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AR#002 無色の混沌ーICCオープンスペース2019 Alternative Views

初台にあるNTTインターコミュニケーションセンターで毎年開催されている「オープンスペース」を見に行ってきました。

「オープンスペース」は、ICCが収蔵しているメディア・アート作品やそれにまつわる多様な表現をとりあげた展覧会で、毎年テーマ毎に作品を選んで展示されています。

今年は「別の見方で」と題し、物事の多様性や考え方の違い(あって当たり前ですよね)をアップデートし、社会についてや未知の感性や美意識について考えるきっかけを提示しています。

鑑賞だけでなく、作品を体験して新しい感覚や価値観を気づかせてくれる作品もあり、毎年何回も通っては新発見をして帰ってきています。

今年度はかなり当たりでどの作品を素晴らしかったのですが、その中でも特に心と体が動かされた作品について紹介して見ようと思います。

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無響室

細井美裕 “Lenna” 
を体験。

音が迫ってきて、かつ内側から溢れ出てくる不思議でエモい感覚。


この作品は、
多数の音声チャンネルを使用し、音像の定位や音の広がりを作り出し、
そして〈声のみ〉を素材にした空間演出音楽作品です。
(わかりづらいかな)


無響室での展示・鑑賞。
無響室は、部屋の全面を音の反射を吸収する素材で囲まれていて、音の反射や反響がない空間。
超絶デッド。そのため音を発する対象との距離感があやふやに感じられる。

だから密閉された瞬間、重力から解き放たれたような感覚を覚える、のと同時に、自分の心音や血管を流れる血の音を感じることもできる。
決して「無」の空間ではなく、太陽光の、それは無色が孕む混沌のような空間。


作品はそんな無響室で、部屋の照明が消えた”真っ暗闇の中”で鑑賞する。
視覚を奪われ、ぽん、と宇宙空間に投げ出されたような感じ。
自分とそれ以外の境目が曖昧になってゆく

そんな中
目の前にあるスピーカーから
声が聴こえた瞬間、世界が一気に収斂され
眼前に(見えてないけど)、〈ある〉空間が形成される。

自分の周りから、いるはずのない自分の内側から声が聴こえ、重なり、空間ができ、光を放つかのように拡散される。

そこにいるという事実、存在こそ崇高で絶対の真実。

思考のスピードをぴゅんと飛び超えて
虚から実へカテゴライズが一瞬で変わる、
見えてないものがみえる(そこにある)という感覚の変化を体感できたのがとても新鮮でした。


まだ知らない新しい感覚、
あるもんですね。




ちなみに一人で体験する展示のため、
2人での入室はNG。
そして、部屋を密閉・真っ暗闇になるので閉所恐怖症の方は入れません。
お気をつけください。


レコーディングや日頃のスタジオの爆音で疲れている耳と脳を活性化させる刺激的な体験でした。


#icc #hosoimiyu #mediaart #soundinstallation

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