中央銀行と法定通貨とステーブルコインそのリスク JPYC7

ステーブルコインが暗号資産経済圏で通貨のように機能し得る貴重なトークンとして成長しているのは事実だが、それを規制する必要も、中央銀行や金融当局側からなされるようになってきた。

これはよく考えないとわからない経済のために基本的に大切なことを含んでいる。
表層だけとらえて、イノベーションとそれに対する既存勢力の規制ととらえてしまうと、本質的なやばさがあることに気が付けなくなるからだ。

特に、日本は特殊な状況にある。
実に30年間もデフレで物価が上がる経験をしてない。
第二次世界大戦後1949年まで数年で200倍ものインフレを経験しているのに、その後はほぼ、金融の安定が維持されている(オイルショックでインフレ20%になった年はあるが)

今の日本人のほとんどは、物価は自然に安定した状態しか経験してない。そのような経験しかない人間が日本銀行の目的を読むとどう感じるだろう。

ーーー日本銀行の目的(日本銀行のウェブサイトより)
日本銀行法では、日本銀行の目的を、
「我が国の中央銀行として、銀行券を発行するとともに、通貨及び金融の調節を行うこと」および「銀行その他の金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保を図り、もって信用秩序の維持に資すること」と規定しています。

また、日本銀行が通貨及び金融の調節を行うに当たっての理念として、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」を掲げています。ーーー

こんな当たり前のつまらないこと書いてと思ってしまう人おおいのではないだろうか?

私はステーブルコインについて調べていくことで、貨幣の基本機能、価値の保存、交換、尺度 全てが安定を基礎にしていること理解して、上記の日本銀行の役割が、今のこの社会の基盤維持に基礎になっているとわかった。

ところが、ステーブルコイン発行は一企業によりなされている。企業は、売上と利益を出すことを目的としている。理念のある企業が伸びることは多いが、それも長期的な売上と利益を伸ばすことと目的が一致している。

ステーブルコイン発行にいて、一企業が中央銀行が目的とするような目的を持つことを期待するのは無理があり過ぎなのである。

通常、中央銀行と政府は分離している。それはそのための機能と権力を分割してでも、物価や経済の安定を目的とした組織を維持しておかないと、その国の経済圏に、結果的に、長期的に、悪影響が広がることが理解されているからだ。
政府主導で、選挙対策や短期的な経済対策でお金がガンガンに発行されたら、経済が大混乱することが想像できる。ちょうどいいくらいの景気刺激対策は必要だが、歯止めなくこれをやると、ハイバーインフレになってその国の経済が大打撃を受けた例は、いくつもある。最近だと、ジンバブエ、トルコあたり。

ステーブルコインは全体での発行量は既に1500億ドルに達している(2021年11月26日 CoinGeckoデータより

この規模のステーブルコインが、政府、国、中央銀行からは少なくとも直接管理できないお金のようなものとして存在していること、しかも売上と利益を最大化することを一番の目的にせざるを得ない企業、あるいは何らかのグループにより運営されていると、リスクと判断されるのは自然なことだ。

これに対して、単純に技術革新を規制が阻害するというのはお金をテロ等に悪用したい人への対策(アンチマネーロンダリング対策)とセットになって主張できないと、乱暴に過ぎることになる。俺たちは儲けたいだけだからテロで死んだ人いてもそれが自分でなければいいやと言っている程度のモラルだ。

通貨発行権は本来は中央銀行のような目的をもった組織のみが持つべきものだった。 ただすでに始まっているキャッシュレス社会では、厳密にお金のようなものを全部厳密に規定すると、利便性を損ねて、ひいては国際競争力もそこねてしまう。

SUICA、PASMO、クレジットカード、Paypay. 使い始めると便利でもう紙幣や硬貨を使う気になれない。経費精算のコストも考えるともう絶対に。

JPYCの場合は、自家発行型前払い式手段という届け出でにより法的な位置づけをえられることでスタートした。技術的にはERC20という他の多くの暗号資産と同じものだ。
ーーー自家発行型前払い式手段とは(日本式決済協会のHPより)
自家型発行者(届出が必要な発行者)
発行者から物品の購入やサービスの提供を受ける場合に限り、これらの対価の支払いのために使用できる前払式支払手段を発行しており、法に基づき財務局長等へ届出を行った者を自家型発行者といいます。発行している前払式支払手段の未使用残高(前払式支払手段の総発行額-総回収額)が3月末あるいは9月末において、1,000万円を超えたときは、財務局長等への届出が必要となりーーー

これはリーガルハックの天才岡部(JPYC社 社長)さんが見出したブレークスルーだった。さすがだった。ただ問題はこれからなんだ。
法律や規制は、本来はよりよい社会実現のためにあるといってもいいのだろう。だから、リーガルハックしてでもそこに、多くの人が望む理想があれば、それは前進させていくことができるのかもしれない。

JPYC社はVC等から最近も5億円の資金調達を行った。さらに売上と利益へのプレッシャーは厳しくなることだろう。岡部さんの理想をそれとすり合わせていくことが、より大切になっていくのだと思う。




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