確かなスキルと反骨心 〜 SKY-HI『OLIVE』〜



 先日、グランドプリンスホテル新高輪で仕事する機会があった。そこで筆者は、「日本のヒップホップでとりあえず聴いておいたほうがいい人といえば誰?」と訊かれ、「KOHHとSKY-HIですかね」と答えた。すると、こんな言葉が返ってきた。


「KOHHはいいけど、SKY-HIはね...アイドルでしょ?」


 信じられないことだが、いまだにカテゴリーやジャンルだけでアーティストの本質を把握できると思う者がいるらしい。
 確かに、SKY-HIの出自は少々変わっている。もともとは7人組グループAAAのメンバーであり、そこでは日高光啓として、キレのいいパフォーマンスで多くのファンを魅了する男だ。しかもレーベルはエイベックス。文字通りメジャーな存在である。


 そんなSKY-HIに対し、ラッパーとしてはあまり良く思わない者もいるのだろう。しかし筆者はSKY-HIの音楽が好きだ。もちろん最新アルバム『OLIVE』も手に入れ、愛聴している。正直、ストレートすぎる言葉選びが安っぽいと感じるところもあるが、ラップのスキルは確かだし、カッコいい曲もたくさんある。


 特にお気に入りなのは、8曲目の「Walking on Water」だ。本作中もっとも攻撃的なこの曲でSKY-HIは、〈想像を超えるものを人は怖がる様だ UFOやUMA...まあ俺もその類だろうな〉〈常識だなんて概念じゃ縛れやしない 俺をジャンル分けする事がそもそも間違い〉とラップしてみせる。これはおそらく、自身を色眼鏡で見る者に対する応答だろう。こうした挑戦的な姿勢からは、SKY-HIの譲れないプライドを感じる。とても骨のあるアーティストだと思ったのは筆者だけじゃないはずだ。
 しかし、自己言及的なニュアンスを込めつつ、全体で見ると多くの人がコミットできる歌詞になってるのも「Walking on Water」の面白さだ。SKY-HIに詳しいリスナーが聴けばニヤリとしてしまう要素を入れつつ、あまりよく知らないリスナーにも届く言葉を紡いでいくセンス。このあたりは、SKY-HIの秀逸な言葉選びが光っている。他の者たちが本作を聴いてどう感じるかは知らない。だが少なくとも、センスの面で貶めるような真似は愚行だと言える。

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