見出し画像

ボローニャ旅行記3日目~触って食べて考えた1日

1 はじめに

ボンジョルノ! ボローニャ旅行もついに3日目。折り返し地点となった。


今日は折り返し地点にふさわしく、盛りだくさんの内容となった。今までの2日間も非常に盛りだくさんだったが、さらにその度合いが良い意味で増していった感じだ。是非一緒に行った気持ちになっていただけると幸いである。


2 Anteros Museum


昨日の朝と同じぐらいの時間に同じような朝食を食べて最初の目的地へと出発する準備をした。真しろは少しずつ他の参加者とも話すようになり、この日は、朝ホテルの側を大きなカラスが飛んでいたので、自分はカラスが苦手だという話から、動物の話で盛り上がった。ちなみにこの日のお天気はあまりよくなく、晴れ間も見られたが、雨のぱらつく時間帯が多かった。


3 Anteros Museum


最初の目的地へは徒歩で移動。やってきたのは、Anteros Museumという博物館だ。ここは、地元の盲人協会のようなところが協力して、世界中の名画が触れるようになっている。ということで、午前中はひたすら絵をさわる時間となった。


作品は粘土でできていて、絵の形が粘土で再現されているという構造だった。そのため最初はその作り方を説明してもらってから、それぞれ気になる絵や、学芸員さんおすすめの絵を触った。学芸員さんは地元出身で英語が苦手とのことだったので、ガイドさんが通訳して下さった。


そして真しろは早速、学芸員さんの1人に目を付けられてしまう。なぜなら、日本の作品も展示されていたからだ。展示されていたのは、葛飾北斎の、三浦半島の波を描いた浮世絵だ。学芸員さんは、自分が絵を触っている間、イタリア語と片言の英語と日本語をも交えながら説明してくださるだけでなく、絵の感想なども聞いてきてくださった。また、同じく西洋の海の波を描いた絵も触らせて下さり、日本と西洋の波がどのように違うのかなどを一緒に考えた。日本画をこのような形で鑑賞した経験は実は少なく、正直さわった絵をイメージに落とし込むのには時間もかかったが、触りながら波や周りの景色を思い浮かべることができたし、視覚芸術である絵をこのように触覚へ翻訳できることに感動した。何より、日本の美術館でこのような体験をしたことがないので、触れる絵の可能性を持ち帰ることができそうだ。学芸員さんは、日本の美術館の方とも面識があるらしく、「どうもありがとう」と何度もお礼を言ってくださった。久しぶりにたくさん触って芸術鑑賞したので、いい具合に疲れてお腹も減ったものだった。


三浦半島の波と西洋の波の違い

われる葛飾北斎の浮世絵。これを海外で見ることになろうとは!

4 昼食と午後の街探検


昼食は美術館のそばにあるレストランで取った。今日もいい具合にお腹が空いてしまったのでたくさんいただいた。特にこのお店では、地元で有名なワインや料理が美味しいとのことだったので、真しろは、イタリア風のカツレツを食べ、この地域で有名なワイン葡萄品種であるサンジョベーゼを飲んだ。サムネールの画像はそのワインだ。


昼食後、次の活動まで少し時間が合ったので、街探検へ出かけた。この時間帯は晴れ間も見られた。


今回訪れたのは、世界史的にも有名なボローニャ大学だ。この大学はヨーロッパの中でも最古の大学のひとつとされ、中世の街の発展を支えた。残念ながら土曜日の午後で中が混み合っていて、予約しないと回れないということで、大学の入り口のような所を歩いただけになったが、ヨーロッパの知の結集した場所としてずっと存在してきたことを感じさせる。


ボローニャ大学の入口

5 Cooking Time!


さて、この日の夕方から夜に書けてのイベントは、料理体験だ。ガイドさんのご両親のお家で、パスタを作ることになっていた。お家には、ガイドさんのご両親とご両親のお友達でシェフをされている方がいらっしゃった。ちなみにガイドさんのお父様も視覚に障害があるようだ。


真しろたち参加者は、トルテッローニというパスタをみんなで作った。作り方は……?


・    小麦粉と卵でできた生地を麺棒で薄い4角形にする。

・    卵、チーズ、野菜などでできたパスタソースを用意する。

・    4角形のパスタ生地にソースを乗せて、まず3角形におり、さらにその3角形のうちの2つの角をくっつけて丸みを帯びた形に成形する。

・    できたものを加熱して完成。


今回、真しろたちが行ったのは、パスタを麺棒で薄い4角形にする作業と、パスタソースを包む作業の2つで、特にこの包む作業をたくさん行った。パスタソースはすでに用意されていた(市販の物ではなく手作りのようだ)。なんだか餃子に似ているなと思って親近感がわいた。


作る際は、ガイドさんたちが手を添えてサポートしてくださることもあったが、基本的には、作る前にいただいたレプリカを参考に、説明を聞きながら自分たちで作っていった。さわれるレプリカをくださるのはイメージがしやすいので大変ありがたかった。失敗したり形が崩れてしまったりした時はアドバイスもいただきながら、たくさんのトルテッローニができあがっていく。


料理が一段落して、できた物を加熱している間、ガイドさんのお父様が、弦楽器のコレクションを見せてくださった。バイオリンやギターも含め、世界各地の弦楽器があって、お父様はどれも弾くことができるとのことだった。いくつか演奏も聞くことができ、力強い音色に圧倒された。ちなみに日本のお琴もご存じのようだった。


6 盛りだくさんのディナー


自分たちが作ったトルテッローニも含め、ディナーができあがった。3日目の夜は、ツアーの参加者、そしてガイドさんのご家族とテーブルを囲んで、イタリアの家庭的な夕食をいただいた。夕食はトルテッローニだけでなく、ミートボールのような物もいただき、さらにプレゼントでケーキのような焼き菓子もいただいてしまった。


だが、このディナーは、食べ物だけが盛りだくさんだったのではない。個人的に興味深いことが2つあったので簡単に紹介する。


1つは、先ほども書いたように、ガイドさんのお父様が視覚障害を持っているので、イタリアの視覚障害者教育について話してくださったことだ。イタリアでは現在、盲学校のような特別支援学校は作らず、障害のある子供は一般の学校で学ぶようにする動きが起こっているらしい。日本でもインクルーシブ教育については議論されているが、イタリアの場合は、かなりインクルーシブ教育が容認されているらしかった。お父様が学生だったころはまだ盲学校があり、教師はほとんど、視覚障害があったようだ。日本とは障害者や教育に対する考え方がかなり違うので、一晩では足りないほど深掘りすると面白いトピックだ。


2つ目は、ディナーのテーブルがとてもマルチリンガルだったことだ。今回、厳密に言えば、全員が共通で話すことのできる言語は存在しないのである。真しろは日本語母語話者、大半の参加者は英語母語話者、そしてガイドさんのご家族は英語に不慣れなイタリア語母語話者で、あらゆる言語が飛び交っていた。基本的にはガイドさんがイタリア語と英語を使うことができたので、ご家族の発言や質問を通訳して下さったり、参加者たちからご家族への質問も通訳してくださった。余談だが、真しろは本業的に言語学を極める修行の真っ最中なため、分析しがいのある言語データがあちこちに転がっていて、ディナーを口に運びながら、いろいろな思いを巡らせていたものだった。だが、よく考えれば、このような状況はヨーロッパではよくあることらしく、やはりマルチリンガルの人を研究したくば、家庭に入って現象を観察したほうが良いのかもしれないとそんなことまで考えていたらディナーは終わってしまった。


もちろん、真面目なことばかり考えていただけでなく、ちゃんと料理の味も楽しむことができた。自分たちの作ったトルテッローニは、中のソースがちょうどよく生地に絡んでいて、ニョッキに近い味わいだった。ソースを自分たちで作っていないので、違う地域でどれぐらい再現可能か分らないが、自分でも作れなくはない簡単なレシピだったので試してみたい。ディナーのあとは、盛りだくさんの気持ちを整理するかのように、ホテルまでゆっくり夜道を歩いて帰った。


7 おわりに


3日目は、旅行という枠を超えて、触って食べて考えた盛りだくさんの1日だった。また、イタリアの人たちの家庭の温かさも知ることができた。イタリアで過ごす最後の夜は長いようで短く、もうそろそろこの旅も終盤に近づいているかと思うと胸が苦しくなる。もしかしたらこの胸の苦しさは、美味しい物の食べ過ぎかもしれないが(笑)。


それでは今日はこの辺で。Have a nice day!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?