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香港旅〜おいしいものを求めて、行列嫌いが行列に並んでしまう街

僕が滞在中の香港は、もうほんとに暑くて暑くてどんどん食欲が減ってしまった。うちの妻のhanaはおいしいものを食べることに命をかけているような人だから、「香港でおいしいものを食べて、どれだけおいしかったか報告しろ!」とよくわからないご指示を頂いていたのだけれど、こう暑くっちゃおいしいそうな麺類を見ても、小籠包見ても、そのたちのぼる湯気を見るだけで「うぅ・・・」となってしまう・・・。

とはいえ、何も食べないわけにはいかない。食事を適当に済ませるのは、せっかく香港旅なのにもったいないし、妻のhanaに何の報告もないとものすごく怒られてしまう。それは怖いし、帰国するのがとても億劫になってしまう。それは嫌だ。特に何が食べたいとかいうのはないので「もう軽くていいや、だけど、香港らしいものを食べよう」と思って、良さそうなお店を街を歩き回ってみる。香港でおいしいお店を見つけるのは、とても簡単だった。人気店は、どこでも長蛇の列が出来ているからだ。人気店とそうでないお店の差は激しく、香港人の舌は厳しいということが露骨までに理解できた。

すんごい行列。隣のお店がかわいそう。。

日本で外食する場合、僕は食事のために"並ぶ"ということはほとんどない。例えば、どうしても食べたいものがあって、ある店を目指して時間をかけて出かけたとする。けれど、目的のお店に行列ができていたとすれば、僕はその目的をいとも簡単に変更することができる。行列が目に入った瞬間に「他の店を探そう」となってしまう。自分でも自分自身に「何を急いでるの?」と思うのだけれど、「並ぶ」「待つ」ということがどうも苦手なのだ。

そんな僕なのだけれど香港では飲食店の行列を見ると、その一番最後に付いて行列の一部と化した。並んで並んで並びまくる。僕の後ろに並ぼうとした人から「何のために並んでるの?」と聞かれても「わからない。おいしそうなもの。」という至極テキトーな返答をしてしまうほどに気持ちの赴くままに飲食店の行列であれば並んでみた。

妻のhanaに行列に並んでいる様子を写真を撮って送ってみると「ならんどる!うちの旦那さんが並んどる!行列に並んどる!あんた誰なん!?!?」と多大なるお褒めのお言葉を頂戴した。謝謝。多謝。

ミシュラン小籠包のお店。

行列ができているお店ばかりを選んだおかげもあって、今回の香港旅はおいしいものばかりを食べることができた。ハズレは皆無だった。エビが練り込まれた雲呑が乗った海老雲呑麺は、ぷりぷりしたエビの食感が最高においしくかった。麺は、結構固い。日本で言うとバリカタというレベルで、最初は生ゆでやん!と面食らったけれど、だんだんとその食感がクセになった。

その雲呑麺のお店は、行列に並んで自分の番になり店内に入るとフロア担当のおじさんたちは「こっちだ!奥に入れ!」と手招きで僕を奥まで呼び寄せた。おじさんたちは無表情な上、かなり大きな声を出しているで正直ビビってしまったけれど、その粗雑な振る舞いとは裏腹に対応は親切で、僕が席に着くなり僕が何も言葉を発する前から「日本語メニュー」を持ってきてくれた。おじさんは一応「Jananese?(日本人だよね?)」と僕の顔を覗きこんで確認した。そうです、と答えるとおじさんは素っ気なくうなずいた。けれど、やはりその素っ気なくはあるけれど、そのあとも麺の混ぜ方とか後加えの調味料とかを細かに教えてくれた。

僕が食べ始めても、フロア担当のおじさんは僕の様子をジッと見ていて、器から顔を上げると否が応でもおじさんと目があった。それを無視するのもきまずいので「おいしい、おいしい」と僕が伝えると、おじさんは嬉しそうに微笑んで「うんうん」と頷いた。黙ってるときは怖そうなおじさんだったけれど、笑ってくれるととても柔和な印象にガラリと変わった。ベトナム旅のときにも書いたけれど、嘘っぽい表面的な作られた笑顔よりも、人間的な無表情の方が安心できるし、そんな中でもコミュケーションを取ることで生まれる感情のこもった笑顔の方が本当の意味で心が繋がるような気がする。おじさんに笑顔を向けてもらえたことで、ほんの少し香港の人と繋がれたような気がした。

ミシュランを取っている小籠包

その雲呑麺を食べた後に知らない土地を訪れている緊張感が薄れてきたせいもかってか、食欲が少しずつ戻ってきて、そのあとは北京ダックやミシュランを取ったという小籠包を食べたりして、人気店の食事を続けることができた。

香港名物の焼きそばみたいなもの
北京ダック、焼豚の合わせ丼

それにしても香港は物価がすごく高い。ポカリスエットが500mlで300円とかするし、毎回の食事も平均して2,000円前後はした。観光客向けに値段設定をしているような、それほど高級店には入っていない。近所で働いているようなサラリーマンの方が並んでいるようなお店を選ぶことが多かったので、一般的なクラスの飲食店だと思う。日本での物価を基準に考えると、香港で暮らしていくのはなかなか大変だろうな、と思う。ファストフードやコンビニの求人のチラシを見てみると、時給は日本とあまり大差なかった。この物価の高さで、この時給でアルバイトで仕事をしている人は相当大変だろうな、と思う。

このミシュランを取ったお店は昼も晩もいつ通りかかっても
すごい行列だった。

僕自身が飲食業なこともあって、他国においても飲食店の様子というのはことこまやかに見てしまうのだけれど、日本よりも経済成長率が高い街の人々の食生活がどんなものなのか?衣食住は生活の基本だから、その食の一部分でも垣間見ることができたことは、学び感じることができるものが多く良い体験になった。

飲食業の元気な街は、総じて元気な街だと言えるように思う。僕自身も飲食業の一人の経営者として、元気な街を作るべく努力をしたいと思うけれど、やはりまずは元気な店を作ることが先決で、元気な街というのはその結果であるのだと思う。その順番を間違えると、歪みがうまれるだろうな、と感じるのだ。たぶん、その歪みが、物価と人件費のアンバランスを招いている。健全な経営が健全な街を作るのだ。

世界中のどんな街だって、試行錯誤の真っ最中。まさに香港は過渡期になる街であるし、僕たちの国だって過渡期にある。世界全体が過渡期なのだ。

過渡期だからこそ、いろんなトライが必要になる。まずは、自分のことを最優先だと思う。まずは自分がしっかり立つことが重要だ。自分が自立できなければ、他人のことさえ立たせることなんてできないからだ。

香港の街で、香港の飲食店で、人々の暮らしの一部に入り込むことで、僕の中の経営者としての一面に新たなスイッチが入った。

せっかく経営者になれたんだから、街を、日本を、そして世界を元気にしたいじゃないの。

そんなことを本気で想う。

(続く)


食べることは生きることの基本だ!


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