詩の実験室1

「満ち潮」

心が壊れた夜には
甘い砂糖菓子をたべて
満ちてくる潮におぼれる
飽和した呵責を中和するために

街の背骨の上に
赤い月が浮かんで
海面を引っ張ると
臓器の底の湿った井戸に
昏い水が満ちる

産道を通って
脚のあいだに広がる海に
いとけない言葉たちが放たれて
波間にただよう
無音のままで

潮の濃度と釣り合うだけの
甘さに浸って
喉の奥へと叫びを押し戻す
この残酷な世界に
留まり続けるために

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