今回はトリップホップをテーマに、Spotifyのプレイリストを作りました。トリップホップ系のコンピによく収録されている曲を中心に選曲しております。作ろうと思ったきっかけは、ファッション誌の編集を務める友人との会話です。なぜかトリップホップの話になり、あれやこれやと語りあうなかで、友人が次のようなことを言いました。

 「ここ数年トリップホップが再興してるみたいなことをよく言われるけど、これって2000年代の音楽を聴いてきた私からするとおかしく思えちゃう」

　これは僕も同意できる意見です。たとえば、ブリアルを筆頭としたダブステップが2000年代半ばに隆盛したとき、トリップホップというキーワードを引用する記事が少なくなかった。ブリアルのセカンド・アルバム『Untrue』を〈second-gen trip-hop〉と形容した、Tiny Mix Tapesのレヴューはその代表例と言えます。こうした流れをふまえたのか、日本にも2009年の時点で「トリップ・ホップ・リヴァイヴァルも囁かれている昨今」と書かれた記事があったり。もっと直接的な例を出すと、2011年にはマッシヴ・アタックとブリアルがコラボ作品「Four Walls / Paradise Circus」をリリースしています。ご存知の通り、マッシヴ・アタックはトリップホップの代表格です。さらにダブステップから離れても、フォレスト・スウォーズにトリップホップを見いだす2013年の記事が。

　ここまで挙げてきた例からも、トリップホップは再興したというより、トリップホップを想起させるアーティストの登場に伴う形で定期的に振りかえる機会がたびたびあり、現在に至ったのがわかると思います。なので、鼻息を荒くして「トリップホップ再興に注目！」みたいなことを言う識者は、あまり信用できないのが正直なところ。2000年代以降の流れをろくに知らないということですからね。