ITZY (있지)「GUESS WHO」


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 筆者からすると、韓国の5人組グループITZY(イッジ)のサウンドは、ハウス成分が多いように聞こえる。具体的に曲を挙げると、『Settle』(2013)期のディスクロージャーを想起させるデビュー曲“Dalla Dalla”(2019)、スティールパンに似た音色のシンセ・フレーズと4つ打ちを刻むヘヴィーなキックが際立つ“TING TING TING”(2020)などだ。これらの曲はポップ・ソングとして上質な親しみやすさを持ちながら、クラブのサウンドシステムでも機能するハウス・ミュージックとしても楽しめる。

 だが、この特徴はサード・ミニ・アルバム「Not Shy」(2020)で少し変化した。たとえば“Don't Give A What”はもろにハウスなビートを鳴らしつつ、ギターの音色でロックの要素を醸している。さらに“SURF”は、シンコペーションを多用したベース・ラインが印象的なディスコ・ソングだ。これらの曲群を聴けば、「Not Shy」はITZYの音楽性を拡張した意欲作だとわかるだろう。

 そんな「Not Shy」に続く最新ミニ・アルバムが「GUESS WHO」だ。本作は、前作で見せた音楽性の拡張をより押しすすめている。ハウスの要素はだいぶ減退し、代わりにヒップホップやR&Bの香りが目立つ。曲調もテンポをグッと抑えたものがほとんどで、勢いで押しきるアッパーな曲が多かったこれまでとは違う表情を見せている。
 収録曲の質は悪くない。フラメンコのノリに近い拍が耳に残る“Wild Wild West”を筆頭に、さまざまなアレンジが飛びだす。とはいえ、ビルドアップ→ドロップというEDM的曲展開に頼りすぎなのは、過去作と比べてワンパターンに聞こえる。音色で多彩さを演出しても、その音色を纏うグルーヴは画一的だ。流行りや定番の音を上手く押さえてはいるが、言ってしまえばそれ以上でもそれ以下でもない。

 「GUESS WHO」は、ITZY史上もっとも保守的な作品と言える。悪くない曲を手際良く揃える一方で、ソフィーが参加した“24HRS”(2020)のような、キャッチーでありながら先鋭さも輝く未来的ポップ・サウンドは最後まで身を潜めたままだ。
 そのディフェンシヴな方向性は、セルフラヴと主体性あふれる女性像をアピールするITZYとのぎこちないギャップになってしまっている。



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