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どうしたって取り戻せないものはある。


連日、酒を酌む。
もう、右が、西が、奥が、後が、判らなくなってきた。読んでいた文章が、沈み込んで真白に消える。そうだ、"街"だ。街のことを考えていた。


ある時、涸れた赤茶色の煤に塗れた、枯淡の街を見た。路地は影に暗く、工業地帯と一体になった街で、遠い煙突からは常に紫色の煙。所々途切れた色で鮮やかな、表通りを走り去った記憶が懐かしい。


僕はいつも何かを探していた。ロケットのパーツや、指揮棒で振る旋律、大逆転の見込みや、貴重な装備、パワーストーン。きっと今もそんなものを探している、ずっとそんなものしか探していない。


街には、小さく煌めいた路傍の石みたいな日常がある。誰も手を差し出してくれない、優しい人みたいな非情さがある。指先で隠した月が、まだこの街を照らす役割に光る間、僕は電気を消して、じっと、この街の気配を知りたい。
朝方の紫、川は濁る。夕方の鮮やか、緑は上から紅くなる。どうしたって取り戻せないものはある。ソレナラバ!と君は叫ぶ。


時間や商いに辟易したついでに、途方もない数の炎が胸を焼く。、、?酒に内臓が焼かれているだけかもしれない。笑
きっとそうであるくらいがいい。僕はいつだって、言葉を冠すると消えてしまうことを知っているから。


2023.09.15

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