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2024年になってメールについての本を出版する理由

今月、『実務で使える メール技術の教科書』という本を出版します。
なぜ2024年の今、メールについての本を出版するのか、その背景を紹介します。

メールの現状

個人間の連絡手段を考えたとき、メールの存在感は大きく低下しました。
LINEのようなチャットツールで繋がるだけでなく、𝕏やInstagram、FacebookなどのDMでやり取りすることも増えています。
仲の良いメンバーとやり取りするときも、メーリングリストではなくLINEグループやSlack、Discordなどさまざまなツールが使われています。

一方で、企業間のやり取りであれば、まだまだメールが多いように感じます。
はじめて会ったときは名刺交換し、名刺にはメールアドレスが書かれています。
そして担当者同士でやり取りするときもメールが一般的です。
新商品の発表などのニュースを届けるために、メールマガジンを配信している企業もあるでしょう。

それ以外にも、Web上のサービスへの会員登録もあります。SNSのアカウントを使ったソーシャルログインも増えていますが、メールアドレスを使って会員登録する機能を残しているサービスがほとんどです。

このように、一部では他の手段に移りつつあるものの、メールはまだまだ使われている印象です。そして、Gmailをはじめとして無料で使えるサービスが普及しており、個人で使う分にはそれほど設定なども不要で、誰でも使えることが特徴です。

メールの技術の学び方

次に、ITエンジニアの立場で考えます。ITエンジニアにもさまざまな職種がありますが、たとえば情報システム部門であれば、自社のドメインでのメール送受信ができるように設定する必要があります。また、プログラマであれば、自社で開発したサービスから自動的にメールを送信する仕組みを構築する必要があるかもしれません。

こういったときに、メールサーバーの構築やドメインの取得、DNSサーバーの設定などについての知識が求められます。それに加えて、メール技術の変化もあります。
スパムメールを減らすために、OP25BやSMTP AUTH、SPF、DKIM、DMARCなどさまざまな技術が導入されてきました。

SMTPそのものはシンプルなプロトコルですが、それに関連する仕組みが次々と作られているのです。こういった技術を学ぼうとすると、以前は書籍を読むことが基本でした。
2000年代前半には、Sendmailやqmail、Postfixなどのメールサーバーに関する本も毎年のように出版され、その技術を学べたものです。

ところが、最近はメールに関する本が出版されることがほぼありません。書店に行っても、ITエンジニア向けのメールに関する本を探すことが困難になったのです。
結果として、多くのITエンジニアはWeb上で情報を探し、先輩からの助言などを受けながら見よう見まねで設定しているのではないかと推測されます。

世の中の変化

Webではさまざまな情報が発信されており、無料で多くの情報を得られるようになりました。しかし、体系的にまとまった情報は少なく、必要なところだけをつまみ食いしながら設定しているように感じます。

たとえば、今月(2024年2月)から改訂されたGmailの「メール送信者のガイドライン」のように、新しい対応が必要になると、それに備えて必要な対策だけを実施する形です。
必要な情報だけを調べ、その対策を実施するだけになってしまうのです。

メールについては歴史のある技術ですが、新しい技術もどんどん追加されています。たとえば、銀行やクレジットカード会社などでは「BIMI」に対応している企業が増えています。
当然、メールソフトの側でも、こういった変更に対応するためにアップデートが行われています。

Webでは自分の興味がある情報しか目に入らないことが多く、こういった変化に気づきにくかったり、情報収集が遅れたりというデメリットがあります。
このためには、やはり書籍や雑誌のようなもので体系的に、しかも定期的に学ぶ姿勢が求められていると感じます。

まとめ

この本の企画が生まれたのは、1年以上前の書店員さんとの会話の中でした。
「最近の学生はどうやってメールについて学ぶんですかね〜」

当たり前のように身近にあり、誰もが使っている技術ですが、その仕組みや歴史的な背景を学ぶ機会も失われつつあると感じます。背景を知らないと、なぜそのような仕組みが導入されたのか理解するのが難しいものもあるのです。

過去にメールの技術について学んだけれど、最近のトレンドを追えていない、という人はもちろん、そもそもメールソフトってどうやってメールサーバーと通信しているんだっけ?という方も、ぜひ手に取ってみてください。


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