見出し画像

人を幸せにする介護職員の「知恵」

介護職員は知恵の宝庫

この度お伺いした介護施設でのお話。

ある施設長の奥様には片麻痺がありました。
ある日、その奥様は「タンメンを食べたい」と言い出されました。
けれども、麻痺があるのは利き手である右手。その為、もう上手く箸を使えない。
タンメン食べたい!タンメン食べたい!でも麺がつかめない。
施設長は、知恵があったので、『今あるもの』で、左手でもお箸を使えるようにしたのです。
それが、このお箸です。

画像1

『割り箸を割り→向きを変え→根元にゴムを10回巻き付け→そこに割り箸の入れ物を4回折ったものを挟み込む』
こんな風にすると、割り箸がピンセットのようになり、利き手でない左手でも握るだけで全く問題なくタンメンを食べる事が出来たのです。
奥様はタンメンを食べながら泣いて喜んだそう。

私もやってみましたが、面白いくらいに小さなものもつかめ、楽しくなり紙の面談資料を箸でつまみ、後で反省しました。
紙でもつかめたのでびっくりしましたけど。
けれどもこの方法、介護職員さんは知っている人が多いのかもしれませんが、私達の様な介護経験のないものは思いつきもしません。
きっと、家族に同じことがあったら、タンメンは「食べるのを諦めてもらう」か「小さく切って、スプーンで食べる」のどちらかだろう。
介護職員さんは、こういう知恵の宝庫であると私は思っています。

「麻痺」は突然脳梗塞が起こってなる事も多い事象。
元気でいても、脳梗塞が起こって一週間後には右半身動けなくなるなんて事、全然あり得ます。
そんな時、「介護の知恵」を持っている人は、強い。
ご本人がやりたい事を諦める事がきっと少ない。
なぜなら、知恵があればご本人の「楽しく生きていたい。」を支えてあげる事が出来るからです。

けれども、一般の人には介護業界は身近でない為、その知恵を享受する機会は少ないと感じています。
介護は誰しもが関わる可能性の高い事です。
その知恵はぜひ教えて欲しい。いつか親が介護が必要になった時に、きっと役に立つから。

先日のある新聞で、「介護保険制度で、主要自治体の首長の約9割が、今後10年、現行のまま制度を維持するのは難しいと認識している」という内容の記事がありました。

今後どうなるかは私には分かりませんが、お金がない分、介護保険の対象となる方が限られてくるかもしれません。
そうなると、私たちには今以上に「親の介護」に関わる事が考えられます。
私は、介護について『自分が無知である』という事を知っています。
親が介護が必要になった時に、今の介護士さんの様に私は親の世話が出来る自信はありません。
だから、今のうちに介護士さんの知恵を教えてもらい、いざ親が支えが必要になった時に、自分で支えてあげたいと思っています。

スケッターの運営をしながらも、スケッターとして施設に行く事があります。
「運営の人自らスケッターをしに行っているの?エライね」と言われる事が少なくありませんが、実は全然エラくない。
もちろん、サービスについて自分が経験し、現場の方々の意見やご利用者さんのご意見、反応を知る事も目的にはしていますが、半分は自分の為に行っています。

「介護の知恵」の面白さを伝える「スケッターのスケッター」

この度、「スケッターのスケッター」が生まれました。介護福祉士として10年の経験のある方です。

スケッターで活動するのは未経験者の方が多くいらっしゃいます。
この介護士さんには、「初めて介護業界に関わる人達には、楽しんで帰って欲しい」という想いがありました。
「楽しむ」と言っても、何も遊ぶ事ではなく「より深く知る事」で面白さを知っていただくという事です。

「介護業界を知りたいといってスケッターをやってみても、単にお手伝いしてもらっただけでは介護業界に興味を持つ可能性は低いかもしれない。だったら僕が初めて介護業界に関わるスケッターさんにつき、介護の単純な業務ひとつひとつに意味がある事を教えます!」というのです。

例えば、「車いすの掃除」のお仕事に対して、ただ一日中「車椅子の掃除」をひたすら一人でやっていると空しくなるかもしれない。
一緒に現場に入って、「車いすのハンドリム部分は感染のリスクが高い。それは利用者さんが一番触る部分でもあり、床との距離も近い。その手で様々な場所に触る事は衛生的にも良くない。その為に掃除をしているんだ」と伝えるだけで仕事の意味を知ることになり、介護という仕事に理解をしてもらいやすくなるかもしれない。

ただお散歩の付き添いをするのではなく、ご利用者様が歩く事の意味、さらに利用者さんに自ら動いてもらう事の意味、それぞれ理由があってやっている事。
深く知ればもっと知りたくなって面白くなってくる。

ちゃんと「介護」を知ってもらって、楽しさを知ってもらいたい。
そういう想いをたくさん語ってくれました。

すぐ近くにある存在なのに、遠く感じてしまう介護の世界

今までは、介護業界に関わった事のない人には、介護の仕事の楽しさを知るきっかけがありませんでした。
正確には、きっかけはたくさんありましたが、関わっていく勇気がなかったという自分の問題です。
「どうぞいつでも来てください」と言われても、なかなか介護施設の門をたたいて入っていく勇気はありません。
すぐ近くにあるのに、遠く離れた世界のような、また私たちが触れてはいけない聖域のようなイメージがありました。きっと、私だけではなく、同じように思う人も多いのではないでしょうか。
しかし、「お手伝い」というきっかけに楽しさを上乗せし、「知恵」を知る心の機会を広げてくれるのがスケッターのスケッターさんです。

私は、たくさんの若い人達と仕事をしていますが、応援したくなる人達がいっぱいいます。
「介護業界をもっと良くしたい」と自ら誰もやった事のないことにチャレンジしてみる人達。若い人達にはそういうエネルギーが溢れています。
このスケッターのスケッター介護士さんもそういう人。応援したい人の一人です。

一緒に色んな事にチャレンジしてみて、私も若いつもりになる事にしよう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?