若い世代の方が不幸になる時代
僕がまだ子供の頃、「今の子は本当に幸せだねえ……」と、よく親からしみじみと言われたものです。
僕の親世代は空襲で焼け出されたり、親兄弟が兵隊に取られて帰らぬ人となった世代ですから、まさか日本がこんなにも豊かな社会になるなんて、信じられなかったでしょうね。戦争を差し置いても、薪割りをして炊事をしたり風呂を炊いたとか、髪は滅多に洗えず、みんなシラミが湧いていたとか、結核で人が簡単に死んだとか、わずか数十年前の出来事とは、到底信じられなかったものです。
でも、実は一般へのガスの普及は1950年代頃からで、それ以前はどの家でも薪割りをしていたです。そりゃまあ、シラミだって湧くよなあ。
ラッキーなことに僕は、日本がそんな暗黒時代を抜け出した頃に生まれました。おかげで僕の成長体験は、日本の発展そのものだったのです。テレビが白黒からカラーになり、エアコンや電子レンジが少しずつ一般的になり、マイカーが普及し、ビデオデッキが浸透していく。ちょうどそんな頃に、僕は成人を迎えました。
だからなんとなく漠然と、世界はこのままずっと豊かになり続けるのだろうと信じていたんですね。そしてその素朴な願いは、叶い続けるかに思われました。
ところが、僕の子供が高校を卒業する2013頃から、急速に雲行きが怪しく怪しくなってきました。
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