Majja「Concrete Roses」



 ロンドンのシンガーソングライター、マッジャを初めて聴いたのは1年ほど前だろうか。サウンドクラウドを散策していたら、「Tony's basement」なるセットリストが目に入った。シガレッツ・アフター・セックスのカヴァーも含めた全3曲で構成されているそれは、アコースティック・ギターの音色に合わせて彼女が歌うものだ。少々ハスキー気味で、親密感を漂わせる歌声に、筆者の心は奪われた。
 その後も定期的に彼女のサウンドクラウドはチェックしていた。更新頻度はそれなりに高く、オリジナル曲も増えていった。なかでも耳を引いたのは“Pull Up”だ。スクリューされたヴォイス・サンプルとスロウなビートの組みあわせが鳴らすのは、ドラッギーな酩酊感を醸すR&B。それまでの方向性とは明らかに違うサウンドで、引きだしの多さをうかがわせるものだった。

 そんな彼女がデビューEP「Concrete Roses」をリリースした。本作の基調にあるのは、やはりR&B。ドラッギーな酩酊感も随所で見られるなど、これまでのサウンドを深化させた作品だ。耽美的な音像は心地よく、トリップホップに通じるメランコリーを匂わせることが多い。逆回転やディレイといったエフェクトも上手く使ったりと、バラエティー豊かなアレンジだ。
 彼女のヴォーカルはより多彩になり、表現者としての進歩が感じられる。ビートに沿って歌うこともあれば、周りのサウンドにとらわれない奔放な歌いまわしも披露。それはさながら、長唄である。上手さでリスナーを引きこむタイプではないが、ラップと歌を混交させたようなスタイルから生まれる歌声は、ジョルジオ・アルマーニの高級シャツみたいな滑らかさを備えている。

 お気に入りの曲を挙げるとすれば、“Black James Dean”だろうか。プロダクションがとても強烈なのだ。キックは異様なほどヘヴィーで、ひとつひとつの音はざらついている。そうしたローファイ・サウンドが想起させるのは、デルロイ・エドワーズといったロウ・テクノだ。


※ : 現時点ではMVがないみたいなので、Spotifyを貼っておきます。


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