詩の実験室1

「端 末」

反転された文字列から入口を探す
隠された仮想領域のことばを狩りに
ほの白い闇に明滅する極小級数の記号は
ところどころ渦を巻いてわたしを惑わせる
黒色星雲の配置にならい なぞるカーソル
の上に立ち現れる闇

変換されるものと されないものの間で
蠢いている見えざる手の記憶
投影された形をさぐる端末の上に
おぼろげに凝固していく死人の輪郭
蒼白の顔面に針を突きたて
開閉動作を不規則に繰り返しながら
真夜中の回路をしずしずと進んでいく

見えないことと混乱はつがいのように機能し
憂いが空間に結ばれて
人々の影がむなしく交差する
異なる心と性の社交場で芽生える愛
ときに紡がれては距離を一瞬で跨ぎ越し
抒情はたおやかに語り継がれる

増設された魂のメモリに
窓の外 しめやかに雨は降り注ぎ
深々と更けていく夜のしじまに
端末は唸りを上げて
幻を活写する


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