Beige『AMEN! Vol. 1』


Beige『AMEN! Vol. 1』のジャケット


 アメリカのデトロイトを拠点に活動するベージュは、さまざまなクラブやパーティーでスキルを磨きながら、着実に知名度を高めてきたDJだ。The Lot RadioのプログラムChaotic Neutralで定期的に披露されるミックスなどを聴いてもわかるように、DJスキルの質はかなり高い。

 アグレッシヴなビートでリスナーのハートを滾らせながら、多くの情動を発露するベージュのプレイは、私たちを深淵な音楽の旅にいざなってくれる。得意ジャンルはテクノやハウスだが、ディスコ、ファンク、ソウルといった要素も巧みに織りまぜる様はベージュの豊富な引きだしを匂わせる。

 こうした魅力は最新ミックス『AMEN! Vol. 1』でも輝いている。テクノやハウスはもちろん、ブレイクスやソウルの香りも漂う本作を聴くと、ベージュの脳内を遊泳しているような感覚に包まれる。
 選曲も注目すべき点が多い。とりわけ目を引くのは、アメリカのアーティストが多くピックアップされていることだ。リル・ルイス“Black Out”(1989)など、デトロイト・テクノやシカゴ・ハウスと共振するトラックをいくつも引用した内容に、USダンス・ミュージック史への愛情を感じるのは筆者だけだろうか。この愛情というライトを用いてベージュは、忘れられがちなアンダーグラウンドの功績や影響力に光を当てている。

 本作は、The AM「Black Majik」と同じく、歴史を蔑ろにする者たちへの抵抗が滲む作品だ。有名なトラックとあまり知られていないトラックを繋ぎあわせたのも、過小評価や忘却という不平を少しでも解消するためではないか。そう思わせてくれる『AMEN! Vol. 1』は、筆者にとって良質なレベル・ミュージックである。



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