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【コラム】なぜ子供にプログラミングが必要なのか

今回は なぜプログラミングが必要なのか をエンジニアであり、子ども向けプログラミング教室を運営しており、一児の父親でもある僕が、自分なりの見解をお伝えしたいと思います。

プログラミング教育必修化ってどこから出てきた?

2020年から小学校でプログラミングが始まりました。なぜなのか?
学習指導要領に盛り込まれたから。いやいや、なんで盛り込まれたの?
まずはここから説明したいと思います。

プログラミング教育必修化の発端は、現在進行中(2016~2020年)の第5期科学技術基本計画 Society5.0 が深く関係しています。

ソサイエティ5?聞いたことない!って人もいらっしゃると思いますが、端的に言うと 日本の産業構造を重厚長大な工業社会から情報産業へとシフトさせる国家プロジェクト のことです。

(画像 : Society5.0 / 内閣府)

実はここ4~5年で国内のさまざまな産業でSociety5.0の実証実験・導入が進行していて、

たとえば、各自動車メーカーやケータイキャリアがよくCMしている自動運転や5Gもそうですし、

(画像 : 第5世代移動通信システムに関する公開ヒアリング / 総務省)

意外なところで言うと、働き方改革や副業OK、企業のテレワーク推進等も、社会のDX(デジタルトランスフォーメーション)という枠組みで実はSociety5.0が絡んでいます。

そして話を戻すと プログラミング教育必修化 も「ITリテラシーの標準装備」を実現する出口戦略の1つとして位置づけられています。

(画像: ⽬指すべき将来像:Society5.0 / 経済産業省)

では、なぜITリテラシーの標準装備が必要なのでしょうか?

世界時価総額ランキングに答えが載っている

経済メディアを見ていると、たまに評論家が「世界時価総額ランキングで見ると平成元年の頃は日本企業イケイケだったのに今は見る影もない」って話をすることがあります。
2020年6月現在、日本の時価総額トップのトヨタですら世界ランクは42位なわけですから確かに見る影もありません。

そして僕はこの現状こそが答えだと思っています。

内閣府は日本の経済力が伸び悩んでいることに危機感を抱いていて、Society5.0の前身である日本再興戦略2016にはこう記しています。

技術の予見が難しい中、もはや「自前主義」に限界があることは明白である。第4次産業革命が進行する中で、産業構造や就業構造は変革していかざるを得ない。

企業と個人との関係も変わらざるを得ない。技術や産業の変革に合わせて、人材育成や労働市場、働き方を積極的に変革していかなければ、雇用機会は失われ、雇用所得は減少し、中間層が崩壊して二極化が極端に進んでしまう。

第4次産業革命の波は、若者に「社会を変え、世界で活躍する」チャンスを与えるものである。日本の若者が第4次産業革命時代を生き抜き、主導できるよう、プログラミング教育を必修化するとともに、IT を活用して理解度に応じた個別化学習を導入する。

(引用 : 日本再興戦略 2016 / 内閣府)

ここまでくるともう話は読めてきますが、ITリテラシーの標準装備が必要な理由は 日本が世界経済でトップに返り咲くため若い世代に必要な能力 だからです。

プログラミングは一石二鳥の学びの手段

しかしなんでプログラミングなの?という疑問もあると思います。ITリテラシーから飛躍してるやん!と。
僕は次に挙げる 2つの力を効率的に身に付けることができる のがプログラミングの利点だと考えています。

能力① 時間を生む力 ~ITリテラシーは現代の時短技術~
移動で例えると分かりやすいのですが、僕らは遠方へ移動する時は乗り物を使います。なぜかというと徒歩よりも乗り物に乗った方が時間を節約できるからです。
これは日々の仕事や生活でも同じことが言えて、計算処理や自動化など人力でやるよりテクノロジーを駆使した方が生産効率が上がるものは多く存在します。
この世に不老不死の人はいないし1日48時間使える人もいません。時間は皆に平等に与えられていて増やすことはできませんが、生産効率を上げることで時間を生み出すことはできます。
つまり、ITリテラシーとは言うなれば時間を生む力とも言えます。

能力② 問いを生む力 ~プログラミングは脳の作りを変える~
プログラミングには白か黒かの正解主義というものが通用しません。正確に言うとアルゴリズムには通用しますが、UI/UXにまで話をスケールした場合、むしろ求められるのは流行・センス・価値観のグラデーションです。
プログラミングで鍛えられる力の多くは答えを早く出す力ではなく、プロダクトのグラデーションを彩るための「問いを生む力」と「トライ&エラーする力」です。要はこれらを得る過程で、脳の作りが正解主義からデバッグ主義へと切り替わっていきます。

プログラミング=これからの時代に必要な能力を内包している

そしてこれが僕が個人的にプログラミングが必要と思える最たる理由なのですが、これからは何が正解かわからない時代に突入していく からです。

世代交代や業種の新陳代謝が進むのはもちろんですが、僕はそれ以上に心を満たす基準が「所有」から「体験価値」に変わったことが、昭和から令和にかけての本当に大きな変化だと捉えています。

たとえば今僕らが時間を使い、心を満たしているものはなんでしょう?
車、時計、ファッション、ブランド品など所有欲で満たされることも当然あると思います。
ですが、今はさらに上のレイヤーでSNSで発信する、コミュニティで共有するなどの承認欲求もセットで扱う人のが多いのではないでしょうか。
あるいは暇つぶしや疲れを癒すためにゲームや動画、Web漫画、インスタ、Tiktokを見る人も多いでしょう。

僕らはこの10年でテクノロジーを通し体験価値によって心を満たす事が本当に増えました。
大ヒット商品を作れば稼げた所有の時代と違い、個々を満たす体験価値というものは人によって刺さるものはまったく変わってきます。

誰もがドハマりする正解を見つけることはもはや不可能に近く、それよりも新たな体験価値を生み出すアイデアと、それを実現する行動力の早さこそが今後社会で求められていくに違いありません。

そしてそんなデジタルクリエイティブに必要な発想力と実現力を同時に学べるのがプログラミングである、と僕は考えています。

(カバー画像:Fullvector - jp.freepik.com によって作成された business ベクトル)

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