見出し画像

生と死の狭間で



吹き抜けの上の階からポールを伝って降りてくる娼婦たち。その表情は墨を落としたように暗く、覇気みたいなものが一切感じられなかった。異様な雰囲気にのまれた空間に娼婦たちは上から現れたのだ。

繊細な心を保つために娼婦たちが打つドラッグの質は徐々に落ちていき、それはゆっくりと死に近づいていることを意味している。

衣服を全て脱ぎ、ハタチにも満たない俺をステージの上から誘惑する娼婦。その光景に様々な思いが脳裡 に去来する。この娼婦の血液には不純物が多いはずだ。そう思った。
この娼婦たちがオーバードーズで亡くなるのは時間の問題で、それがメタンフェタミンとは限らない。ザナックスかもしれないし、風邪薬かもしれない。だが、俺が普段口にする醤油や砂糖などの調味料や水でさえも致死量があり、死は誰にだって身近にあるはずだが、不思議とどこか他人事のように思えた。娼婦はステージ上、俺を誘惑するように股を開き、乱れる。
美しい。彼女の容姿や妖艶な仕草などではなく、ひたむきに生きているというエナジーがなんとも美しかった。

とある睡眠薬は犯罪防止のため、水に溶けると水を青色に染めるという。そのため危険な場所では青いお酒を頼まないのが理想だが、俺はあえてチャイナブルーという青いお酒を頼むことにした。勝手ながら警戒心を見せずリスクをとって真正面から向き合いたい気持ちになったからだ。娼婦たちは今、何を思っているのだろうか。テーブルの上、目の前に置かれたチャイナブルーは娼婦たちの次に輝いて見えた。

最後まで読んでいただきありがとうございます。 海外を放浪しているので、サポートいただけたら旅の中での活動費に役立てさせていただきます!