白身魚

ひとの話をきくことが営み。自分が考え続けていることを言葉にする練習も兼ねて、この世界の…

白身魚

ひとの話をきくことが営み。自分が考え続けていることを言葉にする練習も兼ねて、この世界の端で綴ります。

最近の記事

そうなるわけがある

普段通り過ごしていても、調子がよくなかったり、気持ちが晴れなかったり、鬱々としたりする。場合によっては専門家のところで診てもらったりすることもある。 原因がはっきりわかったなら、それへの対処を考えることができるが、心の不調・不具合は直接目に見えない。 さらに、同時多発的、混合、混在していて、捉えどころがない。よくわからない。 なのに人は、表に出ているもの、一面だけを切り取って、余計な一言を言ってしまう。 余計な一言には、押しつけ、決めつけもあるが、助言やアドバイスの類もあ

    • かわらないことへの執着

      臨床家なら誰しも、自身の臨床観や独自のスタイルを意識的か無意識的か抱いているだろう。先達の知識からも刺激を受けるが、その数多くの理論のなかでどのオリエンテーションを選ぶかについても、実際のところは臨床家自身の体験が選ばせているのではないだろうか。 臨床場面の着目点は、おそらく理論やルール以前に自身のこれまでの人生経験が影響しているように考える。 僕は面接に入る前に、まず面接室で「いつもとかわらない」ことを確認する。 机や椅子の場所、ティッシュやカレンダーの位置がかわっていな

      • 「変わらない」をいったん引き受ける

        小学生の頃から「おじいちゃんっぽい」と言われていた。特に主張をするほうでもなかったから、のんびりしていると思われていたのだろう。若さがないのか、生気がないのか。 ある時のクラス文集では「10年後も変わってなさそうな人」1位だったことを思い出した。変化とは程遠い人と思われたのだろうか。 確かに自分は変化にはめっぽう弱い。自分の周辺で変わったことがあると落ち着かず、びびってしまう。 だから流行りや新しいもの好き、旅行好きには憧れていた。そんな臆病な自分を変えたいと何度も思ってき

        • 「聴く」の再検討

          「カウンセリングとは何か?」ときかれると、一旦「うっ」となる。相手にわかるように説明する自信が正直ない…。 今のところの答えとしては「悩みを抱え、それをどうにかしたいと思っている人がその悩みを話し、その話を聴いた人がどうしたらいいのかを一緒に考えていくこと」と説明するのが精一杯。でも、実際のカウンセリングでは本当にそうなっているのだろうかと聴き手の自分に問い直したい。 相手の悩みを聴くためには、カウンセラーが悩みの詳細や現状を知るためにいろんな質問をしていくことになる。つま

        そうなるわけがある

          「受け入れる」の道中

          自分のいる分野では、「自分をありのままに受け入れること」「自分の人生を引き受けること」「自分のありのままの感情に開かれている」「真の自分自身になっていく」などの表現を見聞きすることが多い。では、自分をありのまま受け入れるには何が必要なのか。 理論的にも実体験としても、まずはありのままを受け入れてくれる(受け入れようとしてくれている)誰かが必要だと考える。それは一個人でも集団でもどちらでもあると思う。その誰かから「あなたはそれでいい」「そのままでいい」と否定されずに受け入れて

          「受け入れる」の道中

          悩むためには

          「カウンセリングを“受ける”」という言い方がある。その言い方を僕はクライエントの前では言わないようにしている。こう言い続けていると、クライエントがこの時間を受け身で過ごすようになってしまうのではないかと思うからだ。 初回面接で「カウンセリングを受けてみますか」とは言わず、「始めてみますか」「やってみますか」「続けてみますか」「試してみますか」などと言い換えている。おそらく、クライエントは初回面接も自ら希望して来ている人はあまりいない。希望している部分があったとしても、大部分

          悩むためには

          はじめに

          小さい頃は、漫画家、詩人、作家など、かく(描く・書く)人になりたかった。 しかし、自分の中には強く訴えたいことはなく、周りの反応をうかがい、その反応次第で表現することをやめたりもした。 表現することをやめると、周りの反応を気にしていちいち悩むことが減って楽になった分、自分がどういう人間なのかわからなくなっていった気がする。 そのまま大人になり、今では随分と内向的な人間になってしまった。 ここでは、日々の営みとなっている人の話をきく経験から自分が大事に思っていることや気づい

          はじめに