中島亮

あなたの「オモシロイ」は僕が創ります!

中島亮

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マガジン

  • 運転手

    あの世に送り届けるのが運転手の役目。 死んで終わりではないと思いたくなくて、こんな物語を書いています。

  • 粗末な暮らし

    不連続な小説です。

  • #極短編小説

  • なにしとぉ? 神〇人

    大阪と一緒にせんとってです。

  • いけずな京〇人

    京〇をリスペクトしてます。 ほんま、京〇はよろしいなぁ。

最近の記事

生きたまま背骨を握られる

 怖い話を書くからか、先週から体調を崩しています。  スルーしようとしていたのに、創作大賞の応募が始まったと聞いたら、話を考えるようになりました。今までなら、書き始める事からしていたと思うのです。それから筋を考えて、筋を思いつかないから、また書いて、どうしようもなくなって途中でやめてしまう。  そのやり方をやめて、今回はクライマックスとエンディングから考えたのです。そしたら体調を崩しました。熱が出るわけでなく、寒気と倦怠感が身にまとわりついて、ふらふらしているのです。  怖

    • 自分がいなかった事になる怖さ

       小説を書く事に自信がなくなっていたものの、創作大賞の応募が始まると、やっぱり書こうとする。諦めてしまえば楽なのに、文章を書く事に快感を得ているのだろう。しかしながら、自分が至らない点を自分で自覚している。それを改善しなければ、書いたとて自己満足でしない。  物語の構造をつくるのが下手だと思う。それと文章のリズムの作り方。その二つが僕には足らない。逆を言えば、この三年間で、ここまで自力で書けるようになったと自分を褒めてはいるが、客観的な課題がある事は成長につながる。  ホラー

      • 鏡職人6

         裕太の作品は街の人々に広く受け入れられ、彼の鏡を通じて自分自身を見つめ直す機会を提供し続けた。彼のアートは街の一部となり、人々の心に響き続けた。裕太自身も成長し、内なる平穏と受容を見つけた。彼は自分の作品を通じて他人に喜びと自己愛をもたらすだけでなく、自分自身も映すことの重要性を理解し、新たな自己を受け入れる決意を固めた。  最後の作品が完成したとき、裕太はそれを公開するイベントを開催した。多くの人々が集まり、彼の作品に感銘を受けた様子が伺えた。彼らは自分自身を映す鏡の前に

        • 鏡職人5

           裕太は真由美との再会から新たな活力を得て、自分の作品制作に集中し始めた。彼は工房での作業に没頭し、自分のアートが他人に与える影響や意味について新たな理解を得ていった。その中で、裕太は自分自身が他人への憧れから自己発見へと至る過程で、ある重要な決断を下す必要があることに気づいた。彼は自分の作品制作の方向性を見直し、鏡を通じて他人を映すだけでなく、自分自身も映す鏡を制作し始めた。裕太は自分自身を映す鏡の制作に取り組む中で、内なる葛藤と向き合い、それを受け入れる勇気を持った。彼は

        生きたまま背骨を握られる

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        • 運転手
          25本
        • 粗末な暮らし
          24本
        • #極短編小説
          74本
        • なにしとぉ? 神〇人
          1本
        • いけずな京〇人
          6本
        • 狂い歌
          9本

        記事

          鏡職人4

           裕太は心理カウンセラーの明子との出会いから新たな気持ちで工房に戻った。彼は自分の作品を通じて他人に喜びや自己愛をもたらすことに集中し、新たなアイデアを模索し始めた。  その日、裕太は幼馴染の真由美が再び訪れることを知らせる電話を受け取った。真由美は裕太の作業を手伝いたいと言い、彼の心にほんのりとした喜びをもたらした。 真由美が工房を訪れると、彼女は笑顔で裕太に挨拶し、彼の作業を手伝う準備ができていることを示した。裕太は真由美の協力を喜んで受け入れ、二人は一緒に作業を始めた。

          鏡職人4

          鏡職人3

           裕太は工房の中で一人で作業をしていた。真由美との再会から数日が経ち、彼の心はますます複雑になっていた。彼は自分自身に対する葛藤と不安を感じ、それを抱えながら作業に集中していた。しかし、彼の心の中には解決できない問題があった。他人が幸せそうな姿に対する彼の願望が、彼を苦しめていたのだ。彼は自分が本当に望むものを見つけることができるのか、また他人と自分自身を比較することがなぜ彼にとって重要なのかという疑問が彼の心をかき乱していた。  その日、裕太は心理カウンセラーの明子のもとを

          鏡職人3

          鏡職人2

           真由美の訪問から数日後、裕太は再び静かな工房で作業に没頭していた。彼の心は真由美との楽しい再会の思い出に満ちていたが、同時に彼の内面の葛藤も再び浮かび上がってきた。突然、工房のドアが軽く開く音が聞こえ、そこには真由美が微笑みながら立っていた。 「おはよう、裕太。また来てもいいかしら?」真由美は明るい声で言った。裕太は驚きながらも歓迎の笑顔を返した。「真由美、どうしたんだい? また作業を手伝ってくれるのか?」真由美は笑いながら頷いた。「そうよ。あなたの作品にはもっと興味がある

          鏡職人2

          鏡職人

           光なく、ただ赤くばかりに見える黄昏になり、黒い影になって北村裕太は、静かな工房の中で小さな鏡を丁寧に取り扱っていた。その鏡は、彼が街の至る所に取り付ける作品の一部であり、彼の生きる喜びと情熱である。彼の手は確かで、鏡の表面を優しく拭き上げる。その際、微かに笑みが彼の唇を掠めた。彼は自分の作品が街の人々に喜びと自己愛をもたらすことを想像しているのかもしれない。点き始めた街灯が窓から差し込み、ようやく工房に光をもたらす。裕太はその光に包まれながら、自分の世界に没頭しているようだ

          パクリ "The Lottery" by Shirley Jackson

           秋の陽光が穏やかに村を包み、中心にある広場は、多彩な色と活気で溢れていた。収穫祭の日は、村人たちが一年の農作業の成果を祝う日であり、その喜びは空気中に漂っている。飾り付けられた屋台では、新鮮な野菜や果物が陳列されている。地元の農家から届けられたものであり、その豊かな収穫が一目でわかる。その近くで数人の男がお囃子を奏でていた。色とりどりの幕が風に揺れ、同じ旋律の執拗な繰り返しにその周りで踊っている連中は酩酊をしている。普段の穏やかな村と様相が異なっていた。  少し離れた舞台で

          パクリ "The Lottery" by Shirley Jackson

          間に合わない

           飯田春松は、平然とした態度を持続しようと努力をしながら、やや長い輪郭をした顔に狼狽の色を浮かべている。大きく見開いた眼を伏し目がちにして、渋滞情報に目をやった。この先のジャンクションで発生した大型トラックと乗用車の衝突事故により、三十キロも渋滞しているとの事。この事故によって片側二車線分が塞がれ、通行が大幅に制限されている。強い力を眼にこめて、春松は車列を憎々しげに見やる。そうやって見たところで、車列が流れるわけでもないのに。 「クソ」小声で呟く。苛立ちで体全体が小刻みに震

          間に合わない

          船の上

           塩気を含んだ冷たい空気が甲板に漂っていた。繰り返す波の体積は途方なく、重い水の抵抗を受けながら傷病兵を乗せた船は陸地を離れていく。船は軍艦でも貨物船でもなく、客船で、水は張っていないが屋外プールまである。空を見上げれば、雪を含んだ鈍色の雲が夕日の影をすっかり隠し、さびしい光を海原に与えていた。華美な外装の客船とは対照的に、これから湧き上がる夕闇が、その船が作り出す白い波を淀ませ、物悲しさを演出している。  まんじりともせず、切ったばかりの髪の毛を濡らしながら地代所春松は、か

          シャーデンフロイデ

           何か理由もなく、やるせない気持ちになると、僕はアテもなく歩くようにしている。何の為に歩いているのか自分でもハッキリした事はわからない。気がまぎれる事を期待しても、そんな事は得られないし、新しい出会いなどもない。やるせないという気持ちというのは虚無感で、それに対抗する事を忘れる為に歩くのだろう。否。この世を重圧する畏怖に耐えられなくなり、ただ黙々と憐れな自分のプライドを急拵えする為に歩いているのかもしれない。  歩くところに目新しさはない。通りの角にあるから「角屋」と名付けら

          シャーデンフロイデ

          会話

          又吉マタキチ 2023年5月28日 15:01  文化というのは幻想ではないでしょうか。伝統とも言えるモノもそうです。いや。全ての事が幻想で、唯一実在するのは自分の意識です。文化に嫉妬や不満をしても、産まれるのは粗い作品しかありません。自分のフィルターを通して世界を表現する事が作品でしょう。そのフィルターの目を細かくして、残ったモノが自分の作品です。嫉妬や不満だけではフィルターの目を細かくできないと思います。 又吉マタキチ 2023年5月28日 20:05 文化を定義するの

          散る桜へ

           水の上では花弁がさらさらと流れている。それを見上げていることから、私はたぶん水の底にいるのだろう。自分で望んでここにやってきて、自分で選択した事だから、私は私を納得させる必要がある。楽しいわけなんてない。でも、楽になったような気がする。  せせらぎの音が私の心を惹きつける。水の中で音が聞こえるなんておかしいのに、それを聞き澄ましていると、私の中に変な錯誤が感じて来る。香もない上の花弁の一枚一枚が、言葉の一つのようで、その変な錯誤の感じとともに、訝かしい魅惑が私の心をくすぐる

          散る桜へ

          ないものねだり

           息子の浩平が、これぐらいの単語も憶えていないものかと雅恵はイライラとあせるだけだった。しばらく黙って雅恵の顔色をうかがっていた浩平だったが、もうどうでもいいと思ったらしく口を開く。 「ねえママ。ぼく、お外であそびたいな」 「だめよ」と、彼女はぴしりと言った。「これが終わってからよ」 「だって……」浩平は不満そうに口をとがらした。「だってさ……」 「だってじゃありません」 浩平は沈黙した。彼がふてくされているのが分かったが、雅恵はかまわず続けて日本語で単語を読み上げ、それを浩

          ないものねだり

          平六の善意

           甘い脂の匂いのする、生まれたばかりの赤ん坊が、薄汚れた布の中に包まっていた。大きな頭を重そうに動かしながら、顔をしかめて、泣き立てている。堂島平六は、拾ったそれについつい見とれてしまった。ここに置かれてそれほど時間が経っていないのだろう。おしめが新しい。 「おもしれえな、こいつは」  ひとりごとをいって、しげしげと眺めていると、ふいに赤子がぱっちりと目を開いた。堂島平六はぎくりとして、思わず後ずさったが、赤子は泣きもせず、大きな目で彼をじっと見た。そして、にこっと笑った。

          平六の善意