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1人目の人事として踏み散らかしてきたアンチパターンを供養したい

この記事では、自分が1人目の人事として踏み散らかしてきたアンチパターンを振り返り、後悔と反省をつらつら書いていきます。一通り書ききってみると「願わくばまったく共感されないでほしい」と思うような内容になってしまいました。

なぜこういった内容を書こうと思ったかというと、最近他社の1人目人事の方と話をする機会が何度かあり、自分が踏んできたアンチパターンを発信することに意義がありそうだな~と感じたからです。

1人目の人事はとてもエキサイティングで意義のあるポジションだと思いますが、タフで孤独な側面もあります。未熟な自分なりに悩み、苦しんできたことを共有することで、ベンチャーやスタートアップに勇気を持って飛び込んだ1人目の人事の方が、自分と同じ轍を踏みにくくなるといいな~と思いキーボードを叩いていきます。

前置き

本題に入る前に自分がどんな立場なのか明らかにしておくと、

  • 新卒入社のオプトでエンジニア組織の1人目人事

  • 前職 SmartHR で1人目人事

  • 現職カンムではひとり人事(not 1人目)の期間が数ヶ月

といった経歴で、ひとりプレイの期間が比較的多いです。

人間特性としては仕事にフルベッドなタイプではなく、趣味などプライベートとかなりバランスしたいタイプです。最近はもっぱら酒とゲームとポケモンカードをしばいてます。

1人目人事の冥利


1人目人事として入社直後から介在できる幅は広く、楽しいことはたくさんあります。パッと思いつくものだと以下のような感じでしょうか。

  • 採用体制のゼロからの構築。採用するぞ!というポーズを取るにふさわしい土台(採用フローの構築、媒体を使う、付き合いのあるエージェントとの取引を始める等)を作れる

  • キーマンの採用。採用担当として組織のコアとなる初期メンバーの採用に第一線で色濃く関与することができる

  • 制度、福利厚生など何もなかったところから、小さい組織サイズに耐えうる仕組みや環境を設計できる

  • 担当のいないボールを引き受け、他部門のメンバーが本業に集中できる環境を提供できる

特に1人目人事に期待される主要な役割は採用である事が多いと思っており、プロセスの1から10まで担当した意中の候補者を採用できたときの喜びは形容しがたいものがあります。

このような非常に大きな手触り感と、自分が働く前後での人事領域の diff の大きさに、とても高揚感を覚えていました。採用によって組織が勢いづくモメンタムも、少なくなかったと思います。

1人目人事が踏んではいけないアンチパターン


本題です。自分が1人目人事として、今振り返ってマジでやらなきゃよかったな〜と思うことがあります。それは1人月しかない人事リソースをミクロな工程に割きすぎたことです。わかりやすさ重視で80点くらいのことを言うと、採用オペレーションやスカウト業務、採用広報記事の執筆などを1から10まで1人でやって人事リソースの大半を割いてしまっていた、みたいな話です。

使える予算次第ですが、最近はオペレーションエクセレントな委託先が多くあり、外に出せるものは予算が許す限り外に出したほうがいいです。「そんなの当たり前だろ!」「ちょっと考えればわかるだろ!」って思う方もいると思います。ぼくもそう思います。

今ならそう思えるのですが、当時は判断も未熟で、そしてその状況を「それはよくないよ」と気づく人もいませんでした。なぜなら当時ぼくが唯一の人事で、その会社における人事に最も明るい存在だったからです。

「ミクロな工程にリソースを割きすぎる」のはなぜダメか

端的に言うともっと解決インパクトの大きな人事イシューにリソースを割くべきだからです。

人事のミッションは採用のみをすることではなく、会社の望む非連続な成長に必要な人的リソースと、それを支える環境を整備し続けることと整理しています。

採用領域に留まらず、事業・組織の成長により組織的な人事イシューは多く発生します。事業成長のキードライバーを見極めて組織図を作らなきゃいけない、描く組織図を実現する採用計画を作らなきゃいけない、人事制度を考えなきゃいけない。手を動かしながら考えるには、なかなかタフなトピックです。

一方で、時間に追われて近視的になりがちな日常業務から手を離し、そういった領域に自身の職務を拡張していかないことには、こういった上位概念の部分が未整備なまま会社が成長していきます。人事が一生懸命手を動かしてミクロな工程に力を注いでいる一方で、よりインパクトの大きなお題に向き合う時間が減り、組織と人事いずれの成長も鈍化してしまいます。

なぜアンチパターンに陥ったのか


当時の自分に関して言えばシンプルに「人事イシューの有効な優先順位付けができてなかった」に尽きるんですが、中でも自身のリソースを生み出すための予算をつかう意思決定ができなかったのは大きい要因だと思います。明らかに予算の自由度が高かった SmartHR の時ですら、その意思決定ができていませんでした。資金を調達してでも非連続な成長を成し遂げようとするスタートアップにふさわしくない振る舞いだったなと思います。

ただ自分以外の人からもこういった話を聞くことが多くあり、当時の自分と同じような「いつも採用オペレーションでパツパツです!」という人事の方も少なからずいるんじゃなかろうかとエスパーしています。

1人目人事はアンチパターンにハマりやすいんじゃないか説

ここで1人目人事のペルソナを考えたいと思います。

スタートアップやベンチャーの1人目人事にまず期待される役割は、明確に採用であることが多いと思っています。これから組織をスケールさせていくぞ、というタイミングでの採用ポジションですから当たり前っちゃ当たり前ですね。

そしてアーリーフェーズではそこまで採用予算が潤沢でない会社も多いと思うので、社会人3~4年目くらいで採用をコアキャリアに持つ、ミドル手前くらいのバランスのいいパーソナリティの方を採用する会社さんが多いんじゃないかなと思います。

もしかしたらこういった方のなかに、採用以外の優先順位付けが難しかったり、自分でそこそこの予算を使う意思決定をしたことがあまりない、またはそもそも予算を使うオプションが発想に出てこないって方も、当時の自分のようにいるんじゃないかなと思っています。

「予算を使う」と一言で言っても、対峙してるイシューに対して適切な選択肢を調査し、網羅的に比較検討をしたのち、コストに対するリターンが妥当であると根拠を持って説明する、という一連の工程を指していて、所属企業によってはあまり積めない経験と言えるかもしれません。特に自分の余剰リソースを生むために大きな予算を使うとなると、「お前が楽したいだけやんけ!」と見られないよう、しっかりした理論武装とエネルギーが必要です。

また初期の人事には総務と人事の間みたいな「名前のついていない業務」が集まりやすく、まとまった時間やエネルギーが不足しがちなのも、よくない形でシナジーが働いていると思います。

こう考えるとケイパビリティ的な側面と、時間的な側面、どちらの起因もあると思います。

アンチパターンを持続的に回避するために

ミクロな業務からなるべく自身を解放し、「優先順位の高い人事イシューにフォーカスできているか?」と定期的に振り返るのはもちろん大切ですが、人事イシューの優先順位付けやフィードバックなど、1人目人事を支援してくれる存在をつくると持続的にアンチパターンを踏みにくくなると思います。

今自分が当時に戻れるなら「それあんまよくないよ〜」と言ってくれる外部の人事をメンターにつけると思います。ハマっているアンチパターンを検知したり、フォーカスすべきことを示してくれる存在は、本来歩くべき道に引き戻してくれます。

今やってることを詳らかに説明し、自分の業務の全体像の解像度を上げてもらった上で定期的にフィードバックをもらう、わかりやすく言うと人事の外注上司みたいな感じでしょうか。エンジニアの領域だと技術顧問ってけっこういると思うんですが、人事の領域はまだそこまでメジャーじゃないですよね。もし当時に戻ったら、自分の人事の恩師に声をかけて、Slackに常駐してもらう+週イチでメンタリングの契約を結ぶと思います。

人員計画次第では2人目の人事を採用できるタイミングが遅かったり、そもそも1人目人事より強いひとではない人の採用になる可能性もあるので、こういうのも選択肢に入れられるとよかったな~と思いました。

終わり

以上自分の黒歴史でした。こうやって振り返ってみると公開するのもマジで恥ずかしい内容なんですが、どこかの1人目人事の方に響く内容があればと思い書いてみました。本当はもっとめちゃくちゃ書きたいことあるんですが全部書いてたらけっこうな文量になりそうなのでこの辺にしておきます。

この件についてちょっと話聞いてくれみたいなことがあれば遠慮なく X の DM までご連絡ください。自分のしくじりをつまみにお酒を飲みましょう。相談役が勤まるかはわかりませんが、一緒に頭を抱えることはできます。

この記事に触れた1人目人事の方の今後に、少しでもいい影響があったら幸いです。人事の方もそうですが、1人目人事を採用した会社の経営陣の方にも、なにか感じていただけることがあったら嬉しいなと思います。ここまで長文を読んでいただき、ありがとうございました。


追伸:実はこのお題目は以前 ROXX さんから登壇の機会をいただいた際に整理した内容でした。改めて言語化することで自分の血肉になったので、準備大変だったけど参加してよかったです。ありがとうございました。

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