Weki Meki(위키미키)「New Rules」


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 韓国の8人組グループであるウィキ・ミキが最新ミニ・アルバム「New Rules」をリリースした。今年6月発表の3rdミニ・アルバム「Hide And Seek」以来の作品で、タイムスパンの短さに筆者も小さくない驚きを感じた。

 オープニングはリード曲にも選ばれた“Cool”だ。自分のことは自分で決める、あなたもそうしてみない?と私たちに歌いかける歌詞は、誰にも媚びない主体的人間像を描く。彼女たちが歌うことで、いまだ苛烈な男女格差に悩む女性を奮いたたせる側面が生まれているのも見逃せない。
 とはいえ、歌詞をよくよく聴いてみると、メッセージは女性に限られていないのがわかる。女性も含めた、生きづらさを抱えるさまざまな人たちを繋げるポップ・ソングだ。

 そうした歌詞を支えるサウンドもおもしろい。けたたましいホイッスルに、アグレッシヴなシンセ・サウンドが鳴りひびくイントロを聴いて脳裏に浮かぶのは、2・アンリミテッドやドクター・アルバンといった1990年代前半ごろのユーロ・ダンスである。EDM的なビルドアップ→ドロップという曲構成や、チアリーディング風の掛け声を入れることでただの焼きなおしにはしていないものの、往年のダンス・ミュージック・ファンからすれば懐かしさを抱く瞬間も多いだろう。
 今年のポップ・ミュージック・シーンでは多くのアーティストがディスコを鳴らしたが、そのような潮流など眼中にないとばかりに、“Cool”はユーロ・ダンスのエッセンスを打ちだす。「New Rules」というアルバム・タイトルにふさわしい、まさに媚びない姿が際立つ。

 姿といえば、本作はウィキ・ミキの新たな姿を楽しめる作品でもある。2017年にデビューした彼女たちは、当時全員10代だったことから、ティーン(Teen)とガールクラッシュのクラッシュ(Crush)を合わせた“ティーンクラッシュ”なるコンセプトを掲げていた。ウィキ・ミキにしか生みだせない溌剌とした魅力で、ファンを惹きつけるという意味あいが込められたそうだ。
 しかし、本音を言えば、そのコンセプトは筆者の琴線には触れなかった。10代=溌剌さという旧態依然とした価値観が透けて見えたからだ。高いパフォーマンス力に興味を抱きつつ、“メンバーが20代を迎えたら、コンセプトが枷になるのでは?”と感じていた。

 そんな筆者の懸念を本作は吹きとばしてくれる。“Cool”に続く“Sweet Dreams” “D-Day” “우리라는 이유(Just Us)”の3曲で、しっとりとした艶やかな歌声とコーラス・ワークを聴かせてくれるのだから。“Cool”以外をこうした曲で飾るのは、勢いで強引に突っ走るところもあった、かつてのウィキ・ミキ像を更新しようという意図があるのかもしれない。

 本作を聴けば、そのための道筋を築けているのがわかる。もちろん、それを可能にしたのは、上質な彼女たちの表現力だ。リナとルーシー以外のメンバーは20代を迎え、それに伴いグループとしても成長した部分が多いのだろう。「New Rules」は、ウィキ・ミキに新たな物語と解放をもたらす。




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