多元的なリズムとサウンドに心を撃ち抜かれる 〜 Astrea『Sleeping With Her』〜



 先日、ジョーズ『Object Dom』のレヴュー(※1)で、いまイタリアのエレクトロニック・ミュージックが面白いと書いたばかりだが、そんなイタリアからまたひとつ良盤が生まれた。アストレアのデビュー・アルバム『Sleeping With Her』だ。


 アストレアはこれまでに、Riot RecordingsやThe Dubといったイタリアのレーベルをはじめ、ベラルーシのBullfinch、ルーマニアのYaww、ドイツのConnaisseurなどからシングルをリリースしてきた。ディープ・ハウスを基調にしたサウンド・メイキングも秀逸で、リスナーの心をじわじわ昂ぶらせるグルーヴはとても心地よい。


 そんなアストレアの魅力は『Sleeping With Her』でも健在だが、本作ではこれまで以上にメロディアスな側面を強調することで、幅広い層に受けいれられる内容となった。その象徴といえるのは、オープニングを飾る「Sleeping With Her」と、フィリッポ・ナルディーニをヴォーカルに迎えた「Little Trust」だろう。特に「Sleeping With Her」の陶酔的サイケデリアは、繊細かつ艶やかな荘厳さを醸していて素晴らしい。アルバムの幕開けとしては最高の曲だ。


 また、さまざまな音楽性が見られるのも見逃せない。基本はディープ・ハウスだが、粗々しい質感のUKガラージ・ビートが印象的な「Little Trust」はブリアルに通じるし、地を這うようなベース・ラインが映える「Piagge」は、ダブステップ以降のベース・ミュージックを取りいれている。こうした色彩豊かな部分は、アルバムという形だからこそ発揮できたと言えるだろう。


 最近のイタリアといえば、ロレンツォ・セニやジョーズといった、先鋭的なエレクトロニック・ミュージックのイメージが強いと思う。しかし本作は、それらよりもキャッチーで間口が広く、普段あまりエレクトロニック・ミュージックを聴かない人たちもコミットしやすいサウンドだ。こうした作品も出てくるところに、イタリアのエレクトロニック・ミュージックの多彩さと、層の厚さを感じる。



※1 : ジョーズ『Object Dom』のレヴューはこちらです。https://note.mu/masayakondo/n/n1e0d7385a86d

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近藤 真弥

音楽レヴュー

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