みなさん、こんにちは。ヨコハマ・フットボール映画祭note公式マガジン第26回を担当します、スタッフの澤野です。よろしくお願いします。

ヨコハマ・フットボール映画祭2021の会場内ギャラリーにて、フットボールカルチャーを愛する皆さんとの交流の場、フットボール・エキスポ 2021が開催されます（ギャラリーは入場無料）！

そこでヨコハマ・フットボール映画祭note公式マガジンでは、フットボール・エキスポ 2021へ出展される方へのインタビューを実施し、読者の皆さんへお届けします。

今回は、OLSC Japan（リバプール・サポーターズクラブ日本支部）の代表である田丸由美子さんに、イギリスで始まったキャンペーンである#HER GAME TOOについてお話をうかがってきました。
（2021年9月3日 オンラインにて取材）

サッカーにおける性差別とは

ーー#HER GAME TOOとは、そもそもどのような取組みなんでしょうか？

田丸　この#HER GAME TOOというのはイギリスの12人のサッカーファンの女性が始めた運動なんです。

彼女たちが今年の5月に動画をTwitterにアップしたんですね。「男性からこういうことを言われてます」と紙に書いてみせて。

ーー「あなたは女性だからサッカーを分かっていない」「キッチンに戻れ」と書いてありますね。

田丸　スポーツライターのベン・メイブリーさんがこのツイートを紹介してくれて、日本のファンで動画を見てくれた人も多いと思います。

田丸　彼女たちはフットボールのクラブにコンタクトをとって、女性ファンへの性差別がなくなるよう協力を要請しているんです。

プレミアリーグのクラブはまだですが、スウォンジーや2部以下のクラブがいくつか賛同してくれています。ブリストル・ローヴァーズはピッチに#HER GAME TOOの看板を出して、マッチデープログラムでも紹介してくれました。

そうそう、ブリストルの女子チームはアウェイユニフォームの胸にロゴを入れてくれたんですよ！ちょうど昨日（9月2日）BBCに記事が出まして。彼女たちの運動が今すごく広まってきているのを感じています。

リバプールサポーターの女子会にて

ーーお召しのユニフォームで一目瞭然ですけど（笑）、田丸さんはリバプールのサポーターだとうかがっています。どんなきっかけで#HER GAME TOOの活動と関わるようになったのですか？

田丸　私は日本のリバプール公認サポーターズクラブの代表をしているんですが、コロナ禍になってリアルイベントがまったくできなくなってしまったんですね。

それで去年の夏に女性のリバプールファンだけを集めて女子会をオンラインでやったんです。6人ぐらいパネリストになってもらって「この選手のこういうところが好きだ」とか「弟にしたい選手は誰か」なんて話をしてもらいました。

じゃあ今年はどんな話をしようかって時に、女性のサッカーファンが男性ファンからちょっと差別的なことを言われているってTwitterで話題になっているよと。それが#HER GAME TOOのキャンペーンだったんです。

女子会をする理由の一つに、差別的な男性ファンがいないところで話をしたいというのがあります。「そんなルールも知らないのか」「戦術知らないでサッカー見てるのか」とか言われたりするので。そういうことを言う人がいない場で話をしたいってみんな思ってるわけです。

田丸　それであれば私たちで女性のサッカーファンにアンケートをとって、そういう体験があるか聞いたらいいんじゃないかと。リバプールのサポーターズクラブのアカウントから発信したらすごく拡散されて、200人くらいの女性が回答してくれたんですね。その結果がこれです。

自分が好きなチームや選手のことを話す時、男性の目を気にして自由に発言できないと感じている人が3割ぐらいいるわけですね。あとはリアル、オンラインを問わず「オフサイドもわからないのか？」「イケメン選手が好きなだけだろ？」などと言われるのを4割の人が経験しています。

田丸　アンケート結果のツイートをした時、エンゲージメント数が1万越えで、インプレッションが28万だったんですよ。すごく多くの人が関心を持ってくれているんだなって感じました。

コメント付でリツイートをしてくれた人は、ほとんどが男性。女性の場合はサッカーではなく、プロレスやアニメ、音楽のファンの方。他のジャンルでも女性への性差別があると感じましたし、女性のサッカーファンはやっぱり声を上げられないっていうのもよく分かりました。

もちろん多くの男性は女性ファンに対して偏見など持っていないこと、女性に対して上から目線でものを語ったりしないことは承知しております。少数ですが、女性からの差別的発言の例もありました。

ホームページにも記載がありますが、このアンケートは決して男性ファンを批判・非難するために行ったものではないんです。あくまでこういう現状があるということを知ってもらう目的のものですので、ご理解いただけたらと思います。

ーーリバプールファンの反応はいかがでしたか？

田丸　リバプールの情報を発信しているアカウントなので、ツイートに反感を持たれた方も当然いらっしゃいました。ただ事前に男性のスタッフにこれをやってもいいかって聞いたら「ぜひやりましょうよ！」って多くの人が言ってくれたんです。

ネガティブな意見もいただきましたけど、体感としては9割は応援してくれて、アンケート結果に興味を持って見てもらえたようでした。とはいえサポーターズクラブのアカウントで、ずっと#HER GAME TOOの発信ばかりをやっているのは良くないなと思っています。

サッカーは女性のゲームでもある

ーー今後の活動について、それからフットボール・エキスポへの出展にあたっての抱負をお聞かせください。

田丸　女性でも安心して、自信を持ってサッカーについて語ったり観戦したりプレーしたりできる環境にしたいんです。#HER GAME TOOって日本語に訳すのが難しいんですけど、サッカーは男性のものだけではなくて女性のゲームでもあるってこと。そのためにもこういう性差別があるんだよっていう認知を広めたいです。

#HER GAME TOOのメンバーはファンを増やして、クラブやメディアに働きかけて広めてもらうっていうことをやっているので、私も同じようなことができたらいいなと。

アイディアとしては#HER GAME TOO JAPANみたいなアカウントを作って、そこから発信する。サポーターズクラブでこれ以上発信するとフォロワー減っちゃうようなので（笑）

今回の出展のお話をいただいて、#HER GAME TOOの彼女たちにコンタクトが取れたんですけど、すごく喜んで応援してくれています。フットボール・エキスポの展示に関してもぜひ共有してほしい、自分たちも発信するって言ってくれて。

田丸　フットボール・エキスポにはリバプールのサポーターズクラブのアカウントを通じて私のことを知ってる人もたくさん来てくださると思うので、男女問わずお話ができたらと思ってます。

それからアンケートではたくさんのJリーグのサポーターの方が、試合を見に行ってスタジアムでこういうことがあったと回答してくださっていたんです。先日#HER GAME TOOのパーカーを注文したので間に合えばそれを着て、国内外のクラブのサポーターの皆さんをお迎えするのを心から楽しみにしています！

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​記事に載せていない田丸さんのお話で印象的だったのが「女性なのにサッカーがわかるなんてすごいね！」という言葉を性差別と受け取る人がいる、ということ。私も意識せずに発言したことが過去にあったと思います。

ただこの活動は決して男性ファンのみを非難するためのものではありません。過去の自分は変えられませんが、これからの振る舞いは変えることができる。そのために、“性差別がある”ということを知ろうというものです。

私には二人の娘がいますが、幸いこれまでスタジアムや学校で心ない言葉をかけられたことはないそうです。願わくば彼女たちの未来も、心おきなくサッカーを楽しめる世の中であってほしい。そしてそう願うのであれば、自分はどうアクションすべきかが今問われていると感じました。

最後までお読みいただきありがとうございました！
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