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長崎にQueen Elizabethを見に行った

Cunard Lineについて

Cunard Lineは他のクルーズ会社とは一線を画すところがあると思う.その設立は1800年代まで遡り,当時はあのRMS Titanicとライバル関係にあったRMS Mauretaniaや,その後に登場したRMS Queen Mary,RMS Queen Elizabeth(初代),その後継のRMS Queen Elizabeth2などの名船で大西洋航路の旅客輸送を担っていた(ちなみにRMSとはRoyal Mail SteamerまたはRoyal Mail Shipの略で,これを冠することは非常に名誉あることだとされている.).これらの船舶は,当時としては豪華絢爛かつ高速であり,大西洋を最速で横断した船に与えられるブルーリボン賞を度々受賞していた(ところで,現在ブルーリボン賞はカタマランであるCat-Link Ⅴが保持している.).人々の移動手段が船舶から航空機にパラダイムシフトするにつれて,大西洋航路の旅客便の存在意義は薄れていき,次第に姿を消していった.しかし,現在でもRMS Queen Mary2(以下QM2)は大西洋航路のフラグシップとして活躍している.QM2は現存する世界最大級のOcean linerの1つであろう.
一方,現在Cunard LineはOcean linerであるQM2の他に2隻のクルーズ船を運行している.それがMS Queen Victoria(MS:Motor Ship)とMS Queen Elizabeth(3代)(以下QE)だ.ちなみに,2024年には4隻目の客船であるMS Queen Anneの就航を予定している.これらの船はQM2や過去のOcean linerのように大西洋横断に特化した機能は装備されていないものの,その豪華さは健在で,世界中をめぐるクルーズ船としてその役割を担っている.

日本発着クルーズの実施

ところで近年,Covid-19の流行により世界中のクルーズは軒並み休止状態となっていた.Cunard Lineも例外ではなく長い休止期間を経て,2021年に晴れて運行を再開した.そして,2023年の4月から5月にかけてQEによる6本の日本発着クルーズを予定した.

Queen Elizabethの基本情報

QEはイタリアのフィンカンティエリ社のモンファルコーネ造船所で建造され,2010年に進水,処女航海を行った.総トン数90,400トン,全長294m,全幅32.3m,喫水8mであり,パナマックスギリギリのサイズとなっている.意外だが,QEのサイズは初代QEや初代QMのサイズに比べて一回りほど小さいのだ.最高速力は23.7knotでQM2の29.62knotと比べるとかなり劣るが,クルーズ船なので問題はない.船首にはバルバスバウと3基のバウスラスターを備え,船体中央付近にフィンスタビライザーが1ペア,船尾には2基の360度回転型,固定ピッチのアジポッドが装備されている.また,推進には6基のディーゼル発電機が使用される.

3基のバウスラスター

Queen Elizabethを見に行った

特急リレーかもめと新幹線かもめを利用してまもなく長崎駅に到着した.

長崎は結構本降りの雨が降っていて,これからかなり歩く予定なのに折りたたみ傘しか持ってきていなかった私はかなり心配だった.

とりあえず市電に乗って新地中華街へ,乗り換えをして石橋まで進んだ.

ここからは歩きだ.

グラバースカイロードを経由してグラバー園の入口までやってきた.

ここから,さらに脇にある小道に入っていく.

想像していたものの3倍はキツイ山道であった.
途中霧が出てきて幻想的に.

やっとの思いで鍋冠山の展望台に到着.

初めてQEとご対面する.

この,クルーズ船としては珍しい黒の塗装と赤色のファンネルのQEはかなり離れた距離から見てもCunard Lineの船だと判別できる.
そして,何より上品で美しい.

特に長崎は,街全体が湾を中心に形成されていて,海と山との間に家々や商業施設が所狭しと密集している.その一部は平地に収まりきらずに山へと漏れ出している.海辺には造船所が軒を連ね,護衛艦と思しき船舶が停泊している.そのような街の一角に停泊するQEは街の風景に溶け込みつつも異風なオーラを放っていた.

このように,湾状になっていてかつ,そこに街が形成されているおかげで「山→街→船→海→街→山」と言う風に次々と景色が変わる風景を拝むことができるのだ.

このような風景を拝むことができる港は日本では長崎以外にどこにあるものだろうか.

この後,QEを間近で見るとともにお見送りをするために松が枝国際ターミナルに向かった.

時刻は16:40分前.
この日のQEの出港予定時刻は17:00だ.
急ぎつつも,坂に溜まった落ち葉が雨で濡れて非常に滑りやすいという最悪なコンディションなのでかなり安全には気を使った.

長崎は小道が多くて,Google mapのナビ機能を頼りに進んでいたが全然わからない.
とりあえず,それっぽい方向に適当に進んで,ナビの道修正機能に頼る.

最終的に大浦天主堂のすぐ脇の小道から出てきた.

17:00ちょうど頃に松が枝国際ターミナルにたどり着いた.

間近でQEを見るのもまた違った趣があって良い.

それからしばらくして,QEは吹奏楽による演奏や長崎の人々に見送られながら離岸,汽笛を鳴らし女神大橋の下をくぐって横浜へと旅立っていった.

雨にも関わらず,かなり多くの人がお見送りに来ていたことが印象的だった.

ところで,QEが寄港した翌日にはDiamond princessが寄港したらしい.
この船は湾内にある三菱重工長崎造船所で建造されたので,特に長崎の地にはゆかりがある船だ.

長崎の風景はクルーズ船とセットなのがデフォルトになるのかもしれない.
これはこれで同じ風景でも日によってちょっとした変化が起こり良いものだと私は思う.

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