようで朝起きる。脳が認識を獲得していくうちにぼんやりと忘れる。最近出逢ったあの人か?女性の影は瞬くうちに消える。目尻には涙が渇いていたが、きっと哀しくなかった

      • へらへらと石橋を叩くような。

        最近気づいた事だが、フォーマルな場面や固い空気の中で、くだけた発言をする事が多い。そしてその後にへらへらする。この自分の笑い声に気づいた時には寒気がした。なぜだろうかと深化していく。 主張ではなく、その人の自信。多くのステージに立つ人間は胸を張って大きな声で真面目な事を真面目な顔で話す。随分と立派そうである。 もちろん褒められるべき事だが、そこにある大きな違和感にいつも複雑な気持ちになる。どうしてそんなに自信ありげに自分の主張の上に立っていられるのだろう?と。高比良くるまの

        • 社会と自分のどうしても繋がりづらい関係性

          「tiktokをダンスなどで戦略的に〜」 「俳優業を専門でやっていくならマネタイズが〜」 カフェで細イケメン黒タートルネックがブランド物片手に流暢に吐き出す言葉たち。 その間の僕の心はというと、 「ああ!駄目だわ!無理すぎる!劣等感!気持ち悪すぎる!心がキツい!」 でした。 いや、別に良いのよ。ブランド物も、黒タートルネックも(なんで起業してますよ系ビジネスマンチックな人ってみんな黒タートルネックなんでしょうね)、細イケメンでセンター分けなのも。 問題は、資本主義社会、

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        きっと春に雪が降るようなことじゃない

          抑えきれない気持ちがあるのなら、月を見て偲べば良い

          表明すること。例えば有名な誰かが亡くなった時、何かを経験した時、人はSNSに、人生における大きな影響を長文で書き記す。 「いや、それ一人でやれば良くないか?」 と、思ってしまう僕は性格が悪いんだろう。中にはそこまでの感動や影響を受けてもないくせに(そういうのって作品や人柄から結構わかりますよ)軽々に載せやがる輩もいる。「今日は尊敬する〜さんとワークショップでした。光栄で、実りある時間でした!」「〜さんの作品中学の時聴いてました、ご冥福をお祈りします。」なんてのは誰かに表明

          抑えきれない気持ちがあるのなら、月を見て偲べば良い

          僕を支配する誰かのさみしさなど

          綱渡りのような帰路で、心と穏やかな時が分裂する。この気持ちをどう伝えたらいいのだろう?わからないから、読み手にもこれを伝える為に、わからないものを書く。 まるで当たり前のように選りすぐられた果実、この無力さはきっと人にしか発生しないもの。詳らかにしていけば、澱みでしかないキメラのような歪な動物。ただし人はそれに従事する。 これは天体にケチをつけるようなこと。やめておくか、と思う。 そう、星や月の話をしたい。いつも僕を救って離さない、風や波にさえ揺るがない光のこと。 勝ち負

          僕を支配する誰かのさみしさなど

          信じていた音楽は効力を失った

          耳の聴こえないあの娘の事を思い出して嫌になったり、僕が座る岬にはもう何も無いのかもしれない事に落胆したり、「誰もが自分勝手だな」と思った自分が 、その最たるものだったりする。 信じていた音楽は効力を失った。ずっと頼りきりで、プレイリストの一番初めにあったあの歌。僕らの天井を切り裂いた傷みたいなあの詩。 結局そうなってしまうなら、くだらないと思う。全てを捨てて意識だけの存在にでもなりたい。今なら、それはきっと自由だと思う。 きっとこれを読むお前も「わからない」などと、ほざく

          信じていた音楽は効力を失った

          言葉がありふれた世界で、また君と交信したいと想う

          僕らにできることなんてものすごく限られていると思う。それはそのはず。 三つ並びの席のど真ん中に腰を下ろす。それもそのはず。 反射する水面に、鏡に、強く期待を込めて眼差しを送る。ような、そんな風に君の時間を貰った。さりげない優しさなんて存在しなかったはず。何かを最後まで走り終えることは最高速を捉え損ねることなんだと。 一時間前に飲んだアイスコーヒーが強く胃を軋ませる。 言葉がありふれた世界で、また君と交信したいと想う。かえって眠りきった朝の街が美しくて、交わした約束なん

          言葉がありふれた世界で、また君と交信したいと想う

          やさしいはなし

          友人が去ってしまった店内はやけに静かで、ふと流れ出すMy foolish heart。薄暗い中に伸びるセードの影を眺めている。 今日この小さな喫茶店に辿り着くまでの、まるで日記のようなくだらない、どこにでもある話をさせて欲しい。 急いで街を走り抜けて、それでも電車に乗れなかった時の寂しさだとか、誰かの苛立ちに満ちた行動が自分に向いた時の苦しさだとか、おおよそそんな感じであった。心。 小さな成功体験(たかだか乗り換えに成功して少し早く目的地に着けるだとかそんなことだ)の後、

          やさしいはなし

          読む気のない本を集めて、歌う気のない歌を作って

          誰かの事を考えて言葉を待つその間に、渦巻いた血が歪さを掲げて追いかけてくる。 余裕がないと怒りに変色するのが早い。 せめぎ合う気持ちの奥で穏やかな言葉に変換する時の副産物はいつも疲れだけだ。 確かなことなんて何もないから奪われていく。 優しさの裏返しが見放すことになってしまいたくなくて伝えていたことすら、僕のためだ。 読む気のない本を集めて、歌う気のない歌を作って、素直じゃないと詰められた時の言い訳を考えておく。 訪れたあなたの顔を見たくなかったと言う。それは間違いな

          読む気のない本を集めて、歌う気のない歌を作って

          liner note?___「Opal];

           「Opal」に関して振り返っていきまス;// 目谺。 ・所カnn *歌詞;// ・聴こテ欲しい謇? <br>*結ビ&& 所感||"" いつかの心の状態について話そう。 横隔膜みたいなものが動いて、その度にその表面のざらざらが酷く痛い。君にとって世界はそんなに美しいかな?もう終わった何かにすがりついたまま、時間をただ浪費していくのにはもううんざりなんだよ。かといって、きっともう何も変わらないんだ。みんなと仲良くなれれば、これを読む君じゃない人とすら仲良くなれれば、と

          liner note?___「Opal];

          liner note___「光を浴びて」

          2023年9月27日リリースのシングル「光を浴びて」に関して振り返っていきます。 目次 ・所感 ・歌詞 ・聴いて欲しい所 ・結び 所感 2023年の年度を跨ぐ頃、社会における自分の不甲斐なさを強く感じていました。誰かに強く自分の言葉を押し付けられなかったり、それによって体の内側に反響した言葉が痛くて何もできなかったり。人として変化する事を期待せずには生きていけない所まで精神は困窮していました。 結果的に自分の中にある大きなモノと対峙し、人間的に一つ大きな殻を脱ごうとし

          liner note___「光を浴びて」

          指が折れていって、小さな世界みたいな事。

          あなたは何がしたいの? と問うと少しだけ顔が歪む。僕はイヤな人間なのだな、と感じる。その度。 複雑に見える世界で、シンプルに事を並べて、あたかもそれぞれに光があるように説くと、わかったかのような気になる。これがとても危険だ。でもあなたはおそらくきっとそれを求めていて、失われてしまった何かの正体を掴めずにいるんでしょう?僕は全てに是非を付ける。これを優しさだと信じている。 ろうそくに火を灯す。アガパンサスが下を向く。雨がバケツに溜まる。あの人はヨリを戻したらしい。僕はたまに

          指が折れていって、小さな世界みたいな事。

          私はよく、すれ違ったはずの誰かを思い出す。

           ある写真を見る。それはとある祭りの写真だ。 少し遡る書き方をする。2010年代に入り、乾燥した大地に注がれる水のように、写真は奇妙に日々に馴染んだ。その時代を成長痛とともに暮らしてきた世代としてはあまり俯瞰では捉えられないが、おそらくそれはごく自然な、不気味なくらいの、貴重さみたいなものが薄れていく変質だっただろう。その悪い意味でのインスタントさが写真を食い殺していくのをはっきりと覚えている。  話が逸れてしまった。思い出すことの話。写真に。そして、それ以外にも。落とし物や

          私はよく、すれ違ったはずの誰かを思い出す。

          新しいところを歩いている。

          昨日、君が伝えてくれた愛や、誰かの投げやりさが僕に齎した苦には、目をつぶろうと思うんだよ。 「ドントシンク、フィール」 言ってみれば、僕にとって君なんてどうでもいい訳だし、君にとってもそうだろうと思う。だから、 君のことを考える事はもうやめようと思う、んだ。何もかも考える事はもうやめようと思うんだ。もちろん、それは必要な事だ。これからとても必要になると思う。 でも、そんな事で、足を前に出せなくなる事や、指輪を外せなくなる事や、名前を書く紙を取り上げられる事を招くのなら

          新しいところを歩いている。

          どうしたって取り戻せないものはある。

          連日、酒を酌む。 もう、右が、西が、奥が、後が、判らなくなってきた。読んでいた文章が、沈み込んで真白に消える。そうだ、"街"だ。街のことを考えていた。 ある時、涸れた赤茶色の煤に塗れた、枯淡の街を見た。路地は影に暗く、工業地帯と一体になった街で、遠い煙突からは常に紫色の煙。所々途切れた色で鮮やかな、表通りを走り去った記憶が懐かしい。 僕はいつも何かを探していた。ロケットのパーツや、指揮棒で振る旋律、大逆転の見込みや、貴重な装備、パワーストーン。きっと今もそんなものを探して

          どうしたって取り戻せないものはある。