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レナウン倒産から考える、二極化が進むこれからのブランドとの付き合い方

100 彼が愛したブランド

YouTubeで13万人強のチャンネル登録者を集め、ファッション業界に多大な影響を及ぼしている『FORZA STYLE』ってご存じですか?

『講談社』という情報発信のプロがやっているので、機材も企画も動員も桁が違います。

「動画の時代」とか言われながら、こういった出版社が落ち込んだ雑誌売上の補完に組織戦で本気を出してくると、シロウトの一個人はYouTuberとなって収益化までたどり着く前に心が折れます。

大手が入ってこないニッチな分野ならともかく、パイがデカい市場に正面から突撃してもほとんどは玉砕するだけなので、巷で売られている動画関係の情報商材に踊らされないように注意しましょう。

このnoteはビジネス系ではないので、そんな話はこれくらいにして…


その『FORZA STYLE』の編集長、千場 義雅氏は同じ系統の雑誌LEONOCEANSMADUROの流れを汲んでいるので、オススメは欧米のインポートブランドが主な紹介アイテムになります。

カッコいいオッサンが推すカッコいいアイテムは是が非でも押さえておきたいところですが、日本人の平均所得者がおいそれとオファーされるものすべてを買えるわけではありません。

妻帯者がテンションを上げられた挙げ句、清水の舞台から飛び降りて30万円超の“エルメネジルド・ゼニア”のオーダースーツをクレジットカードでボーナス一括払いとか…そんなことをやったら、間違いなく嫁に家から追い出されてしまいます。

この書籍を通して、ブランドとは何ぞや?仕掛けられる側の消費者視点で考えてみる…今回はそんな話です。



ライセンスビジネスという名前貸し商売

2020年5月15日、東京地方裁判所がレナウンの民事再生法適用申請を受理しました。

負債総額は、138億円。

レナウンは、“アーノルドパーマー”や“アクアスキュータム”などのライセンス商品を販売していましたが、それってざっくり言うとブランディングが完了している他社のブランドタグを付けた自社商品を売っているだけです。

農林水産ブランドなら、完全アウトのありえない商法です。

決してニセモノではないけれど、厳密にはホンモノでもないという玉虫色の立ち位置なんです。

ライセンスビジネスの多くは、本家ブランド名+サブネームの名を冠して、ハイブランドをディフュージョン化することによって、本家よりもリーズナブルな価格設定でターゲット層を広げる戦略です。

レナウンについては一時期“アクアスキュータム”を子会社化していたこともあるので、他のライセンスビジネスとちがう側面もありますが…

その“アクアスキュータム”のロゴを入れた万年筆とノートが、数年前にファッション誌『モノマスター』創刊号の特別付録に付いていたのを見て、違和感をおぼえたものです。

“アクアスキュータム”は“バーバリー”や“マッキントッシュ”と並ぶ、ロイヤル ワラントを授かった英国コートの老舗です。

その“アクアスキュータム”の印を押した中華製万年筆って…

世間から高級と認知されているファッションブランドが、雑誌の販促品に畑違いのチープな万年筆で一線級のステーショナリーブランドと同じ土俵で比べられたら、ブランドイメージはどうなりますか?

そういうことです。


ブランド名というのは、どの業界でも知名度があればあるほど集客を容易にするビジネスツールです。

英国コートといえば、2015年に“バーバリー”とのライセンス契約が終了した三陽商会もそのあと、“バーバリー”の名を抜いたサブネーム単体のブランド展開で苦戦を強いられています。

それに懲りず、次に手を出した“マッキントッシュ”のライセンスも同様に展開する学習能力のなさ。

過去の成功に囚われて、生え抜きの自社ブランドを育てられないとこうなります。

ライセンス商品に本物志向の頑固者は見向きもしませんが、その名前を聞いたことがある一般人は価格に釣られて買ってくれてました。

世界観をなんとなく模しただけのライセンスは、失われた30年で更に割安なブランドが台頭してくると…最初からそのライセンスに特別な思い入れもない既存客は、そちらに流れてしまいます。

ブランドヒストリーがないライセンスブランドから本家タグを外したら何も残らないので、購買層のファン化ができないオワコンになりつつあります。

時代の潮流でファッションブランドは二分されて、経済的に苦しい若い子はともかくオッサンがハイブランドの逆サイドに振って全身ファストブランドで固めるのも…それはそれでちがうと思うのです。



MS-06SとMS‐06の差

ハイブランドと対極にある、デフレ経済の申し子ファストブランド。

低価格とトレンドを取り入れた商品展開で、ヤボったくもなく人気があります。

しかし、

発展途上国に負担を強いて大量生産された服で着飾っても、それはオシャレではありません。

尖ったデザインの少数派だから、オシャレだと思われるのです。

大量消費されるために無難なデザインで他人とカブる可能性も高い、ファストファッションは多数派です。

家畜を識別するための焼き印が語源とされる『BRAND』。

他社と差別化できているブランドを着用している当の本人が、他者と差別化できていないのでオシャレと思われないのです。


ハイブランドだけではなく、ファストファッションの“ZARA”や“H&M”、“ユニクロ”もブランドです。

そして、その『SPA』の成功を横目で見ていた資本力があるセレクトショップがPB商品を売り始めて…ファストブランドが、今や雨後の筍のように乱立しています。

日本人はメジャーなブランド名に無条件で尻尾をふる傾向があるので、これからはブランドで買わずにモノで買うことです。

ディテールや素材にこだわった方がいいモノと画一的な工業製品でいいモノ。

ファッションは、他人から自分がどう見られたいか?という自己顕示欲です。

ラグジュアリーブランド、ファストブランド、それにヴィンテージも上手く取り入れて自分のスタイルを確立することです。


シャアザクがカッコいいのは、そのカラーリングやツノのおかげではありません。

機体が1機しかないからです。

仕掛ける側に翻弄されて、量産型ザクにならないように…



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noteを書いている中の人はファッショニスタではありません。レビュアーでもありません。 あえてたとえるなら「かろうじて美意識のあるオッサン」といったところです。 自分が買いたいものを買っています。 サポートしなくていいです。 やっていることを遠くから見守っていてください🐰