見出し画像

NPM(シティセールスとシティプロモーション)

Ijumpポータルサイト(https://portal.jamp.jiji.com/portal/)に、【地域のよさを伝える2】シティプロモーションの歴史を俯瞰(ふかん)するとして関東学院大学法学部の牧瀬稔先生がコラムを書いていらっしゃる。 
それによると、シティプロモーションの歴史(経緯)を顧みると、法人住民税が多く減少し、人口減元年と称された2008年が一つの起点となって、2012年、そして2013年頃には急激にシティプロモーションやシティセールに関する新聞記事が増加していると言う。
その後も税収が継続的に減少していくから…“営業”により地域の税収等の収益を高めよう!という考えがシティプロモーションに結実したと捉えているとのことだ。
この“営業”(セールスとプロモーション)という言葉達は、まさに行政活動を民間のそれ(営業活動)に擬制して見せようとするものだろう。
このような民間の“運営の形”が行政の理念として取り込まれたのが、1980年代半ば以降のニュー・パブリック・マネジメント(NPM)の動きで、英国・ニュージーランドなどのアングロサクソン系諸国(英米法系諸国)を中心に形成された革新的な行政運営理論であり、まさに民間企業の経営理念や手法を行政現場に導入することにより、その効率化を図ろうとするものである。
イギリスでは、既に1970年代に市場原理主義(国家が市場に介入しないこと)を主張する論調が起こっており、1980年代はまさにサッチャー政権による新自由主義が台頭した時期だ。
そして、日本においても、「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」(平成13年6月26日閣議決定)では、「2001年以降、行政の新たな手法として、ニュー・パブリック・マネージメントが世界的に大きな流れ」となっており、NPMの「基本的な方向性に沿って、具体的な改革を引き続き精力的に進めていく必要がある」とされている。
このNPMはしばし行政改革の考え方・プロセスとしてもてはやされるのだけれど、やはり民間と行政の運営というものは大分異なるもので、民間の方法を行政の方法に当てはめようとする時、例えば事務事業評価や事務の効率化、PPPの導入事務にあたった時、細部においてはくびをかしげたり、苦労をしてしまうことも随分あった。
今は亡き関東学院大学経済学部の大住荘志郎先生は、職場研修の場で、NPMは本来マネジメント・システムを業績・成果主義に転換することをねらいとするならよいが、NPMによる経営改革にはまだ誤解も多いとおっしゃっていた。
おそらくは、シティプロモーションとかシティセールスもNPMの色を帯びた取り組みの一形相なのだと思うが、シティプロモーションとかシティセールスを行政活動に適用する場面では大変な苦労をした。なんといってもその言葉の意味の捉え方から十人十色となってしまう。
それは広報なのか、宣伝なのか、プロパガンダなのか、市民の意識に配慮した協働の街づくりなのか、競争原理を基本に置いた地場産業の振興・誘致なのか。はたまた個々の行政事業に関する取り組みなのか、イベントなのかブランディングなのか、ガバメント全体の総合的な振興計画の推進なのか。なにせ元々が和製英語風でもあり、その意味するところをしっかりと万人の納得を得られるような定義づけさえ無い状況で、本当に様々な人が様々なことを自分の思い込みに基づいて言う。
今まで、このシティプロモーションとかシティセールスを担当して、その意味するところに苦労してきた者としては、もう皆さんこれらの言葉を使うことはやめましょう。皆さんが本当にやりたいことがあるならば、これらの言葉に踊らされることなく、もう少しその語るところの意味合いが明確になるような他の言葉に置き換えて施策を考えてみてはどうでしょうかと言いたい。
政治はこのような横文字を使いたがる。
だが、行政はしっかりとその状況を見つめながら、意味合いの正しい取り組みにその言葉を置き換えつつ、着実な歩みを進めることが肝要だ。
シティプロモーションとかシティセールスという言葉を使う場面というのは、混乱して最悪の状況であり、皆さんの知見が将来に渡って成果を伴って継続していかないのではないかという危惧を抱いている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?