『月刊群雛』2015年03月号 感想

 この感想については、ポリシー2015年版をご参照ください。

『月刊群雛』2015年03月号

高瀬拓史『僕の「電子書籍元年」』〈ゲストコラム〉

神楽坂らせん『01-20』〈読み切り小説〉

……面白いけどずるい。タイトルでわかりやすく警告しているのはフェアでよい。

芦火屋与太郎『夢を継ぐ』〈連載小説・前編〉

……誰も彼もキツイ話は、読む側もキツイ。

神光寺かをり『みまちがい』〈既刊小説・再録〉

……うまい。人間が良い。説明的な文をうまく畳み込んでいる。視点を決める時にそこまで計算できているのだろう。最後のところで読者を突き放したのは、私はちょっと残念。

晴海まどか『ギソウクラブ』〈連載小説・第1回、編集〉

……時間をかけて丁寧に書き込んだ作品。流れる時間、空間がしっくり安定していて読む人を安心させる。あとは著者の手のひらでゴロゴロさせていただくのみ。

合川幸希(晴海まどかコラボ)〈連載挿絵・第1回〉

青海玻洞瑠鯉『Pisces』〈読み切り詩集〉

……外に向かって怒鳴る、叫ぶ。そうしないと生きていることがわからないから。根源を知りたいが、答えは聞きたくない。そんな裏腹さが生きているってことだったりして。

盛実果子『わた雪』〈連載小説・前編〉

……しっかり書こうという姿勢。あらすじのようなト書きのような部分をさらに工夫してほしい。

王木亡一朗『サイクロプス』〈読み切り小説〉

……こだわって作品をつくっているようだ。読者はある程度、著者のことを知っていないと楽しめないだろう。

きうり『7・18豪雨』〈読み切り小説〉

……作品としてうまくできている。欲深い読者からは、さらにおもしろくできそうだと感じるかもしれない。

長鳥たま『春香しく』〈描きおろし表紙イラスト〉

■■■■今月の気づき■■■■

「照れ」なのだろうか。それとも「しゃれ」なのだろうか。「わかる人にだけわかればいい」としている作品にぶつかるたびに「惜しいなあ」と思う。せっかくの作品が、もったいない。

 誰もが読みたいと思っている日本人作家の本を読んでほしい。宮部みゆきはどうか。司馬遼太郎はどうか。西加奈子はどうか。基本的には「読んでくれた人にはできるだけわかってほしい」という気持ちにあふれている。

 なぜなら、「わかる人にだけわかればいい」とやると、ほぼ100パーセント、誰にもわからないものになってしまうことをよく知っているからだ。

 はっきり言えば、誰かの気持ちをわかってくれる神様のような人はいないのだ。いたとすれば誤解かウソだ。

 わかったと思っても、六割か七割か。よくて八割。それだけ、他人の思いを理解することは難しい。日常生活でそれを身に染みている人でも、作品になるとうまくいかない。文字だけで、理解を深めようというからには、かなりの工夫が必要になってくる。

 著者に突き放された読者は、なにも悪いことをしていないのに罰せられたような気分になる。わからないながらも、わかろうとしている読者を見放さないで欲しい。

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