伝言ゲームと情報劣化/あなたの話が相手に伝わるために意識すること

 テレビのバラエティ番組などで伝言ゲームを目にすることがあります。 最初のお題として出された言葉が何人も伝言されるにつれて変化し、最後には全く異なる言葉(意味)で伝わる様子が楽しくわかります。

 これと同様のことは、会社でも良く起こります。お偉いさんの朝礼から、技術の伝承、電話のメモに至るまで状況は様々です。 

 問題としては会社トップの意思が末端まで伝わらない、業務効率が悪化する、顧客からの信頼喪失、技術が途絶えることなどです。経営方針などの重要事項について、トップは管理職へ、管理職は一般社員へ、技術の伝承は職人からという流れが一般的だと思います。 

 普段の生活で何気ない世間話をするのと同じ感覚で、伝達方法を配慮せずに話をすると、伝わる内容は薄くトラブルの原因にもなります。

 話し手は、相手(聞き手)が話を全て理解するという前提で、(自分の言いたいことは100%伝わると考えて)話すことが多いと思います。 

 一方、聞き手は、皆、話し手と異なる人生(経験、知識など)を経て、その場にいます。あなたの関心事が相手の関心事ではありません。どんなに優秀な人でも、85%伝われば上等だと思います。

 そうすると伝達の段階を増やすほど、最初100%の話が、1人目で85%になり、2人目でそのまた85%・・・で5人目では半分になってしまいます。実際は1人目で60%ということも多いので、目減りはもっと多いでしょう。

 人づての話や、伝承のような話は最初の情報量(質)が劣化している可能性が高いので、聞き手はこの点に留意する必要があると思います。

 話し手は、情報が劣化することを念頭に、何回もくり返し同じ話をするか、人づてにならない方法をとるか、何か工夫する必要があると思います。また、聞き手があなたの話に興味はないことを前提として、興味を引く努力が必要になります。

 このようなことがおこる原因についてCopilotに聞いてみたところ、以下のような回答が得られました。 


「自分」 ⇒
情報が誤伝達される場合、どのような原因が考えられますか?
「Copilot」 ⇒
情報が誤伝達される原因は、情報の発信者の問題、受け手の問題、環境の問題と様々です。具体的には、以下のような原因があります1

【情報の発信者の問題】  
 ・歪曲:事実に個人的な解釈や偏見を伝えて話をしてしまうこと。
 ・省略:必要な情報が抜けていること。
 ・一般化:一部の事実を全部であるかのように伝えること。

【情報の受け手の問題】
 ・聞き間違い:発信者の言ったことと違うことを聞いてしまうこと。
 ・聞き流し:発信者の言っていることに注意を払わないこと。
 ・聞き返さない:わからないことや不明な点があっても質問しないこと。

【環境の問題】
 ・雑音:周囲の音や会話などが発信者の声をかき消してしまうこと。
 ・障害物:発信者の表情やジェスチャーなどが見えないこと。
 ・距離:発信者と受け手の間に物理的な距離があること。

情報が誤伝達されると、ミスやトラブルの原因になります。情報を正しく伝えるためには、発信者は明確で具体的な言葉を使い、受け手は注意深く聞き、確認することが大切です。また、環境にも配慮し、コミュニケーションに適した場所や方法を選ぶことも重要です2
1名探偵でも誤推理をする?判断を誤る原因と対策 2: Copilotの知識と推論

1、市川円さんのコラム  コミュニケーションエラーの原因と対策【仕組みで解決】
https://en-counseling.jp/communication-error 

2、VWS Blog 働き方を考えるぶろぐ


1の市川円さんのコラムでは、看護や介護職の現場を例に述べています。

 まず、コミュニケーションエラーの定義ですが、「言った言わない」問題に代表されるような狭義でのヒューマンエラーのことを指します。コミュニケーションエラーには大きく分けて2種類あり、情報が正しく伝達されない誤伝達のケースと、情報の伝達自体がされないコミュニケーション不足のケースとがあります。

 1、  誤伝達:正しく伝達されない・伝達された情報が誤っている
 2、  コミュニケーション不足:情報伝達自体がされない

【誤伝達の主な原因】
 ・対話不足:思い込み・誤った解釈・あいまいな伝達
 ・情報不足:情報が人の見方や時間の経過によって変動する
 ・知識不足:情報を理解するために必要な知識の習得が困難
 ・認知機能の低下:身体的疲労や精神的ストレスの蓄積により十分に頭が働かない

【コミュニケーション不足の種類】
 ・社会的手抜き:誰かが気づいてくれるはずだ
エラーを発見したにも関わらず、そのエラーに対して「他の誰かが気づく」と思い込んで対処しないことを社会的手抜きと呼びます。

 ・同調:チェック済みなら間違っていないはずだ
たとえば掃除当番などをチェックリストで管理するケースにおいて、「前回のチェックで問題がなかったなら問題ないだろう」と、前任者に同調してチェックをおろそかにするもの。ダブルチェックなどの仕組みを導入しても、なかなかエラーが減らない理由の一因はこの同調によるものと考えられます。

 ・こじつけ解釈:何か理由があったはずだ
特に看護の現場で起こりがちなエラーで、普段とは様子の違う患者に対して「何か理由があるのだろう」と自分なりに解釈して見過ごしてしまうものをこじつけ解釈と言います。本人もこじつけ解釈にうすうす気づきつつ、コミュニケーションを取ることへの苦手意識などから、無理やり自分を納得させてしまう傾向もあるようです。

コミュニケーションエラーの対策
 そこで、次のような伝達の方法やフレームを定めて、仕組みで解決する必要があります。

【4Cの原則:情報の誤伝達を防ぐルール】
4Cの原則は、情報を伝達する人が、Clear(明確)・Correct(正確)・Complete(完結)・Concise(簡潔)の4つのCを満たす文章・言葉で伝えることで誤伝達を防ぐために守るルールです。
 ・Clear(明確):相手が理解できる用語。なじみ深い言葉。平易な文章。誤解のない言い回し。 
 ・Correct(正確):適切な表現。明瞭な言葉。曖昧ではない。
 ・Complete(完結):必要な情報をすべて含める。不足なく、情報過多でもない。
 ・Concise(簡潔):短く簡単に要点をまとめる。不要語を避ける。箇条書きなどを適宜活用する。

【チェックバック:正しく伝わったことを確認するルール】
チェックバックは直訳すると復唱という意味で、対人援助の現場では復唱を「互いに確認する」ルールとして次のように運用しています。
  情報の伝達:「AをBにしてください」
  情報の復唱:「AをBにするんですね?」
  復唱の確認:「はい。AをBにしてください」
大切なことは、「情報の復唱」だけでなく、それに対して「復唱を確認」する形で、メッセージを伝達した人もまた情報の伝達を繰り返しているという点です。 

【2チャレンジルール:最低2回は伝えるルール】
2チャレンジルールは、安全に関する重要事項や違反、誤りなどを発見した段階で確実に伝えるために、重要な提案は1回でなく最低2回は伝えるというルールです。導入する際には、「2回提案を受けた側はその場で応じること」といった取り決めを共通理解として持っておくことが求められます。
 発信者⇒「AをBにしてください」
 受信側⇒「AをBにしていいのですか?」※1度目の提案
 発⇒「はい、AをBにしてください」
 受⇒「BではなくCではないでしょうか?」※2度目の提案
 発⇒「すみません、Cでお願いします」

【CUS:重要事項を恐れず伝えるためのルール】
CUSは、重要事項を恐れずに伝えるためのルールで、前項の2チャレンジルールと組み合わせて使うのが効果的です。
 ・I am Concerned → 「気になります」
 ・I am Uncomfortable → 「不安です」
 ・This is a Safety issue → 「これは安全上の問題です」
 発信者⇒「AをBにしてください」
 受信側⇒「AをBにしていいのですか?」2チャレンジ1度目の提案
 発⇒「はい、AをBにしてください」
 受⇒「BではなくCではないでしょうか?」2チャレンジ2度目の提案
 発⇒「いえ、Bで大丈夫です」
 受⇒「いつもと違う様子も気がかりで、Bでは不安です。危険ではないでしょうか?」 ※CUS
 発⇒「分かりました、Cにしましょう」
2チャレンジに加えて、「気になる」「不安である」「危険である(安全上の問題である)」ことを合わせて伝えることで、より提案に相手が対応しやすくなります。
参考医療安全情報 レポート Vol.14



 一方で、コミュニケーション、伝え方、話し方のテーマについては多くの書籍があります。ここでは、池上彰さんの「伝える力」、渡辺美紀さんの「10倍伝わる話し方」、小川直樹さんの「聞いてもらう技術」の3冊から得た内容をもとに進めます。 

まず、池上さんの「伝える力」から引用します。 

はじめに
本書では、特にビジネスパーソンを念頭に置いて、「伝える力」の高め方について書いています。本書でいう「伝える」には、「話す」ことと「書く」ことの両方を含みます。さらにいえば、本書では「聞く」ことも「伝える」ことの一つと考えます。相づちを打ったり、返事をしたり、目をジッと見たり、あるいは反対に目をそらしたりする行為も、相手に何かしらを「伝える」ことになるからです。こうして考えると、「話す」「書く」そして「聞く」行為は、まさに「コミュニケーション」です。
 
第1章 「伝える力」を培う
1.「日銀」とは何か、説明できますか?
2.深く理解していないと、わかりやすく説明できない
3.教科書はわかりにくい
4.まずは「自分が知らないことを知る」
5.謙虚にならなければ、物事の本質は見えない
6.何を取り、何を捨てるか
7.プライドが高い人は成長しない
8.聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥
9.「よい聞き手」になるために
10.V6井ノ原さんとTOKIO国分さんの人気の秘密
11.自分のことばかり話さない
12.相手の「へぇー」を増やす
 
第2章 相手を惹きつける
第3章 円滑にコミュニケーションする
第4章 ビジネス文書を書く
第5章 文章力をアップさせる
第6章 わかりやすく伝える
第7章 この言葉・表現は使わない
第8章 上質のインプットをする
 
34フォーマットを身につける
 ここでは、ビジネス文書の書き方について、技術的な話をしましょう。念頭に置くのは、報告書や提案書、企画書の類です。これらの文書には、企業や職場によるでしょうが、一般的には「フォーマット」が存在します。 フォーマットとは、日本語でいえば、「一定の形式」のことです。
たとえば、報告書の場合は、「目的」「経緯」「結論」などが必須項目になります。報告書などをまとめる場合は、まず自社のフォーマットを知り、それに沿って文書を作成することが求められます。それだけで、ある程度の文書は書けるようになるものです。
 
36 現地調査では「素材」を探す
ニュース原稿を書く場合は「5W1H」、すなわち「When=いつ」「Where=どこで」「Who誰が」「What=何を」「Why=なぜ」「How=どのように」したのかを押さえることが基本であるといわれます。私たちが取材をする際は、この「5W1H」を常に意識しています。
私は、ジャーナリストの「5W1H」に相当するものが、報告書などにおける「フォーマット」であると理解しています。

池上彰「伝える力」より

第1章の1~3は4CのClear(明確)、4~7章は4C全てに関係することがわかります。また5WH1がフォーマットとしています。

次に、渡辺美紀さんの「10倍伝わる話し方」から。

はじめに
 「伝えたい思いや考えがあるのに、うまく話せない」
「せっかくアイデアをもっているのに、じゅうぶんに生かせない」
そんなもどかしい思いを抱えている人はいませんか。
相手に伝わることの大きさは、「思い・考え・知識」×「話し方」のかけ算です。 10の熱い思いをもっていても、話し方が1だったら、10×1で、10しか伝わらない。 話し方を10にできれば、10×100で、同じ思いが、10倍の影響力をもって、 相手に伝わります。
ではどうしたら1の話し方を100にすることができるのでしょうか。
 
それには3つ、アプローチのしかたがあります。
・長い話→短い話に
・わかりにくい話→わかりやすい話に
・相手をイヤな気持ちにする話→気持ちよく聞いてもらえる話に
 
たとえば
 
・仕事でのホウ・レン・ソウ(報告、連絡、相談)は1分以内に済ませる
・プレゼンのときに、話に番号をふる
・面接の自己紹介で、自分のことではなく相手のことを話す
だけで、相手の反応が大きく変わるのを、すぐに実感できるはずです。
 
 ルール:「口頭+メール戦略」でトラブルを回避できる。
相手にとってうれしくないことを伝えるときは「口頭+メール戦略」を使う

渡辺美紀「10倍伝わる話し方」より

 ここで提示されているアプローチの仕方のうち2つは4Cに相当します。また、「相手に伝わることの大きさ」=「思い・考え・知識」x「話し方」との指摘は大切だと思います。「話し方」の技術に主眼をおくことが多いなかで、なぜ「話し方」なのかは、この式で明確になります。
 ルールの中で、相手にとってうれしくないことを伝える際に、明文化したものを使うのもリスク回避として大切だと思います。

最後に、小川直樹さんの「聞いてもらう技術」から。

第一章 なぜ自分の話は聞いてもらえないのか?
第二章 聞いてもらう前に「見てもらう」技術
第三章 「場」の力を味方にする
第四章 すぐに使える「話し方」の技術
第五章 「もっと聞きたい」と思わせるために
 
とても大切なことをお教えします。
人は基本的に、他人の話を聞かないということです。

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教師は学生に、こう要求するのです。
「学生は自分の一言一句を、きちんと聞くべきだ!」「学生なんだから聞いて当然だ」と。
ところが学生側は、「先生の話なんて聞きたくない」と思っているわけです。「だって、つまんないんだもん」と。

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 教師と学生の間にあるくっきりとした「境界線」でした。 教師は常に「私、話す人」で、学生はいつも「私、聞かされる人」。
話し手と聞き手の間には常に「境界線」があるのです。
この境界線を挟んで、「こちら側」と「あちら側」にはっきり分かれている。
その線は頑丈な壁のようなものです。そして、その線で隔てられた両者はまったく別の、対立する存在となっているのです。

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もう一つ気づいたことがありました。
大学の講師室でのことです。
ある先生が「A子の授業中の態度がとんでもなく悪くて困っている」と言います。
すると別の先生からも「私の授業の時もそうです。 問題児ですね!」という声が上がりました。
ですが、そのA子は、僕の授業では非常によく話を聞いてくれる学生なのです。
ということは...。僕は気づきました。
人は、「話を聞く人」と「話を聞かない人」のいずれかに、スパッと分かれるわけではない。
同じ一人の人が、聞いたり聞かなかったりするものなのだ。そして、それは、誰が教え (話す)かによって変わるものだ、と。

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それがどんな関係であっても、どんな状況であっても、大切なのは相手に対するリスペクトです。
自分の話を聞いてもらいたい、自分の言葉を伝えたい。そう思う時には、「聞いてくれる」「受け止めてくれる」人に対する感謝と尊敬が不可欠なのです。

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じつは、良いスピーチというのは「聞き手にとって得になる話」なのです。
誰だって自分にとって得なことは知りたいし、聞きたいものです。だから話題にもなるし、広まるのです。
 
反対に、話し手が一方的に自分の趣味や関心事についてばかり語ったら? 話し手のファンでもないかぎり、聞き手にはまったく退屈な話になってしまいます。
たとえば福山雅治や村上春樹がスピーチするなら、内容がどんな話だってみんな聞きますよ。
その人自身に興味があるから、聞きたくなるのです。
でも普通の人が話し手なら、そうはいきません。だからこそ、発想の方向を「自分が話す」ではなくて、「相手に聞いてもらう」にシフトするのです。
そして、相手にとって興味のあることを話す。そうすれば、相手は必ず聞いてくれます。 たとえば、健康法の話題はどんな人にでも喜ばれます。ほとんどの人がなんらかの健康 上の不安を抱えているからです。
 
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ところで、どんな人も、これまでの人生で、 どちらの立場にもなったことがあるはずです。 日常生活の中で、自分が誰かに話すことも あれば、誰かが話すのを聞くこともあります。 だから、話し手は誰でも、聞き手の気持ち がわかるはずです。その気持ちがわかれば、 楽々と境界線を越えることができるのです。
 でも、人は話し手になると、とたんに聞き手の気持ちを忘れてしまうのです。
教育界では、その典型例をよく見かけます。それは、教育実習をする大学生たちの様子です。
 
彼らは普段、学生として先生の話を「聞く側」にいます。聞く側の人間として、どんな 話ならもっと聞きたくなるか、あるいはどんな話はつまらないかを充分に実感しているはずです。
なのに、実習で、自分が教壇に立って「話す側」になると、とたんに聞く側の気持ちを忘れてしまう。一方的な授業をしてしまうのです。
そして、授業の後にこう言って嘆くのです。
「生徒が話を聞いてくれない」と。
自分はこんなに一生懸命に話しているのに、相手が聞いてくれない。
まさにここに、自分の話が相手に伝わらない理由があります。
人は「聞いてくれない」と感じる時、境界線のこちら側から、相手を他人事として見ているだけです。相手の気持ちや意思への配慮がないのです。
そうではなくて、線を越えて相手と同じサイドに立ってみる。 聞き手の気持ちになってみるんです。
その立場から、何なら「聞きたい」と感じるのかを考える。
それが「聞いてもらう」につながるのです。
 
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聞いてもらう技術は、何より相手を尊重します。
その結果、相手は、こちらに安心感や信頼感を抱いてくれる。だからこそ、相手は自らこちらの話に興味を持ってくれるのです。
それで、「聞きたい」と思ってくれるわけです。
「聞いてもらう」ために、相手を無理やり動かすのではありません。
相手を変えるのでもありません。
すべてこちらがどう話すか、どう接するかにかかっているのです。
話し手の側は、ただ一方的に話せばいいのではありません。同時に、境界線を越えたり、壊す努力をするということです。
そうやって、話し手と聞き手の間にある境界線を取り払う。これで「I」と「YOU」は「WE」になります。
「私、話す人」「あなた、聞かされる人」という対立関係が崩れるんです。だから、「みんな一緒」になれるのです。
そうなったら、話し手の言葉はみんなで共有したくなります。だから、どんどん伝わっていくことになるのです。
 

小川直樹「聞いてもらう技術」より

 ここで重要なことは「人は基本的に、他人の話を聞かない」という指摘です。話し手は、聞き手との間に境界線があって対立している(1章)ことを理解する。対立関係を崩すために聞き手の立場にたった気持ちや意思への配慮(2~4章)が必要ということでした。
 また、スピーチの構成は、聞き手が何を話しているのか、理解できるように、「PREP法」Point (要点)、Reason(理由)」、Example (事例、事実)、Pの順を意識するということでした。

 この様に見ていくとコミュニケーションエラーの防止については、5W1H、4C、といった仕組みの運用と、発信者と受信者の対立関係を崩して円滑な運用を継続することが大切ということだと思います。
 特に運用の実施と継続については、発信者は何か目的があって、自分事として発信する一方、受信者はそれを自分事として理解するのが困難です。
聞き手の立場にたった気持ちや意思への配慮について、とり上げた3冊の筆者は言及していますが、実際に応用するのが難しいため、必然的に仕組みの運用を強いることになってしまい、中途半端な運用から挫折してしまうこともありそうです。

 では、どうしたらよいのか?私なりの適当な解決策は模索中ですが、発信者へのヒントになりそうなYouTubeを挙げます。
「サイモン シネック: 優れたリーダーはどうやって行動を促すか」です。

 ここでは優れたリーダーや組織がWhy⇒How⇒Whatの順で伝えており、それは脳の構造という生物学の原理に基づいていることを指摘します。Whyに人は反応し意思決定をするのに対し、What⇒Howの順で伝える例が多いです。
人は have to ではなく want to によって動くのです。


 さて、冒頭で伝言ゲームとしましたが、なぜ「ゲーム」になるのでしょうか?皆が間違いなく、簡単にコミュニケーションできるならば、ゲームになりません。いろいろ課題があることを直感的に理解しているからだと思います。
 リーダーが示すべきWhyは大義、理想、信念などですが、どの程度実行されているでしょうか? また、Why⇒How⇒Whatの順を使ったとしてもリーダーの献身がなくうわべの言葉だけでは、やりがい搾取の恐れもあり、逆効果となるでしょう。

 これまでの例では、伝達者(リーダーなど)は善意を前提として、話が進んでいます。しかし、実際にはコミュニケーションについて学ぶ意欲がゼロのリーダーや、悪意をもって意図的に情報を伝達しないハラスメントをするリーダーもいることでしょう。また、チームを作る際に、Whyが共通、共有できる人ではなければ、コミュニケーションの困難性は高まるでしょう。

 一見すると、誤伝達を防ぐ仕組みと運用の課題のようでしたが、その背景には組織の存在意義のような大義から、個別の人間関係や人材採用と教育までが関わっていることがわかりました。


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