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トム・ウェイツ「ミュール・ヴァリエイションズ」

トム・ウェイツの魅力を知ってしまうと抜け出せない。美しくて、せつなくて、胸が熱くなる曲たち。なのに、こちらの期待とは裏腹に、何度も裏切られる。それでも追い続けてしまう、この悲しい性、、、。

トム・ウェイツの活動をザッとまとめると、デビュー当初、アサイラムでのシンガーソングライター期、その後アイランドレコードに移ってのチンドンサウンド期(ぼくが名付けました)、そして現在はアンタイレーベルでの充実期、そんな感じでしょうか。

トム・ウェイツの声も、最初はちょっと枯れてるくらいだったのが、最近はすごいことになってます。2006年のライブ盤「ドゥーム・アンド・グリッター」を聴いてみてください。怖いです。小さな子供がいるご家庭は気をつけてください。泣き出すと思います(笑)。

初めて聴く方は、間違ってもアイランド時代のチンドンサウンド期から入ってはいけないと思います。代表的なアルバム「レイン・ドッグス」はこの時期なのですが、後に回しましょう。

ぼくはファースト「クロージング・タイム」、セカンド「土曜日の夜」あたりから入って、トム・ウェイツの美メロに触れてほしいと思います。デビュー前の録音集「アーリー・イヤーズ」もいいですねぇ。

で、「レイン・ドッグス」あたりを聴いたら、ぜひ「ミュール・ヴァリエイションズ」を聴いてみてください。1999年、アンタイ・レコード移籍第一弾です。

多分、トム・ウェイツのファンが求めているのは、美メロでせつない曲だと思うんです。「ダウンタウン・トレイン」、「ジャージー・ガール」、  「タイム」、「オール55」、、、 みたいなね。この素晴らしさを知ってるから、新譜が出るとつい期待してしまう。そして裏切られる。そんな日々を過ごして来ました。

そしたらこの「ミュール・ヴァリエイションズ」ですよ。待ってた甲斐がありました。このアルバムは、この当時の典型的なチンドンサウンド曲(それでもずいぶんおとなしくなった?)と、本来ファンが求めているであろう美メロせつな曲が半々くらい。その美メロ曲がどれもいいんです。いい曲含有率という意味では、トム・ウェイツ史上かなり上位にランクされるはず。これだからトム・ウェイツはやめられない、というアルバムです。

最近は新譜もなかなか出なくなりました。過去の作品、提供曲なんかをまとめた3枚組「オーファンズ」、ライヴ盤「ドゥーム・アンド・グリッター」を経て、最新作は2011年の「バッド・アズ・ミー」。内容は相変わらずですが、なかなかの力作ですよね。

悲しいのは映像作品が「ビッグ・タイム」というちょっとヘンテコなライブ映像だけというところ。普通のライブ作品とかを出してほしいですねぇ。

それからこの人、俳優としてもいろいろ映画に出ています。「コーヒー・アンド・シガレット」とか、くだらなくて面白いです。大好きです。

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