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データをいじりだす前に、分析の設計をして問題を構造化しよう

「分析してたら、迷路に迷い込んでしまった…結局何を分析すればいいんだ?」
「せっかく細かく分析した結果がほとんど使われなかった…」
みたいなことってありませんか?
少し極端かもしれませんが、私の経験上、分析における失敗パターンでよくあるのが下記です。

【1】分析しないといけないことが見つかった or 依頼が来た時に、すぐにデータをいじりだしてしまう。しかし、すぐに答えが見つからず、迷宮にはまり、結局何をすればいいかわからなくなる…
【2】細かく分析をして様々なデータを調べ、アウトプットしたのにほとんどが使われず、大した意思決定につながらない。かける時間にたいして結果が見合わない分析になってしまった…

このような失敗を防ぐためにも、事前に問題を構造化し、分析の設計をしておくことが非常に重要です。言い方を変えると、ベースとしてのロジカルシンキングスキルが非常に重要ということです。
この記事では、分析の事前設計の重要性とやり方について記載します。
また、この記事の対象は分析の専門家ではなく、普段の業務でたまに分析を行うけど専門的な知識がない方や、上記のような失敗例によく当てはまるけど解決策がわからない方です。

分析の事前設計のイメージ

まず前提として、分析は”目的ありき”のもので、その結果によってその後の意思決定やアクションを行うために使うものです。
何のために何をどれくらい分析し、それがどんなアクションや意思決定につながるのか?を事前にある程度想定しておくのが、分析の事前設計のイメージです。
・課題は何か?
・課題の要因は何か?
・要因はどんなデータ(事実)によって評価(判断)するのか?
・評価(判断)によってどんな意思決定やアクションが生まれうるのか?そのROIは?

なぜ事前に分析の設計をしておくことが重要なのか?

上記のように、事前に分析~施策立案までの設計を行っておくことで得られるメリットは下記です。

・何を検討すべきかハッキリする
事前に何をどこまで分析すべきか想定が出来ているので、分析の途中で迷子になるのを防ぐことが出来ます。「ついついデータを見ていて時間が経過する」みたいな無駄な時間を減らすことが出来ます。

・考慮漏れを防げる
分析の結果をまとめている時に
「あれも検討しておくべきだった…」
と、後から別の問題に気付き、分析をやり直したことはありませんか。
このような考慮漏れも、事前の設計により防ぐことが出来ます。

・どこまで精緻な分析が必要なのかわかるので、無駄な作業が減る
事前に設計が出来ていれば、意思決定やアクションにつなげるために
「特定の指標を比較して、どちらが多いかだけわかればいい」
もしくは
「1桁パーセント単位の違いが重要」
など、どこまで細かくデータを確認すべきかがわかります。
これにより、無駄に細かいところまで調べすぎてしまうことや、逆にもっと細かく調べる必要があるのにやっていないなど、目的に沿わないデータ分析を防ぐことが出来ます。

分析の事前設計の基本的な流れ

私は業務で、分析→企画立案→実行まで一気通貫して行うことが多く、
企画立案につながる分析の事前設計について、基本的な思考の流れをまとめたいと思います。
企画立案を行う場合、事業やサービスにとっての”課題感”を明確な課題、要因に落とし、要因に対する打ち手をROIを考慮しながらアクションに落とす必要があります。分析はその過程で発生します。

【1】課題を選ぶ(見つける)
事業やサービスにおいて発生しているどの課題に取り組むのかを決めます。
元々複数の課題が明確な場合は”選ぶ”、重要な指標の変化などから”見つかる”場合もあります。

例)サービスAの売上が毎月少しずつ下がっている…各指標を調べてみると、新規会員数が毎月じわじわ減っている。新規会員獲得に課題がありそうなので、リカバリー策を考えたい。

【2】問いを立てる
次に、課題がありそうな領域に対して、問いを立てます。
問いを立てることで分析すべきことがシャープになり、検討すべき問題の範囲を特定することが出来ます。逆に、問いの立て方次第でその後の道筋が全て変わりますので重要なポイントです。
例えば、「新規会員獲得が減っている」にしても、問いのバリエーションはたくさんあります。

例)
(1)前月と比べて新規獲得会員数が減っているのはなぜか
(2)前年同月と比べて新規獲得会員数が減っているのはなぜか
(3)6ヵ月前から毎月、新規獲得会員が減っているのはなぜか
(4)競合サービスBに比べて新規獲得会員が減っているのはなぜか

何と比較するのか、どう比較するのかによって検討すべきことが大きく変わります。どんな問いを解くべきか?はケースバイケースでしっかり考えなければいけません。

【3】ロジックツリーやイシューツリー、テーマツリーを使い、”問い”を要因に分解する
次に、設定した問いを要因に分解します。私はロジックツリーやイシューツリー、テーマツリーなど、”ツリー”を使って分解していくのに慣れているのでよく使いますが、構造化できればどんな分け方でも問題ありません。
”問い”を構造化し、”要因”に分解する理由は、”問い”のままだと粗すぎてMECE(モレなくダブりなく)に課題が把握できず、考慮漏れが発生したり、打ち手の優先度を間違えたりするからです。
逆に、”問い”を構造化して把握できれば、最終的なアクションに落とすところまでスムーズに行えます。
『構造化 = その課題はどんな要因、どんなボリュームで構成されているかわかること』
なので、正確な課題認識のために重要なプロセスですし、思考の精度を高めてくれます。

【4】要因の事実(データ)がどうだったら、どんなアクションや意思決定が生まれるのか検討し、優先度を決める
”問い”を構造化し、”要因”に分解したら、それぞれの要因がどんな状態であればどんな打ち手が考えられるのか、想定します。
この理由は、要因ごとのコントロールしやすさを事前に把握し、優先度をつけるためです。例えば自社でコントロールできない or コントロールするのに多大なコストがかかりそうな要因(政治的な要因やその国のカルチャー要因など)に対していくら分析をしても、ROIの見合う打ち手が出なければ、分析をすること自体がただのコストになるからです。
よって、この時点で精度は低くていいので、「要因ごとの状態に合わせた打ち手の方向性」を出しておくと、余計なコストを費やすことを防ぐことが出来ます。
これにより、要因ごとにどこまで精緻な分析が必要かわかります。
「1ptの差によってアクション(意思決定)が変わる」
「比較対象より多いか少ないかだけわかればいい」
「そもそもデータの有無に関わらず、アクション(意思決定)が変わらない(= 分析の必要なし)」

などを把握することで、余計な作業をせず、最短で打ち手につなげることが出来ます。

ここまでが分析の事前設計となります。
あとは、下記のような流れになります。
※分析の事前設計の話から逸れるので簡単に

【5】要因の事実(データ)を確認し、要因を評価する
想定した基準に基づき、各要因のデータを見て評価していきます。

【6】打ち手、アクションを決め、その精度を高めていく
そして、各評価に基づき、アクションや意思決定の方向性を確定させ、精度を高めていくフェーズに入ります。

また、補足ですが、
1,課題の重要度や大きさ、関係者の人数に合わせて、適宜、共有や説明、インプットをもらう作業が追加になります。
2, 実際にデータを抽出し、評価していく際、データの前処理も必要になります(今回は割愛)。

実務では状況に合わせて順番を前後・混合する

上記が大まかな流れになりますが、実務ではキレイにこの順番通りにはいかないことが多いです。
分析の途中でやむを得ず課題の抽出や特定のフェーズに戻ったり、問いを立て直すこともあります。
また、途中で別の課題を見つけ、プラスアルファでアウトプットにつなげることもあります(実はこれが重要だったり…)。
データを確認することが簡単だったり、要因がそこまで多くない場合は、問いを立てた時点でデータ(事実)の確認を先にやった方が早い場合もあります。
データ抽出のコストが大きかったり、課題が複雑な場合は、その構造化とアクション(意思決定)の想定を入念にやっておくことがコスト最小化につながります。

このように、課題の複雑性やデータ抽出コスト、分析コストによって順番を前後・混合させることで、アウトプットまでのコストを最小化させることが重要と考えます。

分析はありとあらゆる業務に付随する

あらゆる業務に"分析"はつきまといます。"分析"というと機械学習や統計学を駆使した高度なものがイメージされやすいですが、「事実(データ)をもとに意思決定やアクションにつなげるもの」と考えると、多くの方が日々の業務で自然と行っています。
だからこそ、業務の中で発生する課題を事前に構造化し、分析の設計を行うことで、日々の業務の質を上げることが出来るはずです。
ぜひ、何かを考えだす前に「分析の設計」を意識してみて下さい。

最後までお読み頂きありがとうございました。少しでもこのnoteが読んだ方のお役に立てると嬉しいです。

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