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散る桜へ

 水の上では花弁がさらさらと流れている。それを見上げていることから、私はたぶん水の底にいるのだろう。自分で望んでここにやってきて、自分で選択した事だから、私は私を納得させる必要がある。楽しいわけなんてない。でも、楽になったような気がする。
 せせらぎの音が私の心を惹きつける。水の中で音が聞こえるなんておかしいのに、それを聞き澄ましていると、私の中に変な錯誤が感じて来る。香もない上の花弁の一枚一枚が、言葉の一つのようで、その変な錯誤の感じとともに、訝かしい魅惑が私の心をくすぐる。
 言葉一つでガラリと変えられないの。でもね、言葉一つで泣けちゃうの。色々な言葉を私、今、見上げているんだね。ありがとうなんて言わないよ。でも、私、後悔していないから。
 散る桜なんて名前、馬鹿げているよね。自分で名乗っておきながら、恥ずかしい。特定の誰かじゃないよ。誰が言った言葉なんて事、一々憶えていないから。それでも言葉を見上げて、私、今、楽なんだ。

一日延ばしは時の盗人、明日は明日…… あっ、ありがとうございます!