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溶媒探索のtR(ターゲット距離)について


1.溶媒探索のtRとは?

tRは探索する溶媒の条件を良溶媒にするか、貧溶媒にするかを指定するパラメータです。

tRの値は「溶解度空間(計算結果の3D Map)において、材料の溶解度パラメータを中心にどれだけ離れた距離の溶媒を探索するか」を表しています。デフォルト値は0です。数値は0から30までの間で設定可能で、0に近いほど良溶媒、30に近いほど貧溶媒を探索します。

3D Mapにおいて、材料と溶媒の溶解度パラメータが近いほど、その溶媒はその材料をよく溶かす(=良溶媒)とみなします。したがって、tRが0の場合、材料に最も近い溶解度パラメータを持つ溶媒を探す設定となり、tRが大きければ材料から遠い溶解度パラメータを持つ溶媒を探す設定となります。

良溶媒と貧溶媒の境界は、材料の溶解度パラメータにおける球半径Rの数値です。検討している材料の球半径R付近の数値をtRに指定すると「微妙に溶ける」のような、良溶媒と貧溶媒の中間の性質を持つような溶媒を探すこともできます。

2. tRを用いた探索条件の設定方法

tRは溶媒探索モードの溶解度パラメータの入力時に設定します。良溶媒と貧溶媒の境界は、入力した溶解度パラメータの球半径Rと同じ数値になります(球半径Rが空白の場合は、tRは自動で10になります)。tRが球半径Rより小さい数値の場合は良溶媒、球半径Rより大きい場合は貧溶媒を提案する可能性が高く、それぞれ色分けされています。

tRの設定画面
図1:tRの設定例(tR=7)

tRのデフォルト値は0ですが、バーをスライドさせたり、数値を直接入力して変更ができます。設定が終わりましたら、「次へ」ボタンを押して溶媒データセットや計算名の設定画面に進み、計算を開始します。

3.tRを変更した際の結果の違い

tRの変更によって提案される溶媒が異なる様子を、脂溶性材料のβ-カロテンを例に見てみましょう。β-カロテンの溶媒探索時にtR=0, 10, 20と設定したときに提案される溶媒が、β-カロテンの溶解度パラメータとどのくらい離れてるか比較してみます。

tR=0の場合は図2になりました。いずれもβ-カロテンの溶解度パラメータに近い溶媒を提案しており、良溶媒の候補となりえます。

図2:β-カロテンに対する溶媒提案 tR=0

tR=10の場合は図3になりました。β-カロテンの球半径Rを10と設定したため、球殻に近接した溶媒を提案しており、β-カロテンをわずかに溶かす可能性のある溶媒が提案されています。

図3:β-カロテンに対する溶媒提案 tR=10

tR=20の場合は図4になりました。球半径Rの外にある溶媒を提案しています。球半径RよりもtRが大きければ貧溶媒である可能性は高いので、貧溶媒を探す際に必ずしもtRを最大にする必要はありません。ほかの材料との親和性も考慮する場合はtRを適切な値にして、貧溶媒を検討ください。

図4:β-カロテンに対する溶媒提案 tR=20

上記のように、tRを変えることで良溶媒から貧溶媒まで幅広く探索できます。

4.tRの変更に関する注意事項

3D Map上における、材料と溶媒の溶解度パラメータの距離に応じた材料の溶解度の変化はそれぞれの材料に依存します。「tRを1大きくすると、普遍的に材料の溶解度がX g/mL下がる」のような定量的な指標ではありません。実際の溶解度は材料に依存しますので、あくまで目安として参考にしてください。

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