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【活用事例:機能性材料】カーボンナノチューブの分散性向上の溶媒提案


1.分散性を向上する溶媒のアイデアが欲しい

カーボンナノチューブ(CNT)は機能性材料として有望視されていますが、CNT同士の相互作用が強く、汎用の溶媒への分散が難しいという課題があります。CNTの可溶化に対しては化学的・物理的な修飾等のアプローチがとられますが、溶媒側を工夫してCNTの分散性を向上することは可能でしょうか?

こちらの文献において、ハンセン溶解度パラメータ(HSP)を用いたCNTと溶媒の親和性の定量評価により、既知の単一溶媒の組み合わせによる混合溶媒が、よりCNTの分散性を向上することが報告されています。

上記の事例を参考に、SoluVisionを用いて単層カーボンナノチューブ(SWNT)に対し、既知の単一溶媒よりもCNTの分散性の向上が期待できる混合溶媒を提案してみたいと思います。

2. SWNTの溶解度パラメータを求める

まずは、SWNTの溶解度パラメータ(SP値)を実験的に求めます。この場合は、いくつかの溶媒への溶解性を事前に評価し、良溶媒と貧溶媒の情報を知る必要があります。今回は前述の文献に報告されている既知の溶媒への分散性の評価結果を用いて、SP値を求めます。

SWNTが分散した溶媒は、その分散度合いに応じて光の吸光度が変わります。前述の文献を参考に、分散性の指標として一定値以上の吸光度を持つ溶媒を良溶媒(○)、それ未満の溶媒を貧溶媒(×)として、SP値を求めました*。本事例では級数係数が0.3を超える溶媒を○、それ以外を×としました。

*SoluVisionで未取り扱いの溶媒の評価結果は無視しています。

単一溶媒への分散性から、良溶媒と貧溶媒を設定します

計算結果を確認すると、SP値は(dD:19.2, dP:5.1, dH:2.9)と計算されました。RはSWNTのSP値を中心とするグレーの球の3Dマップ上の半径を表しています。グレーの球内の溶媒が良溶媒であることを示していますので、実験結果を反映した結果が得られていると考えられます。

Rが1.3と比較的小さいですが、良溶媒とする吸光度の数値条件を大きめに設定したので、結果的にRが小さくなっているものと考えられます。この点はユーザーが求める良溶媒の条件次第で結果が変わります。

SWNTのSP値の計算結果

SWNTのSP値が計算されましたので、溶媒データセットを用いて、混合溶媒を含む良溶媒を探索します。

3. SWNTの良溶媒を探索する

求めたSP値から、良溶媒の探索を行います。今回はstandardプランで探索できる溶媒155種類の混合溶媒から良溶媒を探索します。

155種類の単一溶媒の組み合わせの混合溶媒から、良溶媒を探索します

4. 結果は…

SoluVisionが予測した溶媒は、主に既知の良溶媒の混合溶媒でしたが、貧溶媒のトルエンと良溶媒のO-ジクロロベンゼンの混合溶媒も提案されました。
既知の良溶媒であるO-ジクロロベンゼンのSP値をグレーでプロットすると、今回提案された混合溶媒のほうが、SWNTのSP値に近い位置にあります。3Dマップ上でSP同士の評価を通じて、意外な溶媒の組み合わせが良溶媒の候補になる可能性があります。

良溶媒の予測結果

このように、3Dマップ上のSP値同士の距離から溶媒を定量評価することにより、思いもよらぬ溶媒のアイデアが見つかる可能性があります。今回の事例では、探索する溶媒の種類に制限をかけていませんが、溶媒データセットを任意の溶媒に絞って設定することも可能です。

今回はCNTと溶媒について焦点を当てましたが、SP値が計算できれば材料同士の親和性を評価することができます。CNTと樹脂の系や、CNTの修飾分子と溶媒等、様々な系における親和性を視覚的に評価することができます。

溶媒の選定にDXを。ぜひご自身の扱う材料で試してみてください。

5.まずはやってみよう

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