小説「ナンバー❛90」
おれは、この日もあるビデオを見ていた。
しかも、レンタルで借りたものではなくTVから録画したヤツだ。そのうちテープが擦り切れるんじゃないかと心配になったが、他に見るものがなかったのだ。そんなある日。
この日も朝から家を出て街をブラブラと歩いていた。
するとティッシュを配っている人がいた。それとなく近くまで歩いていたらティッシュを渡されかけたが、おれはもらい損なった。そこで一つの運試しと思ったのか、なんか少し落ち込んだ。別にティッシュの一つや二つに事欠いているわけではなかったし(むしろ、おれは鼻炎なのでカバンにもかなり入れているぐらいだ)、そのティッシュ配りのバイトらしき人を目当てというわけでもなかった。
でも…なあ…。
昼。前に立ち読みで得た情報によると、おれが前から行こうと思っていたラーメン屋がこの近辺にあるらしい。さすがに結構な距離を歩いたので、腹が減ってきた。
でも、そのラーメン屋が満員とかで人でいっぱいだったら辞めて牛丼屋にでもしようと、そう心に決めていたが、果たしてラーメン屋に到着、客の入りはと言うと多いような、少ないような…。判断に困ったが、ワイワイと騒いで食べている様子の客はいなさそうだ。おれはちょっと安心して店の中へと入った。
夕方になった。もう家へと帰らなくてはいけない時間ではあるが、そういうのを振り切って何かで時間を潰すことにした。とある本屋に向かって歩き始めたが、その途中仕事帰りと思われるサラリーマンやOL、イチャついているカップルを見ていると、おれは何やっているんだろう…と思わないではなかったが、そういう気持ちを抑えて、ひたすら歩いた。
でも、人が賑わっているところというのは、さっきのことと矛盾しているようだが好きだ。人は好きではないのかもしれないが、そこにある店だとか看板とか風景というか街並みが好きなのかもしれない。
もう、すっかり日が暮れた。さすがのおれも歩き疲れて近くの地下鉄の入口から切符を買ってターミナル駅へ。そこからまた違う私鉄に乗り換え家からの最寄り駅へと着く。そこに自転車を停めていたのだが前に駐禁で持っていかれたことがあったので、この日はどうかと思ったが、どうやら自転車はあった。キーを出して自転車に乗りペダルを漕いでいる時おれは何か考えていたが、あんまり考えるものではない。いろんな意味でアブナイからな。
夜のもう遅く、またおれはビデオを見ていた。家族はもうとっくに寝ていたが、おれはそうすることで何も考えないようにしていたのかもしれない。そんなことできるわけないんだけどさ。
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