Novelist「Reload King」



 サウス・ロンドン出身のラッパー、ノヴェリストが2018年にリリースしたファースト・アルバム『Novelist Guy』は、彼にとって特異な作品だったのかもしれない。デビュー当初の無鉄砲な姿は影を潜め、ひとつひとつの言葉を噛みしめるようにラップしていた。もともと定評のあったストーリーテリング能力が際立ち、音よりも言葉が耳に残る内容だった。
 しかし彼は、マムダンスとコラボしたりと、ダンス・ミュージック・シーンとも近いアーティストである。フロア仕様の享楽的な曲も残しており、頭だけでなく体にも訴求力のあるサウンドを作れる。特に、けたたましい8ビットシンセが鳴り響く“Long John Riddim”などは、いまでもフロアで絶大な威力を発揮するだろう。

 そんなノヴェリストが先日リリースしたニューEP「Reload King」は、享楽志向のトラック群を収録した作品だ。無駄な音を入れないプロダクションは『Novelist Guy』以降のものだが、ヘヴィーなキックやベースが前面に出た全5曲は私たちの腰を否応なく揺らす。ホームリスニングよりも、多くの人たちでごった返す薄暗いダンスフロアが似合う。

 なかでも素晴らしいのは“Banger Riddim”だ。疾走感あふれる彼のラップに、妖しげなシンセ・フレーズと強烈な低音が交わるフロア・キラー。腰から始まり、次は全身を揺り動かし、最終的には汗だくになるまで狂乱させてくれる。
 “Grime Riddim”も耳に残る。銃声や爆発といったヒット音が四方八方から飛びだし、他の曲と比べて飛び道具が多い。強いて言えば、『Novelist Guy』収録の“Stop Killing The Mandem”に通じる曲展開だ。

 言葉よりも音のおもしろさを重視する「Reload King」は、原点回帰的な側面もうかがえる。デビュー当時からノヴェリストを追っていた筆者からすれば、それは喜べることだ。一方で、どっちかに寄るのではなく、言葉も音も高いレベルで共立させた作品をそろそろ聴きたいという本音もある。低音の快楽に溺れつつも、「ポテンシャルからすればもっとやれるだろ?」と思わずにはいられない。


※ : MVはないみたいなので、Spotifyのリンクを貼っておきます。


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