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寫眞展「100/300/800/850」を忘れないために、言葉をたくさん残しておく。

2022年11月28日。
半年以上かけて準備してきた寫眞展「100/300/800/850」
全日程が終了いたしました。

まずはお越しいただきました皆様、
そしてご協力いただきました皆様に、
心より感謝申し上げます。

終演から早くも一月が経ちまして、
自分自身が忘れないための記録も兼ねて、
最後にちょっと(という文章量ではないですが(笑))だけ、
振り返らせて下さい。


今年は寫眞展を、どうしてもやりたかった。

本来は2年前、2020年に「4回目の歳男&10年ぶりの写真個展」
と言う肩書き開催する予定でした。
状況が状況名だけに、早々に断念せざるを得なくなり、


12年前、私はまだ高円寺に住んでいて、
縁を頂いて高円寺の「タコスカフェ」というお店で写真展を開催いたしました。

このときはお店の壁をお借りして、2ヶ月近く開催をさせて頂き、
どちらかというと「企画展」な感じでした。
ですので、ギャラリーを借りて、真っ白な壁を自分の壁で彩るという、
本当の意味での「寫眞展」は今回が初めてでした。

なので、できるこだわりは全てやってみようと覚悟を決めておりました。
・「2つの企画」を一緒に出すこと
・そのうち1つはちゃんと額装して展示すること
・できるだけ沢山の寫眞を観てもらうこと
・納得できる言葉だけで表現すること
・できるだけ居心地のいい空間を作ること
・12年前と同じ、生まれ育った「高円寺」で開催すること
などなど。

一番うれしかったのは、高円寺で素晴らしいギャラリーに
巡り会えたことでした。
高円寺「ギャラリーSUMMER of LOVE」。

高円寺からもほど近くわかりやすく。
一人だけで展示するにはちょうどよい場所。
大きい窓で中がよく見えて、光も気持ちよく入り。

そして何より、その名前。
「SUMMER of LOVE」
人生で初めて泣いたアニメが「交響詩篇エウレカセブン」な私にとっては、
ギャラリーの名前を聞いて、運命すら感じました(笑)
ここ以外、絶対ありえないと。

開催日の丁度半年前、予約開始日すぐに申し込みをして、
それからは「寫眞展」が思考の中心に据えられた半年間が続きました。

とにかく、自分の「今」をできるだけ出したい。
「今やっていること」をメインに、沢山展示したい。
では、何を展示しようか。

1つは、去年から決まってました。

「Himitsu Girls’’!(Many Seclets!!)」

ここ数年、ポートレート撮影をしている度に、
被写体の皆様にお願いして撮らせてもらっていたポーズがあります。
それが、人差し指を口元で立てる、いわゆる「ないしょ!」の
ポースでした。

この1枚から「Himitsu」は始まりました。
そしてこの1枚でシリーズ化を決めました
寫眞展で掲示したキャプション

本格的に撮り貯めし始めたのが2020年からなので、実質2年強。
同じ方でも、場所や状況によってその表情は変わるので、
撮影人数自体は実質20人程でしたが、あれもこれもとかき集めたら
総勢200枚以上。
展示できたのはそのほんの一部でした。

「Himitsu Girls’’!」実際の展示風景

なので、未公開分も含めた「完全版」をこちらで公開です。

https://flic.kr/s/aHBqjAhC3b

ちなみにタイトルは速攻で決まりました。
はい、おわかりの通り私の敬愛するバンド、
ZAZEN BOYSの曲をお借りしております(笑)

このシリーズは続きます。続けます。
沢山のSecrets、まだまだ集めていくつもりです。
(そしてこれからは「オトコノコのHimitsu」も集めていこうかな、と)

「Ribbon-ed :01」

寫眞個展に向けて、完全に新規のシリーズ企画を立ち上げようと、
1年前からずっと、どんなものが良いかと考えておりました。

漠然と考えていたコンセプトは、
「ある共通の小物を使って、色んな方を撮ってみよう」
というものでした。
元々学生時代からン十年、ずっと演劇にハマり続けてきて、
寫眞にもその要素を絡める企画を色々考えて
(そして考えたまま実行せずボツにして)まいりました。

今回、改めて考え始めたときに、浮かんだテーマは「見立て」でした。
同じアクセサリーを複数の被写体が複数の条件下で撮るとき、
そのアクセサリーに複数の「意味」をもたせられられないか。
ポートレート撮影での「見立て」を表現してみたいと、
思うに至ったのです。

アクセサリーを何にするかはとても悩みました。
ヘアバンド、ヘアピン、指輪、ブレスレット、イヤリング…。
どれも「見立て」としての自由度は低くなるのではないかと。

2ヶ月ぐらいずっと悩んで、色んな人にアイデア募ったりした中、
ふと思いついたのが「リボン」でした。

日暮里の繊維街で探し回り、
アンティークの1対のリボンを見つけたとき、
ようやく全てが結ばれました。

「Ribbon-ed :01」メインビジュアル


展示の際に掲示したキャプション

このリボンに色んな「意味」をもたせて、
被写体の方に大まかな「意味」と撮影する「状況」を提示し、
衣装はそれぞれおまかせして、お互い撮影に望む。
今回はそんな流れで、試行錯誤しつつ撮影をすることにしました。

今回の寫眞展では、4名の方に被写体になっていただき、
リボンに四種の「意味」をもたせてみました。

「1:Saho」

最初に撮影したのは「沙穂」さん。

この企画を撮影するとき、絶対に参加してほしい、
一番最初に撮らせてほしいとお願いしたのが、沙穂さんでした。
2020年以降の私のキーになる作品に、沙穂さんが写ってます。

今回は沙穂さんの被写体としての透明感を活かして、
リボンには「先への希望」の意味を持たせたいと伝えました。


そしてこの「Ribbon−ed」を製作していくにあたり、
それぞれのイメージを多方面から深化させる手段として、
「コンセプトソング」を決めていくことにしました。

私の中でイメージを膨らます度に、
そして相手に大雑把なイメージを伝える時に、
「この楽曲を聞いてみて下さい」と伝え、そこからお互いに膨らむ
イメージやコンセプトをすり合わせて深化できるのではと
考えたのです。

今回の4作品には、この10年で一番ハマったアーティスト、
「DAOKO」さんの曲を「コンセプト」としてピックアップしてみることに
しました。

沙穂さんの「希望」に対すして選んだのは、
DAOKOさんの「はじめましての気持ちを」と「終わらない世界で」。

白い部屋の中で、窓の外を観ながら、
外向きの希望と、ちょっぴりの寂しさ。
最初に撮った作品は、そんなイメージでした。

実際の展示はこの様になりました

展示したもの以外も含めた、この作品の完全版はこちらをご参照下さい。

https://flic.kr/s/aHBqjAhyrr


「2:Junko」

二人目は、「枝窪純子」さん。

枝窪さんとはもう5年以上撮らせて頂いておりますが、
とても撮りやすく、何度撮っても発見がある、楽しい方です。
寫眞に対する表現力に絶大な信頼を置ける方なので、
今回も是非参加してほしいとオファーいたしました。

枝窪さんにお願いしたのは、
リボンが「縛るもの」となるモチーフ。
和風の部屋で、色んな服に繋がれて、抜け出せない。
沙穂さんの「1」とは対象的な、暗く、そして艶っぽさを加味した
撮影に望みました。

どうしても古民家で撮りたいと考え、都内郊外含め色々探し周り、
「いせやほり」という素晴らしいスペースにたどり着きました。
「軒先」などで撮影できる古民家はままありますが、
この「いせやほり」では、昔「蔵」だった場所で撮影ができたのです。

こちらの蔵のスペースが今回のイメージにピッタリで、
退廃的で艶っぽさをより深く演出してくれました。

この作品のコンセプトソングは、DAOKOさんの「アキレス腱」を選びました。

呪縛と諦め、そしてささやかな抵抗。
暗く閉じ込められた蔵の中で、数々の服に囲まれ、
抗うわけでもなく、でも目の奥に秘めたものを感じて。

展示したもの以外も含めた、この作品の完全版はこちらをご参照下さい。

https://flic.kr/s/aHBqjAhB35


「3:Minami」

3人目は、「高橋みなみ」さん。

私が撮らせていただいてる方は「役者」さんや「謎解きイベント」関係の
方が多いのですが、「ダンサー」はあまり撮ったことがありません。

今年の春に撮らせていただいた、とあるイベントで知り合いました。
その後1回撮らせていただいたときに、カメラの前での立ち方に
一瞬で惚れ込みまして、その場でこの作品への参加をお願いしました。

撮影済みの前2作品が「屋内」での撮影でしたので、
ここからは外ロケにして、躍動感の高い作品にすると決めておりました。

この作品のリボンの役割は、「祈り」と「広がり」。
祈祷師が神様に祈るように、リボンをたなびかせて踊る。
まさにみなみさんが適任でした。

雲ひとつない、海沿いの草原での撮影は理想的で、
みなみさんが選んだ衣装と相まって、開放感に満ちた作品ができあがりました。

この作品のコンセプトソングは、DAOKOさんの「燐光」。

そして今年DAOKOさんが参加されていた写真展「むすひむすひ展」も、みなみさんへのイメージ伝達の参考にさせていただきました。


「踊り」と「祈り」、「立ち振舞」。
舞うように、祈るように、リボンはたなびく。

そんなイメージで撮影した作品の完全版はこちらです。
https://flic.kr/s/aHBqjAhx2q


「4:Usami」

ここまで「リボン」にまつわる3つの作品を準備してきて、
正直に言うと、4つ目を作るかどうかを決めかねていました。
3つでも今回の企画は成立しそうだったからです。

ですが、ここである言葉が頭の中で浮かびまして。

「謎のない謎解き」

最近は「知る人ぞ知る」な感じにはなっておりますが、
16年に及ぶ撮影人生の中で、私は「ポートレート撮影」の他、
「リアル脱出ゲーム」などの謎解きイベントの撮影も沢山してまいりました。

2010年代前半、一番使われたビジュアルでした

その数々の撮影で経験した「臨場感」を、今回の企画に当てはめることは
出来ないか?
そう思った時に、「夜」「街の中」「アイテム」と繋がり、
「謎のない謎解き」というキーワードで、4本目に挑むことにしました。

夜の街に隠された秘密を紐解く、答えのない周遊謎。
このコンセプトをオファーする一はすぐに思い浮かびました。
謎解きのキャストとして有名な、「宇佐美うさみ」さんです。

うさみさんとももう数年来ポートレート撮影でお世話になっていて、
撮る度に新しい発見があったり、撮り飽きることがまったくない、
素敵な被写体さんです。
最近は謎解きイベントのキャストでも引っ張りだこで、
かなりお忙しい中、なんとか都合がついてギリギリのタイミングで
撮影をすることが出来ました。

4作品の中でコンセプトは一番固まっていたのですが、
実はそのコンセプトゆえ、一番撮影が大変でした。

今回のリボンに見立てたモチーフは、
「「被写体(=謎解きのプレイヤー)」と「世界」をつなげるもの」。

それ故、今回はイメージが固まりやすく、
「これで合ってるかな?伝わるのかな?」と試行錯誤しながら
街を巡って撮りました。
強すぎるコンセプトは、逆に迷いにも繋がります。
その迷いにうさみさんも巻き込んでしまいましたが、
一生懸命汲み取ろうと頑張ってくれて、とても感謝しています。
ある意味、このコンセプトはうさみさんにお願いしたからこそ、
なんとか形に出来たと思っています。

この作品のコンセプソングは、2曲。
DAOKOさんの「もしも僕らがGAMEの主役で」と、「Okey!」

ただ、もうちょっと攻められたかな、
もう少し、色んな事ができそうだなと。
今回の4作品の中で唯一、もう一度撮りたいなと考えております。
勿論、その時はまたうさみさんにお願いするつもりです。

試行錯誤した結果の作品たちは、こちらからご覧くださいませ。

https://flic.kr/s/aHBqjAhxWT

「100/300/800/850」

すべての作品の撮影が完了したのが、開催1ヶ月ちょっと前。
ここからもう一気呵成で準備です。
この1ヶ月は仕事以外の思考は常に寫眞展のことを考える日々でした。

「Ribbon−ed」の方は、今回プリントとメイン寫眞の額装を
山ノ手写真」さんにお願いしました。
「Himitsu Girls’!!」の方は、今回の展示のためにプリンタを新調し、
200枚以上のレタッチ→調整してプリントを、ひたすら繰り返し。

今回は山ノ手写真さんに頼んだものを除いて、
ほぼ一人ですべての準備を進めていかなければならず、
特に我が妻さんの協力無しには進められませんでした。

実際の空間はこんな感じ

妻さんに今回一番お願いしたこと。
それは「Himitsu Girls’!!」の展示を作ってもらうことでした。

「Ribbon-ed」は全て自分で展示まで行い、
今までの経験を総動員したものにすると決めてたので、
「Himitsu Girls''!」の方は「プリントをそのまま、できるだけ沢山貼る」
っていうのをやろうと思いました。
そういうセンスは妻さんのほうが優れていたので、
写真のセレクトと貼付けを全任せしました。

その結果が、先程も載せましたが、こちらです。

この配置の絶妙さ!

「この子かわいー!」「この写真絶対ここがいい!」と
悩み叫びながら、こんなに素敵に貼ってもらいました。
そして、来ていただいた皆様にも大変好評でした。
これはほんとに、妻さんに頼んで良かったなぁ…。

「Ribbon-ed」は私が展示しました。

ギリギリまで色んなものにこだわり、準備し、
流す曲の選曲や、ポスターの制作など、
やれることは全部やるつもりで作り上げました。

開場前に掲示した、今回のポスター

レンタルしたプロジェクターが注文したものと違ったりと、
色んなトラブルが有りながらも、なんとか無事、会期を終えることが出来ました。

「Ribbon-ed」に参加してくれたモデルの皆様も来ていただき、
実際のプリントと展示を嬉しそうに眺めていただけました。

もう一つ、自分がこだわったこと。
それは「できるだけ居心地の良い空間にすること」でした。

高尚で難解に観せた写真を前にウンチクを語り続けるような、
そんな敷居の高い写真展ではなく、
かわいいな、面白いな、楽しいな、そんな
「晩秋の高円寺散歩にちょっと立ち寄れる、居心地の良い空間」
になればいいなと、それを目指して作り続けました。

そのこだわりの一つが、「ご来場者へのささやかなお土産」。
寫眞展ではよく「レセプションパーティ」を開催します。
お酒やおつまみを振る舞いながら、寫眞を前に色々語り楽しむ、
私はその「パーティ」が本当に好きでした。

ですがこのご時世、そんなパーティはまだできません。
なのでそれに変わるおもてなしとして、ご来場頂いた皆様に
ささやかなお土産をご用意いたしました。
同じ高円寺にあるかわいいカフェ「base de carin」さんの
クッキーを差し上げておりました。

夏に出来たばかりの小さなカフェ。
とあることでその存在を知って、足繁く通いまして、
クッキーの注文をお願いして皆様にお配りしたところ、
こちらも大好評でした。


11月24日〜28日の間、昔からの友人、久しぶりに出会えた人、
家族や会社の人など、沢山の方に来ていただきました。

最終日には私の母方の伯母が来ていただき、
こんな素敵なブログを書いてくれました。

改めまして、お越しいただきました皆様。
ご協力いただきました皆様、
本当にありがとうございました!

入り口近くに掲示した、今回の総合キャプションです

ちなみに今回のタイトル「100/300/800/850」ですが、
こちらは
「これまでに私がメインで使ってきた一眼レフカメラの数字部分」
を表しておりました(笑)
(最初に手にしたのがペンタックスのK-100、そのあとNikonに移り、
D300、D800と移行し、現在はD850がメインです)

あっという間の5日、それから1ヶ月が経って。

5日間の会期は駆け抜けるように過ぎていき、
そしてそれから1ヶ月経ちました。

寫眞展が終わった直後に12月に入ったため、
終わった余韻に浸る余裕がないまま、年末の流れに流され、
やっと振り返りです。

この寫眞展、夕方〜夜がとても素敵でした(自画自賛)

反省点はめちゃくちゃあります。
何より、自分が想定していたご来場者数には足りなかったこと。
これは告知宣伝が足りてなかったからだと、最大の反省をしております。
12年前とは告知方法が全然変わってしまい、SNS全盛の時代になり、
はがきDMもなかなか置けるところが少なくなりました。

色々詰め込みすぎて、1つ1つの「力」が少し弱くなってしまったかな?
というのも反省の一つです。
久々の寫眞展だったので、あれもこれも観てほしいという気持ちが強すぎたかなと。

何より、12年も間開けてしまったこと。
これが最大の反省点でした。
こんなに素敵なこと、こんなに楽しいことを、もっと短い間隔で開催して、
色んな人に観てもらう機会を作るべきだと、改めて感じました。

流石にこの規模の「一人で作り上げる個展」は次に開催するまでに
時間がかかります。
ですが、例えば「Ribbon-ed」だけ、「Himitsu Girls''!」だけなら、
もっと短いスパンで展示ができるはず。

「行きたかったけど、タイミングが合わず行けなかった…」
「次はいつ頃開催するの?」
「次にはこの展示の中に入らせて下さい!」
などなど、沢山ご感想や嬉しいお言葉いただきました。

なので、次は2年以内に、別のもっと気軽な形で皆様に、
「Webではない、プリントされた寫眞」をまた観てもらえるよう、
制作することをここに誓います。

2022年はとにかく寫眞展に明け暮れた1年でした。
あと数日で、2023年。
次の寫眞展に向けて、1から作品作りです。
既に「Ribbon-ed」も「Himitsu Girls''!」も、アイデアは色々出来ました。
それ以外に面白そうなネタも仕込んであります。

寫眞を撮り始めて17年目。
飽きることなく、古びることなく、
まだまだ悩みながらも、衝動に赴くままにシャッターを切っていきます。
「撮影の時間、楽しかった!」って言われ続けられるように。
私が撮った寫眞のまえで、いろんな感想や話題に花が咲くように。

長々と書かせていただきました。
おそらくここまで読んでくれる方はそうはいないと思いますが(;´∀`)、
今回はありがとうございました!
また近いうちに、どこかのギャラリーでお会いしましょう!

2022年12月25日
あと1時間で今年もクリスマスが終わる時に
岩田 マサヤ

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