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日記:女神を見たあの日

曽野綾子著『孤独の特権』より:

「今、日本に最も欠けているのは、どう考えても物質的なことではありません。それは大国と言われるに相応しい、精神の整備です。」

曽野綾子さんの語録集を読んでいて忘れられない会話を思い返しました。お互い新人職員として窓口にいた時の会話で、相手の女性の返答に心打たれた事があったのです。

私が「日本語を教えているなんて凄いね」と何気なく返した一言に彼女は『南米から日本に移住したばかりの幼い頃、先に日本で育ったお姉さんお兄さん方に日本語を教わったので私も今、子供達に教えているんです』と話しました。

ご紹介した文章だけだと伝わりませんが、この時の彼女は「しょださん…このことは一々説明する必要がないくらい人として自然なことではないのですか?」という様な、平坦な物言いでした。恩返しや感謝の気持ち、損得勘定や自己満足と言った感情も一切見受けられなかったのです。

当時の私は一瞬で恋に落ちるが如く彼女の横顔を、女神を見る様な眼差しで見つめました。

自分だったら、人にしてもらった事を今度はして上げる側になり、それを為す自分を「俺って立派な人間だぜ」と内心誇ってしまうと思いますが、彼女には全くそんな自尊心等の感情は見られませんでした。

人生で初めて無垢や純真を目の当たりしたと、内心衝撃を受けていたのです。

曽野綾子さんは“海外”でこの様な経験を幾度かされているのでしょう。

ちなみにその女性はスレンダーで美人なタイプではなく、人によってはぽっちゃりぎみの体型や容姿、顔つきや色白ではない肌にコンプレックスを抱く人もいるかもしれないといった感じの方ですが、私の中では人生で出会った最も美しい女性として殿堂入りしております。

二十年以上前の話ですが、元気でいらっしゃることでしょう。

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