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雨に降られてみたならば

 基本的に、雨っていうのは家の中だったり駅のホームだったり屋根のある所にいながら、涼しさを感じ、雨音を聞きながら物思いにふけるのがいい楽しみ方だと思う。もちろん、幼い頃は水たまりに入ったり、傘をくるくる回したり楽しみ方は豊富だったけど、今同じことをしたらただの不審者!というか、そんなはしゃげる体力が…。まあ、そんなこんなでぬれずに雰囲気だけ味わうのがいい。
 でも、無邪気に雨を喜べなくなってからも一度だけ雨に全力で感謝したことがあるんです。大学時代、好きだった女子と運よく二人でデパートの屋上のビアガーデンに行くことがあって、まあ2時間ぐらい経って話のネタもつきかけたころに(けっこう口下手なんですよ、はい…)、程よい感じで霧雨が降ってきたんです!超高層ビル群の夜警の見える都会のデパートの屋上で、二人を霧雨が包み込む!なんかこういうドラマのシーンありそうじゃないですか!?ちょっとした沈黙もいい雰囲気、口下手がばれずに最後まで楽しく過ごせた!この時ばかりは雨に全力で感謝!ありがとう!
 ここまで書きましたが、やはり雨っていうのは基本的にぬれるしじめじめするし、夏はうっとうしいものですよね。特に僕の場合は、右手に白杖を持ち、左手に傘を持ったら両手がふさがってしまうんです。ここに手提げ袋とかあった日は、もう最悪。てなわけで、小雨でちょっとした距離を歩くぐらいなら、面倒くさいから傘を差さずにいることもあるんです。そんな僕を気にかけてくださる方が時々いるんです。
 家まで50メートルぐらいのところで、後ろから自転車で追い抜いて行った人がいたんです。でも、その女性は少し先で止まって、傘もささずにとぼとぼ歩いてた僕に声をかけてくれました。
 「傘を貸しますよ。」
 「いえいえ、家まですぐなので大丈夫です。」
 「でも、安い傘だから気にしないでください。」
 「お気持ちだけいただきます。ありがとうございます。」
 全力で恐縮してしまいました。だって、カバンの中には面倒くさくて刺さなかった折り畳み傘が入っていたのだから。
 大学に通っていた時には、こんなこともありました。最寄駅からキャンパスまでは徒歩で20分ほどかかったんですけど、その日は小雨だったのでまたもや傘を差さなかったんです。駅前の交差点を渡ったところで、年配の女性に声をかけられました。
 「傘に入っていきなさい。」
 「いえ、大丈夫です。ありがとうございます。」
 「いいから、次の角まで入れてってあげるから。」
 その女性は、30メートルほどだけ僕を傘に入れてくれて、次の門で曲がってしまいました。傘に入れてもらってる間、何を話していいかわからず気まずかったけど、小さな親切には感謝!
 日常とはちょっとだけ違う雰囲気を演出してくれる雨。風情を感じられるぐらい心に余裕を持たせてくれる雨、今年は各地に穏やかな恵みの雨が降ってほしい。